第32話


ひと段落を終えた勇之助達は呑気に食堂で空腹を満たしていた。


「うん、やっぱさ動き回ったからお腹空くよね」

「同意見」

「このお肉美味しい」


「んで、アッシュ」

「うん?」


「お前さーホントさーどうにかなんないの?あれ」


「…大量の血を見るとちょっと正常ではいられなくなっちゃうんです、暴れ足りないとその、あの」


「気持ちはわかるけど、程々にしとけよ?俺は振り払えるからアレだけど、カゲロウは無理だからな!?」


カゲロウを見れば目の前の肉にしか眼中になく一人バクバクと食べている


「ん?食べないんですか?めっちゃ美味しいですよ?」


「カゲロウお前もう少し強くなろうな」


「そうですよ?僕が暴走した時冷静になれるくらい強くなりましょうね」


ニッコリと笑うアッシュが怖かったというのはやめておこう。


無事食事を終えた俺は会計に向かうが、


「お礼ですので、」と、あしらわれた。

あの、悪魔を倒したお礼らしい。

だったらもう少し食べときゃ良かったと勇之助はぼやいた



あの扉の中に入って約5日、抜け出て1日が経とうとしていた


今日はもう休んで明日に備えたほうがアッシュも、カゲロウにもいいだろう


「ふたりとも、今日はもう休むよ」


と、言い3人は共同宿舎に移動した。


共同宿舎には もう先客がて3人が入る隙なんてなかったので、

宿舎から少し離れた食堂に近い小部屋を見つけその中で一晩過ごすことになった。


鬼婦人の時に見たエルフ達の宿舎だったようで…でも今はもぬけの殻で、誰もいないようだった。

あの後どんな処分が下されたのかも知らないけど 勇之助達にはあんまり関心がわかないことでもあった。


「ここ、いいんじゃない?」


「何気に暖房きいてるし、部屋もまあまあ綺麗だし」


「それに、布団あるね。敷いて寝よう」



電気を消し3人は布団の中に潜り込む。


「まだ、起きてる?」


「「うん」」


「明日は巨大植物園にでもいこうと思うんだよね、というか、50階に通じる道がココを通らないとダメみたいでさ 。多分肉食系の植物もいると思うから明日の朝起きたら 調合手伝ってね」


