第80話:戦場と墓標

 どこからともなく吹く風が、広大な大地の荒れた肌を擦っていく。

 そこへ空高くから降りそそぐ陽射しは、ときおり流れる雲に遮られて影を作っていた。

 その影にまぎれるように点在する、石で作られた崩れかけの遺跡は、ただそこに佇むだけなのに不気味さを感じさせる。


 どう見ても地上のどこかに見えるが、ここは地下ダンジョンの中である。

 だから広大と言っても、大地は最大でも一辺が5キロメートル四方しか広がっていないはずだ。

 それでも、ダンジョンとして見れば、異様に広い空間である事はまちがいない。


 これが、【戦場型バトルフィールドタイプ】と呼ばれるダンジョン。


 「ダンジョン」は本来、「地下牢」という意味ではあるが、【戦場型バトルフィールドタイプ】も立方体の閉鎖的空間のため「牢」というイメージは正しいのかもしれない。

 そしてこの「牢」を脱出クリアする条件には、いくつかのタイプがある。


 単純明快なのが、殲滅タイプ。

 まさにそこにいる敵を全て倒すことでクリアとなる。

 このタイプの場合は、敵が再出現リポップしないという特徴がある。

 しかし、このダンジョンで再出現リポップが確認できているため、殲滅タイプではないだろう。


 すると残りは、イベントタイプとゴールタイプということになる。


 イベントタイプは、謎解きや「各所のスイッチを入れる」等のイベントをクリアすることが条件になどだ。

 しかし、今のところそれらしき仕掛けには出会っていない。


 つまりここは、ゴールタイプだと推測された。

 要するに、ゴールを目指すだけの単純なものである。


 もしゴールタイプだとすれば、【巣型】の1部屋が大きくなっただけとも言えるかもしれない。

 しかしもっとも違うのは、【巣型】なら数十の部屋にいる敵が、1つの空間に全て存在するということである。

 これにより連戦になったり、1パーティーでは持て余すほどの敵に囲まれたり、乱戦になったりすることもある。

 さらに敵対パーティーが侵入してくれば、ほとんどバトルロイヤル状態となる。

 侵攻ルートや敵との戦闘位置、周囲の警戒など、戦術よりもより戦略的な判断も必要になってくる。


 ひとつまちがえれば、一瞬で全滅するリスクがあるダンジョンだった。

 しかし、その過酷な戦場も、すでに半分ぐらいまで進んでいた。

 ここまで、なるべく戦いを避けて進んでいたが、さすがに後半は魔物を避けるのも難しくなる。



ロスト≫ 全部隊、もう少し西によってください! 東に【ロック・ゴーレム】の群れがいます! 魔力探知の範囲は広いから見つかりますよ!



 全体の指示をだすロストの思念の声に合わせて、各リーダーが細かい指示をだす。


「2人とも、正面の【ファイヤー・ドール】を背後に行かせないでよ! 根性見せなさい!」


「言われなくても!」


「任せとけやですよ!」


 レアの命令に、ダークアイと御影が応じる。

 南から、燃えさかる炎で象られた操り人形が10体ほど群れをなして迫ってきている。

 その動きは、まるでゾンビの群れのようだ。

 それを大盾を持った2人が、弾きとばしたり押し返しながらその場を凌いでいる。


「タゲ安定しましたね。好機です! Aチーム右から、Bチーム左から1匹ずつ撃破しなさい!」


 雌雄の号令で、2つに別れたアタッカーチームが左右から【ファイヤー・ドール】に飛びこんでいく。

 敵は精霊系の魔物。

 物理攻撃は効きにくいため、魔術スキルの攻撃を混ぜながら倒していく。

 魔術スキルは強力だが、MP消費の問題があった。

 そのため、物理攻撃とのバランスをとりながら戦っている。


「第一チーム、回復が終わりましたの。第二チームとチェンジするの! 第二チームは休憩にはいるの!」


 ラキナの指令で、今まで回復担当をしていたデクスタとシニスタが下がり、ナオト・ブルーとその他の後衛メンバーが立ちあがり、早速前衛の回復を行い始める。

 デクスタとシニスタの方は、そのまま座りこみ【マナ・チャクラ】という標準スキルでMPの回復をし始めた。


(ハイランカー、やっぱりすごい……)


 そんな中。

 唯一、待機状態であった中衛のリーダーであるフォルチュナは、全員のバトルの動きをひとつも見逃さないようにと目を光らせ、そして感心していた。


(本当に勉強になる……)


 場合によっては前衛も後衛も受けもつフォルチュナは、もちろんここに来るまでもロストやレア、そしてラキナにいろいろと鍛えてもらってきていた。

 しかし、今はそれ以外のハイランカーもたくさんいる。

 その動き一つ一つから、ロストたちからは習いきれなかったバトルのコツのようなものを読み取ることができる。

 もちろん、それができるのは、ロストたちが基礎とある程度の応用を叩きこんでくれたおかげだろう。

 ベースとなる知識とテクニックを身につけたからこそ、このハイランカーたちのすごさに気づけるようになったのだ。


「本気で驚いたわ。いやマジで」


 タンク役だが、どこか手持ち無沙汰な感じのTKGが、フォルチュナの横に腕を組んで立っていた。

 その脇には【哄笑】が挟まれているが、彼はまだそれをあまり振っていない。

 出番が来ていないのだ。


「正直、即席のアライアンスなんて無茶言うとるわ……って思っとったけど、逆にこないに安定したアライアンスなんて初めてや」


「それはやっぱり、みなさんハイランカーですし」


「もちろん、それもある。でもな、ハイランカーばかりだから癖も強くてうまくいかんこともあるわけや。なにしろ、WSDは数多のスキルで数多の戦闘スタイルがとれるゲームやさかい」


