第31話
「ふふっ、なんてね。私の話なんてつまらないでしょお?もう、時間もないし、ここで養分となってもらうわよ?」
鬼婦人が思い出したかのように笑った。
笑っている顔は少女のよう。
目を開けた顔は 般若の様。
ずっと愛されていたかった、1人の人ではなくて、みんなに
みんなの心の中ではなくて現実世界に
綺麗なまま、美しいまま、気高いままで、
時代が、過ぎるのは早いもので少女は老婆へ変わっていった。
たくさんいた人たちも離れていったし、死んでいった。誰にも愛されなくなって場所を求めた。
愛に飢えた老婆は新しい場所を得た。
闘技場と言う名の強者のみが立てる場所へと
老婆は勝つごとに若く美しく過去の栄光を取り戻していった、逆にプライドが高くなり高慢になり、暴力的に非道になりながら
ただただ自分に注がれる愛を求めて
「待って、殺す前に貴女と契約した悪魔の名前を教えて」
「名前?どうだったかしら?小太りだっただけだわねぇ」
でも、そんなこと教えても今の現状は変わらないし、変える気もないし、もう、お腹すいたから いいよね?
ネジが外れた様に鬼婦人の動きが変化した。
先程の人とは別人の様で、何かに取り憑かれているともみえた。
「アッシュ」
「…やっと呼んでくれた。えっとね彼女の後ろというか魂の糸ら辺に
ある悪魔がいるのが見えるかな。
多分それが黒幕、彼女は被害者」
「被害者っても散々人殺してるから同罪なんだけどさ…あと、彼女の寿命は完全に尽きてるから、あの悪魔が離れたら消滅しちゃうね」
「流石伯爵の息子」
「ふっふーん、もっと褒めて」
「はいはい」勇之助は有能な人アッシュの頭を撫でながら褒めた
「カゲロウ、エルフ達逃した?」
その後ろで俺も撫でて欲しいなぁーと待機していたカゲロウに様子を聞くと、
「うん、もう俺らと鬼婦人以外いないよ」
だから、ハメ外しても誰も死なないよ
満面の笑顔付きで帰ってきた。
うん、わかったから近いから
「あれだよね、カゲロウもさ甘えただよね」
「主人に褒められるのはいいものだな!」
「あとさ、主人じゃないし、友達でしょ?」
「勇之助は勇之助だもんな!」
これで耳生えて尻尾生えてんだもんな
まるで忠犬ハチだわ。
「無視しないでくださる?」
ああ、そういえば戦闘中でしたね。
「あ、戦闘中だったね」
「イライラしますわ?何故当たらないのかしら?」
「そりゃあ、避けてますし」
「私の食糧も逃がしてくれたみたいね」
「あー、エルフ達のことですか?」
「ええ、大事な非常食」
「仲間なのに?」
「仲間だから…永遠に一緒にいれるでしょう?」
仲間だから糧にする。それが彼女の最大の愛の証。
「本当に大事な人は食べちゃダメだよ」
「なぜ?」
「食べてしまったらもう二度会えない」
「会えますわ」
そう鬼婦人は笑う
「目を瞑れば見えます…あら?」
「あら?なぜ?何時も目を瞑れば見えていた人たちが居ませんわ、私をお姫様の様に扱ってくれた人たち、使用人、かあ様、とお様、あら?どおして?なぜ?」
「貴女の寿命は完全に尽きている。貴女は罪を犯しすぎたが、被害者でもある」
「寿命が尽きた?嘘よ!私は永遠の命を貰ったの」
勇之助は嘘よ!と叫ぶ鬼婦人に、さらに真実を教えた
「貴女は永遠の命を貰ってはいない、命の継ぎ足しをしていただけ、殺した人の命を貰っただけ、継ぎ足した命は永遠の命ではない。
最初は普通に誰よりも可愛く綺麗になりたいという願望だけだった。
でも?貴女よりも綺麗で美しい娘が現れた
貴女はその娘に嫉妬し妬んだ、そして悪魔と契約してしまった
しかも、《アモゼア》に願ってしまった
そろそろ出てきたらどうだ?アモゼア、いやアモール・ゼネブル」
彼女の頭上から黒い魂のかたまりが
ズズズ…っと出てきた。
それが彼女の本体。いや、彼女の意識はもうないのかもしれない…
「…おや?私の義体に何の用です?」
アモゼアは義体として使っていた彼女を脱ぎ捨てて、
勇之助の前に現れた
脱ぎ捨てられた彼女はもう 使い古しの紙っぺらの様であった
「せっかく使えそうな体でしたのに…まあ、いい糧にはなってくれましたけどな。私の糧に食糧に、」
目の前の禍々しい塊は1人の人間の姿になっていった。
うん、彼女の言うとうり 小太りだ。
そして、とても醜い。
とても、とても吐き気がするように
「さてと、君は中々面白い身体をしているようだね、是非僕の新しい糧になってもらうよ!」
その、醜い男は勇之助目指して向かってくるので、軽く会釈して勇之助はその場から消えた