「勇之助、植物というのだから、火が起こせたらいいよな!?」


「そーね、火とか瞬時に着けれたらイイね」


「それなら僕がいるから心配無用だよ?」



「あー俺もアッシュも魔法使えましたね、忘れてたわ。ヤバイと感じたら炎振りかけて、進もう。至る所に罠貼っていけばなんとかなるよ」



3人は明日どう動くか決めてから寝ることにした。



もちろん この小部屋が外から見えないように 隠れ蓑の魔法をかけてから

だけど。




その夜 夜襲をかけようとスタンバイしていた魔物達が怒り狂って血眼になりながら3人をさがしていたときいたのは翌日の朝だったという。


次の日の朝になり勇之助達は何食わぬ顔で食堂に向かった。

向かう中で魔物が衝突してきたけどアッシュが振り払ったからどうなったかなんて知らないけど…食堂の一部の壁が赤く染まってたな。


「あのくらいじゃ、覚醒しないの?」


「アレが五体くらいあったら覚醒しちゃうかもしれないですね」


ふーん、と勇之助は 遅めの朝ご飯を注文する。


3人分揃えた所で一番隅の席に座りこれからのことを決め始めた。


「…まず、この巨大植物園を通過する日にちが最高4日ね。それ以上の滞在は無理ね。

俺らがここに入ったのってさ約7日前じゃん?2日目から昨日まで鬼婦人との戦いだったし、後23日足らずで、頂上は厳しいんだよね。

アッシュ、そういえば薬草どうなったの?」


「ん?持ち運べる量マックスでこの中に入れてある」


アッシュはカバンからフリスクを3枚出してきた。


「フリスクだね」


「これ、一粒一粒が体力をMAXにしてくれる薬草ね、ミント味!」


各自持つよう~に


「「りょーかい」」


「カゲロウに頼んでた武器できた?」


「おぅっ!これなら片手で使えるかなぁと。といっても俺が持ってた武器を少し改良したんだけど」


空気砲である。ミニサイズの


3つ程テーブルに置かれた


勇之助は懐からフラスコ状のケースを出してきた。中には無数の火の玉が入っていた。


「これ、空気砲にセットして最大10連覇まで、一玉で打てるから、狙う箇所は木の幹じゃなくて根っこね、

根っこ、全体、って順で燃やしてこう」


3人はそれぞれセットして懐にしまった。




3日間こもる準備をした3人は


食堂を後にして

巨大植物園に足を踏み入れた。



「なんて、壮大なんだ」

そこには、巨大植物園の扉の向こうには魔物が潜んでいるとは思えないほど綺麗な穏やかな空間が広がっていた。


でも、勇之助は知ってきた。

数々の戦いの中で、オアシスなど無いことを。オアシスぽい雰囲気な所は姑息な魔物が潜んでいる事を


「カゲロウ、どう?」


カゲロウは勇之助の近くまで来て

「あの木の裏に植物ぽい魔物が数体と、池みたいな中には入らない方がいいかも、引きずりこまれるから」


流石狼。


「あとは、なんかいる?」


「あとは、あー、ゴブリンと

進化したオークがいるね」


ゴブリン…オーク…


「聖騎士試験の時 確かゴブリン食べたような…」


「岩塩で食べましたね」


「「美味かったなぁ」」

二人の破顔した様子を見ていたカゲロウがいいなぁっ!と声を漏らす


そんなことも知らず、目の前の敵を倒すために出てきた一匹の勇敢なゴブリンは 瞬殺で急所(勇之助が振り上げた剣によって首を切られる)

を突かれ

肉の塊が1つという状態になっていたわけで


「やーっぱ、後5、6体は必要だよな」


「そーですね、これじゃ少なすぎ」


カゲロウに、肉を預けて勇之助とアッシュは周辺に潜んでいたゴブリンや植物系の魔物を討伐していった。


10分くらい経った後にカゲロウの前にあった肉は更に増えていた。


「す、すごいね」


カゲロウの目の前で勇之助達は手際よくそれらを調理しはじめた。


アッシュは肉を剥ぎ食べれる所だけ回収する。

その他は手を合わせて埋葬していた。

そのあとゴブリン達が所持していた斧を一列に並べて勇之助に知らせた


勇之助はその斧をみて 満面の笑みになり、

火の魔法を唱えた。


かなり、威力強めの魔法を唱えたのだ


爆発音と金属が鳴る音がする。


「でーきたっ。カゲロウ、これで肉塊を4センチ間隔に切ってくれ」


カゲロウには初めて見る調理法にワクワクが止まらない


「勇之助!できたぞっ!」

それを石で作った鉄板の上に乗せ(これも火の魔法をふんだんに使ったので熱い)


パチパチと良い音が響く


「おー肉おー肉!」

3人がお肉が焼けるのを待っていたらその匂いにつられたのか、ゴブリンの悲鳴を聞いたのかは知らないけど


2メートルあるオークがそばまで来ていた。




焼きたてのお肉を食べていたら

後ろから地鳴りが響いた。


「勇之助さん?」

「なんか、後ろにオークいたんですけど」

勇之助達が後ろを振り返ると 目の前の肉をガン見している一匹のオークが居た。


そのオークからグオオオオオオオオオオーグオオオオオオオオオオーと、地鳴りが何かが響いていて、

オークの口の周りから溢れんばかりのヨダレが垂れていた…


勇之助はそのオークに


「これ、食べる?」とお肉を差し出したのだ。


敵からもらう食事に走って行くことを体が止めていたが

施される物、空腹感が勝ちそのオークは勇之助達がいるところまで来てくれた。


勇之助がら貰ったお肉を食べて

「…美味い」


と、



ん?



「君、喋れるの?」


「オークは皆喋れるし自我が持てる」


「ゴブリン時代は自分たち以外は全て敵だと思って行動していたから」


と、のこと。


「これ、ゴブリンの肉なんだけど」


「うん。見てたし、食べられるようじゃ、オークにはなれないし 美味しいね」


彼はそう一言 言った。


「えっ?仲間じゃないの?」


「種別が変わるからな、それにオークは別行動を取るようになる。たまに同族で弱いゴブリンを糧にしているやつなんて五万もいるし、別に」



別にらしい。


「それに、一応俺の支配下のゴブリンを調理している、魔王様には言われたくない」



「あれ?魔王でしょ?あんた。

5日くらい前かな、クリスが久しぶりに来た時に「来るからよろしくね」ってこれ手渡せって言われてたから

俺は君らが来るの知ってたし」


はいっ、と渡された分厚い手紙


「あ、ありがと」



「うん。でさ、お願いあるんだけど」


「なに?お肉追加?」


「あー、それもいいね!それもいいけど…俺も仲間にしてよ」


「えっ?いいの?」


「魔王と、伯爵Jr.、人狼、となれば鬼でしょ?ぶっちゃけここにずっといるの退屈だったし、君達と一緒なら退屈しなそうだし、それに

平気で敵を倒す姿 正直リスペクトしたい」


とりあえず、二人の反応を見ることにした。


アッシュに至っては知らない奴が一人増えるのが嫌なのか顔が怖い


カゲロウは 目をキラキラしていたので大丈夫だろう


そして、俺も仲間にしたいと思っていたから



勇之助達は オークと仲間になった。



「ところでお名前は?


「シュタイン・クルム」


なぜ、シュタイン!?


「もしかして、不死身?」


「あー、先祖がね。今オークだから

次進化できたら 鬼になれるんだよね

その時に不老不死も受け継げるからそうね」



名前って、名前の意味ってすげぇとその時 勇之助は再確認した。


















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