Bandit 〜Ⅱ〜
――――どうして、どうして
それはロイが逃げ回っていた時とは違う、明るい森の中。オレンジの長髪を揺らし、華奢な体で走っていた。
彼女の手の甲には黒い四葉の紋章。
「……痛っ」
少女は木の根に足をかけて転んだところに3人の追っ手が迫る。
「ハッ運のないヤツめ。さあ大人しく捕まりな」
「あ、あなた達!このアグラヴェイン家の人間である私にこんなことしてもいいと思っているのですか」
「おいおい笑わせるなよ。お前はそのアグラヴェイン家に捨てられたんだろ?」
少女の翡翠色の瞳が映す男は残酷なことを告げる。少女は動揺を隠しきれず、思わず目に涙を浮かべた。
「そ、それは……な、なにかの手違いです」
「じゃあお前はなんでここにいる?」
「ッ」
「答えられないんだろ。まあいい、俺たちがそんな事考えられないくらい気持ちよくさせてやるよ」
男は少女のその豊満な胸に視線を置き、少女を囲もうとする。
――――嗚呼、誰か助けて
「――――ぐはっ」
少女が願った矢先、男の腹にナイフが突き刺さる。
「お前ら、何してやがる」
「殺すなよ、ジン」
「あったりめぇだ。死なない程度に殺すだけだ」
「それ、死ぬ」
少女を襲っていた男達と少女の前に現れたのは、ロイ達だ。
「あ、貴方達は……」
「細かい話は後だ。やるぞ、ロイ」
「ああ。エフィ、そいつを頼んだぞ!」
「うん」
ロイは
ジンは少女に1番近い男の前に壁を作り、自らそれ破壊する。破壊る瞬間、ナイフを飛ばす。
「お、おいこんなガキ共にやられてんのかよお前らぁ!」
「どうだい?その餓鬼に主導権を握られる気分は?」
ロイは少女と会話としていた男の前に行く。
エフィは無力化された男2人の間を通り少女を救出する。
「大丈夫?」
「わ、わたくしは大丈夫ですわ。あ、あなた達は……」
「詳しいことは後で。君の紋章は何を使える?」
「も、紋章……こ、これは…………」
「今は君のその力がいるかもしれない。だから言って」
「ほ、炎を出せますわ」
全く予想してなかった回答にエフィが目を剥く。
――――え、炎ってあの炎?
内心理解し難い内容だったがなんとか封じ込めて次へ移ろうとするが疑念は消えない。
「な、名前は?」
「フェリシネリア=シィ=アグラヴェインですわ」
「そう。私はエフィ=クローバー。とりあえずこっち来て」
「え、ちょっ――――」
◆ ◆ ◆
さて、エフィ達は行ったか。しかしこの男、独特の雰囲気を感じるな。
「ジン、いけるか?」
「俺がビビると思ってんのか?」
「なら良い」
この男も紋章持ちか?いや手の甲に紋章はない。手の甲以外という説もあるが……。
男の瞳には紅いスペードのマークがあった。
こいつ……自らの瞳に紋章となる物を写している?
こいつも紋章持ちで当たりだ。
俺は駆け出す、と同時にジンは男の四方を囲むように壁を建てる。
「その手は読めてるんだよッ!」
「なッ」
「大丈夫だ」
男はジンの作った壁を簡単に壊す。
筋力でも上昇させる紋章か?すごい馬鹿力だな。
だが、俺たちだってそんな弱いわけじゃない。
俺は壊された壁と共に男を超える。そして反対側に作られた壁を蹴り、短剣を突きつける。
「……ぐッ!」
「ハッその程度の攻撃で俺を倒せると思ったのか?ガキ」
「最初から分かってた……だと……」
「反転して蹴り飛ばす、か。強いなお前」
「そりゃあ
スペード?クローバーみたいなものなのか……。
なんにせよ所詮は筋力上昇。短距離転移の敵じゃない。
「チッ。ちまちましやがって。オラよっ」
一見狙いを定めていないように見える一撃。だが、確実に俺を捉えている。
「させるかッ」
「ふっ」
ジンが壁を出し、男が壊している隙に懐へ潜るッ。
「おらぁあああああああっ」
「……っぐ」
俺が突き出した短剣は確実に男の横腹を貫いた。
「ジンっ!」
「ああ。大人しくしろよ、盗賊」
「……ハハッダメか。はいはい抵抗はしねぇよ」
男を拘束する。
「あいつらと合流したらたっぷりと話してもらうからな」
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