Bandit 〜Ⅰ〜
俺たちは服屋で服を買いに来ている。買いに来ているのだが。
「お、おいエフィ。お前なにしてる?」
「なにって、服選んでるだけだよ?」
俺の前にいる蒼い髪の少女は何故か目の前で服を脱ぎ始める。160cmくらいの小柄な少女の肌があらわになっていく。流石に目のやり場に困る。
「おいエフィ、試着ならあっちでやってくれ」
「…………わ、わかった」
エフィも自分がどういう状況なのか理解したらしく、顔を紅く染め店の奥へ行く。そういえば、この途中、エフィはよく話すようになった気がする。あとはエフィが俺よりも歳上だとは思わなかったな。
「ど、どう?」
「おお似合ってるぞ」
少しして半袖の青いシャツと水色の短パンを着たエフィが帰ってきた。俺は黒いシャツと同色の長ズボンを、買った。
「なんで長いの?」
「俺は戦うだろ?」
「なるほど」
さて、食糧、衣服、宿は確保した。あとは情報と言ったところか。ただこの町じゃ大した情報も無さそうだが。あとは何を聞くか。町長に話してみるか。
「エフィ、明日町長から話聞いたらここを
「うん。それでまだ時間あるけど、どうする?」
「自由だ。だがあまり離れるなよ。俺は
「私もついて行く」
俺たちの紋章は手の甲に出てきているから恐らく他の奴らもそうだろうな。あとは色。エフィの能力でも出てこない結論だ。多分この町じゃ情報は出ないだろうが、紋章を持ってるやつくらい見つかるはずだ。
俺たちは宿から少し歩いた街の中央。
「お前らどけぇぇぇえっ!」
「っと。大丈夫かエフィ」
広場の外周のそばにある店から若い男が飛び出してきた。俺はすかさずエフィを抱え横に飛び引く。男は店長らしき者に追われていた。
「ロイ……」
「おう」
エフィは男の手の甲に紋章があることを見抜いた。俺たちは店長と男を追う。エフィを抱きながら走る。裏路地に入ったところで男が仕掛ける。
「おらよっ!」
「なっ!?」
「ふぅっ」
男は石でできた障壁を生み出す。おそらくこれが奴の能力か。店長らしき人は狼狽えるが俺たちは
「……っ!?どういうことだてめぇら」
「待て、俺たちは敵じゃない」
エフィを下ろし両手を上げて危害を加える気がないと示す。
――――武器を買っておくべきだったな
そう思うが今は武器を持っていた方が厄介だったか。
「な、なんで
「俺達も
「お、お前らもか」
「そうだ…………黒、か」
男が持っていた方紋章は黒く輝いていた。俺は
そこで俺はふと、大事なことをしてないことに気づいた。
「俺はロイだ。こいつはエフィ。お前は?」
「お、俺はジンだ。ジン=グレイン」
ファミリーネームがあるだと。こいつは迫害されてないのか?だったらなんで……
「そうかジン、お前にいくつか質問したいのだがいいか?その紋章についてだ。もちろんタダでとは言わない。質問に答えてくれたら俺達もお前の質問は答える」
「……はぁ。わかったよ」
エフィと目配せし、質問を始める。
「まずお前は何かに居場所を追われたか?」
「ああ。もともと孤児院出身だったんだがな、国の司令でそこが潰された。居場所を無くした俺たちは引き取ってくれる家を探した」
「見つかったのか?」
「不運にも俺を引き取るやつはいなかった。このファミリーネームは孤児院の共通のものだ」
そういう事だったか。クローバーと同じようなものか。
「お前は国を恨んでるか?」
「ああそりゃ選んでるさ!あの最高の日々をぶち壊した
「ジン。私たちはこの国に、世界に復讐をするために動いている。だから――――」
「だから一緒に果たそうってか?俺なんかが力になれんのかよ。そもそも、お前らの紋章の力はなんなんだよ」
ジンはエフィの言葉を遮り質問する。真っ当な質問だろう。相手を知らなければ信用なんて出来ない。
「私は
「だからか、俺の壁を抜けれたのは」
「そうだ」
「まあ考えてやってもいいが……まずはあいつを何とかしろ!」
ジンが向けた視線の先には壁を壊した店長と町の面々が
やっぱ武器持つべきだったな。
俺たちは裏路地にを必死に走る。体力の無いエフィはもちろん抱えている。
ジンが羨ましそうに目を向けるが気にしてる暇はない。
俺は紋章行使による代償はない。だが、ジンはあるのか?もし代償がないなら1つ考えがあるが……。
「ジン、紋章の連続行使による代償はあるか?」
「んなもんねぇよっ」
「ならいい案があるぞ。ジンそこに壁を作れ」
俺が指示したのは裏路地から大通りに出るT字路。
ただ行き止まりを作るだけだが、俺の短距離転移があれば越えられる。
「はっ!?バカ言ってんじゃ――――」
「死にたくなかったれ壁を作れ!」
「お、おうよ。そらぁっ!」
ジンが壁を生成する。壁は目と鼻の先だ。町の者共は笑みを浮かべる。
「エフィ、ジンの手を繋げ」
「うん」
エフィがジンの手を繋ぎ――――ジンは顔を真っ赤に染めていた――――準備は整った。
俺は壁を――――
抜けなかった。
俺は壁を蹴り、体を仰向けにしそこで
「転移!転移!転移」
転移の連続行使に寄る事実上の空中浮遊。
「お、おおぉおおおおおおおおっ!」
ジンは声を上げる。転移により壁を越えた俺は壁に隣接する家の屋根に足を置いた。
「ふぅなんとかなったか」
「ロイ、死ぬところだった」
「本当だ。お前何やってやがる」
「俺も死ぬかと思ったよ。だがこれしかないだろ。あとは屋根を伝って宿まで行く。バレないように動くぞ」
まだ屋根を登っただけで上にいることはバレてるはずだ。今すぐに動きださなければ捕えられるだろう。
「やつは壁を抜ける力を持っている!大通りの方行ったぞ!」
――――え、こいつら馬鹿なのか?
まあいい好機だ。
俺たちは屋根を伝い宿まで着いた。
「やっとだ。部屋は1部屋しかないから1人床で寝ることになるが」
「俺が転がり込んだんだ、俺が床で寝る」
「ありがとうジン。それでだ、一緒に来てくれるか?」
「ああ。ここまで来たら着いていくしかないだろ?」
「ありがと、ジン」
エフィも感謝を述べる。
俺たちは顔を見合わせ笑った。
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