突然消えた対象物に慌てるのはその、醜男
あたりを見渡すが勇之助の姿はまるで見えない
「何処にいるんだ!出てこい!」
(いや、なんでわざわざ敵に姿見せなきゃいけないんだよ)
かわりに 金属音が響いた。
「ふふっありがとうございました!貴方にはとってもとっても感謝しているんです!だって、貴方に勝てば僕はもっと上にいける!だから、ありがとうございました!」
そこには満面の笑みを浮かべて浮き足立った、アッシュが佇んでいた
「あっ、そうそう、貴方も不死ではないんですってね!調べてたらでてきたんですよ!便利ですよね!世界の進歩!貴方の弱点
左眼なんですってね!しかも、再生不可能にすれば貴方は朽ちるって本当なのかな?勇之助さん!僕試してみますね!」
「あー、はいはい。頑張って」
勇之助が倒せばいい話なのだが、沢山の血を見たせいでアッシュが覚醒してしまったので、落とし前をそいつでなんとかしようという話になり、現在に至る。
「カゲロウはさ、アッシュが覚醒して暴れたの知ってる?」
「いやー、自分も今回が初見なんで、というか、目が据わりすぎて怖くて近づきたくないっす」
「だよね。あの状態のアッシュには俺も嫌かな」
勇之助とカゲロウは遠目でみれる程度の場所に移りアッシュの戦いを見守る事にした。
「ふふっ、赤い血はやはりいいですねぇ」
「くっ、まあ、弱点がわかったとして、貴様が私に触れることなど…」
ブチッ
「触れることなど?出来ましたけどー?」
相手の耳を先ずは噛みちぎった。
「あはー!中々良いお色でっ!でも、不味いかなー」
「かっはっ!?」
次に首を切り落とした
「うわーっ!最高だよ!噴水みたいでさ!」
「ッ!?」
「だってさ、痛覚もないんでしょ?だったらいいかなーって、ふふっ聞こえないか」
アッシュは相手の声が聞こえないと身振り手振りした後に
薄気味悪い笑みを浮かべたその瞬間
アッシュの目の色が切り替わった
普段見慣れているグリーンの綺麗な目から
真紅のレッドに そういえば伯爵もこの色だっけ、もっと深い色だったけど
「やっぱ、左眼なのかなー?だってこんなにも引き千切ってもまだ、
動脈動いてるし、息遣い聞こえるし、心臓も動いてる!凄いなぁー」
目の前で生き生きと身体を引きちぎる相手を見て怯えきらない魔物など居ないだろう、アッシュは
やはり満面の笑みで
「さいごっ!」
と、
左の眼球を無造作に引き千切った
相手の悪魔は 動いてるようには見えなかった。
本当にその 情報の通り
あっけなく、朽ち果てた。のだが、
アッシュに至っては 物足りないらしく、俺に攻撃をしてきたので、
「次攻撃したらお前の名前をよばねぇぞ、伯爵Jr.って呼んでやる」
と、かなり低めなヴォイスで言ってやったら、
正気に戻ったらしく
それだけはっ!それだけはっ!と俺の足元で懇願してきたので、アッシュの姿を見て 憔悴しきっているカゲロウを担いでその、エルフっ子の血みどろパーティを後にした。
扉の外で 目が覚めたエルフや、魔物達がただただ佇んでいて、
俺たちを見た途端が阿鼻叫喚だった。
エルフは顔面蒼白だし、モンスターさん達は 目を合わしてくれない
そりゃあそうなのだけど、ちと寂し。
「クリス~!勇之助様達あの悪魔倒したってよ」
クリスはもっていた紅茶のカップを盛大に落とした
近くにいたエルフの子がキャッチしたけど
「あの辺の悪魔って、鬼婦人?」
ラファが紅茶を入れなおしながら答える
「そー、そー、あの老婆」
「へー、じゃあそろそろくる?」
「んー、まだじゃない?だって今出てきたとこだもん」
「でもさー、あの老婆って悪魔だつけ?」
「えっとね、悪魔に憑かれてたの」
「あー、なるほどねぇ。あの扉さぁ、微かに悪魔の匂いしたもん、開けなかったけど」
「ま、今回がその悪魔倒したの、アッシュだってよ。よかったな」
「えっ?息子?」
ズズっと紅茶をすすりながら
闘技場内で配られた号外を手渡した。
そこには、
「鬼婦人敗れる」
「血の海になった」
など、言葉が並べられていた
3人の写真も貼られていた
直後だったということで
珍しくアッシュの目の色は真紅のまままだし、カゲロウは憔悴してるし、勇之助に至っては目が据わっている。
なんとも言えない写真であった。
「大丈夫…かなこれ」
「なんとかなんじゃないっすか?」
子を思うクリスと、その場に子がいないラファが待ち合わせ場所で呟いていた。
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