Stadt des Lichts 〜Ⅰ〜

この世界の夏は暑い。とことん暑い。

ドイクス北方出会ってもその暑さは大概だ。

そのせいで移動が大幅に遅れることだってやむを得ない。軽装の俺たちはそこまで遅れることはなかったが、体力のないエフィはもちろんジンすらバテバテだ。


「も、もうすぐルクセントだよ・・・・・・・はぁはぁ」

「あんま無理すんなよエフィ。最悪俺が背負ってやるから」


限界に近いのにルクセントを懸命に目指す姿は素晴らしいが、限界は限界だろう。善意で声をかけてやるがエフィは首を振った。それ以降話さないことから、話す体力ももう尽きているとしか言えない。


・・・・・・っと、今は3人じゃなかったんだな。


フェリシネリア=シィ=アグラヴェイン。

アグラヴェイン家の二女であり、パーシヴァル家の陰謀で家を追い出されたであろう人物、と言うべきか。朱色の瞳に同色の髪。肩まで伸びる巻き毛は走ったせいかかなり乱れている。見た目こそ、王女然としているが今は精神的に弱っている。


ちなみに早々に体力が尽きたためロイがおぶる羽目になった。可哀想に。


「み、見えた」

「ああ。あれが【光の街】ルクセント、か」

「とりあえず早く宿を探そう」


金はあると言わんばかりの形相でルクセントへ向かう。それもそうか、限界も限界だ。


それにしてもロイが一言も喋らないな。


◆ ◆ ◆


「着いたー!」


ルクセントへ入って開口一番エフィの元気な声が轟く。


「とりあえず宿探すか。さすがに疲れた」

「うん!」


やけに無邪気だな、エフィは。

とりあえず身近な宿を見つけてはいる。


「4泊いくらですか?」

「4人か?なら2000シクルだ」

「じゃあそれで頼む」

「あいよ。2部屋にになるぞ」

「ああ」


事務的なやり取りを済ませ、部屋へ向かう。



・・・・・・のだが。


「エフィ、なんでお前がこっちにいる」

「わ、私はロイと一緒に寝る」


急に変なことを言い出すのがエフィの個性なのか?


諦めて寝るか。







変な事はなかったからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

CLOVERS 黒羽くろ @sakurazuki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