諦めきれない想いの果て
悔しい悔しい悔しい!
私の方が美人でスタイルもいい。
あっちはのろまでちょっと胸がデカいくらいしか取り柄なさそうな……。
「学期末どうでした? 酒井先生」
「あ、三村先生。英語はやはり香納さんですね」
「お? 数学もですよ。……でもなぁ、出席日数が心配ですね」
「体弱いんですよね。来れない間も勉強頑張ってるから、卒業まで踏ん張ってほしいです。あとちょっとだぞって応援したい」
「わかります、わかります! 天使みたいに健気でいい生徒ですし。……病名聞いてます? 」
「聞いてないですね。校長か教頭ですね、知ってるの。……あ、この前聞いちゃったんですよ」
教師の話し声が気になり、職員室前で立ち止まった。
あの女の話をしている。
頭もいいなんて……。小声になった? 病気なの?
内容が気になり、耳をドアにつける。
「……最近芳しくないらしくて、卒業も危ぶまれているとか」
「若いのに辛いですね」
死ぬの? ……なら、佐伯くんが可哀想じゃない。薄情な女。
か弱くていい子ちゃんなあの女は私をカノジョだって信じているはずだわ。
……死ぬ人があんな顔をするかしら?
引きこもったり、悲劇のヒロインになったりするもんだって思ってた。
全く分からない、分からないけどこのままじゃ気が済まない。
「ねぇ! 」
目的の人物を息を切らせて探した。
視界に入ると、一気に詰め寄り、ぐぃっと肩を掴んだ。
「え?! ……た、高木さん? 」
「あんた死ぬんでしょ? いつ?! 未練タラタラ登校してんじゃないわよ! 目障りなのよ! 死ぬんなら隔離病棟のベッドにでもしてよね! 」
私は何を言ってるんだろうか。
この前の発言は嫌味でしかなかった。
今回は遠回しに死ねと言っている。
気が早った。こんなことをしても佐伯くんが考えてくれる可能性なんてないのに。
縋りたかった、香納さんがいなくなった後なら少しはと。
「……どこでどう聞かれたかわかりませんが、ごめんなさい。気が回らなくて。わたしもハッキリとは。健翔さんにも伝えていません。言ったら仲違いされてしまうでしょう。……長くて半年、と言われました。それ以上は聞いていません」
一礼をして去っていく。
あれだけのことを言われて、丁寧に応えてくれた。
「……天使、ね」
自分が情けなくて、伝う涙を拭えずにいた。
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