俯瞰する。ここは薔薇色の世界。

屋根裏

ひとつめ

 はじめに少しだけ坂道。右に曲がって短く坂を下る。その先をまた右。短い平坦を進んだら左に曲がってまた下る。さっきの下りの続き。虫たちに歓迎されながらそのまましばらく下って、今度は右に曲がる。左手に川、反対側からは声援と金属音。左に曲がって声援を背に少し。川の上をまたぐ。カーブミラーをちらっと見て右に曲がる。ここからしばらく道なり。平坦。左はずっと山。右には工場やらテニスコートやら。ヘルメットをかぶって働く人や自転車を並べる人。そうこうしているうちに頭上に高速道路。緩やかなS字のカーブに沿って少し下る。不思議と他より安い自動販売機と目を合わせながら道なり。方向自体はさっきまでと同じ。不完全なまっすぐに沿って進む。自転車の老人とすれ違う。花と虫と薬局。たまに学生。一時不停止を取り締まる警察を横目にもう少し先へ。おせんべいの匂いを合図に右、すぐに左。大きな通りに合流してまっすぐ。右手にエンジン音、歩道にはバスを待つ老人。この先に不確定要素。不動産屋の前を右、たまに学習塾の前を右。学習塾の日はそのまま裏道に入って左。今日はこっち。曲がってすぐに米屋さん、石材店。右手には隠れ家的なパン屋さんと落花生のお店。思い出を振り切って進めばさっきの大通りに合流。美容室の前を抜けると、飲食店や雑貨屋が新しく開店したり、時期によっては観光客が増えたりと姿を変える小さな商店街。狭い道を信号待ちの車とにらめっこしながら反対側に渡る。左側通行。反対方向に歩く人が多い。地方銀行から出てくる車や細い横道から合流しようとする車が多数。少し危ない。バスやらタクシーやらと並走しながら進むと、左手にある小さな駐輪場に到着。海鮮料理屋から漂う美味しそうな匂いに空腹を誘われる。


 ここまでが旅の始まり。


 俯瞰する。ここは薔薇色の世界。

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