「じゃあ、やっぱり……」


「ん? なんやと思う?」


「チームリーダーの力ではないでしょうか。各チームリーダーが的確な指示をだしているからこそ、歯車がかみ合っている気がします」


「わいも同意見や。普通、即席のアライアンスやるなら、基本パーティを4つ作る方法をとるもんや」


「盾1、攻撃3、回復2……とかですか?」


「そうやな。メンバーによって多少は構成もちゃうけど、だいたいそんな感じや。そうしておけば、指揮者以外は自分たちのパーティーだけ気にしておけばいい。でも、このスタイルは合理的かもしれんが、効率的とは限らへんのや」


「はい、わかります。例えば、回復役ですね。今ぐらいの敵なら、盾2、攻撃6の2パーティ分を1パーティ分の回復2で賄えています。おかげでMPにかなり余裕がある」


「そうそう。そういう変則的な対応は、この形態の方がやりやすい。でも、その分、変則的な動きをきちんと統括する者がいる」


「それを前衛と後衛のリーダーたちが、見事にこなしているというわけですね」


「そやな。そしてその力はそのまま、全てを統括するロストはんの力でもある」


 フォルチュナはTKGとともに、後方で東の方を注視しているロストを見つめる。


「やっぱりすごいですね、ロストさんは……」


「悔しいけどな。正直、勝てる気せんわ……。だいたい、ほとんどソロプレイしかしとらんくせに、なんでアライアンスの指揮なんてとれるんや。反則やろ!」


「はい、そこ! お喋りしている暇はありませんよ」


 こちらに気がついたロストが、肉声で注意してくる。

 そして次に、思念で全員に通達。



ロスト≫ 東にいた【ロック・ゴーレム】が4体、こちらに向かってきます。


TKG≫ なんや、見つかったんかい!


ロスト≫ 位置固定タイプではなく、徘徊タイプなのでしかたありません。

ロスト≫ 盾1枚と中衛で対応してください。


レア≫ カラス顔、ゴーレムならあなたでもいけるでしょ!


TKG≫ 誰がカラス顔やねん!

TKG≫ ってか、ほんまに猫かぶりだったんやな、レアはん!



 そう言うと、TKGは【哄笑】を構えなおして東を向く。


「サポート、頼むで!」


「はい!」


 TKGの言葉に、フォルチュナは力強く応える。

 今こそ、学んできたことを実践するときた。


「中衛、行きます! エースさんとカタストロフさんは攻撃。ミネストローネさんは回復! 私がマラソンしますので、TKGさんは1体ずつ釣ってください!」



ロスト≫ 乱戦にならない、かつ後衛がサポートできる位置取りで!


TKG≫ 任せとき!



 まずは、フォルチュナが敵に突っこむように走る。

 敵は4体。このままではまずい。


 パーティーの盾となるタンク役だが、TKGは盾を持たないタンク役だ。

 槍で敵の攻撃を捌きながら戦うのだが、通常ならば2対ぐらいは相手をできる。

 しかし、今は敵とのレベル差がかなりある。

 いくら捌くことに優れた【哄笑】を持っていても、安定して捌けるのは1体だろう。

 その間、残りの3体を何とかしなければならない。


(これは私の得意技!)


 適当に砕けた岩を人形につなげたような【ロック・ゴーレム】は、人の身長の1.5倍ぐらいの大きさがある。

 足は速くないが、歩幅は長い。

 おかげで間合いがとりにくい魔物だ。


(この辺り……)


 敵からの攻撃が届かず、こちらのスキル効果が届くギリギリの距離。


「――【チェンジ・アーマメント】【ストライダーモード】!」


 フォルチュナの全身が、まばゆい金色の光を放つ。

 その周りに、流星群のようなエフェクトと、ピンクのハートマークが飛び散る。

 まさにそれは、アニメで見る魔法少女の変身シーンのようだった。



――――――――――――――――――――――――――レア度:★★★★――

【チェンジ・アーマメント】/報酬取得

 必要SP:20/発動時間:0/使用間隔:10/効果時間:0

 消費MP:0/属性:なし/威力:0

 説明:全身の装備内容を3セット記憶でき、そのセット内容に装備変更できる。その際にまばゆい特殊エフェクトが発生し、半径10メートル以内にいる敵対者の自分に対する敵対心をあげて一瞬だけ怯ませる。音声コマンドのみ対応。「チェンジ・アーマメント」のあとに、装備セット名を続けることで発動。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 変身が終わると、フォルチュナの姿はすっかり変わっていた。

 マリンブルーを基調にした、体に密着する全身一体型のスーツに、肩や肘、腰や膝に羽根のようなパーツがついている。

 そして自転車のスポーツ用ヘルメットにフェイスガードが付いたような頭装備を被っていた。

 さらに背中には、燕を思わすような白いマントがたなびいている。

 防御力も攻撃力も捨てて、すべての装備を移動速度強化に極振りした装備セット。



レア≫ ああ! 【チェンジ・アーマメント】! ずるい!



 盾役の指示をしながら、離れた自分のスキルによく気がつくものだと、フォルチュナは欲望を晒すレアに感心する。


「――【ストライド・ステップ】!」


 【チェンジ・アーマメント】により、フォルチュナに敵対心を強くもった【ロック・ゴーレム】が、すべて向かってくる。

 そこでかるくバックステップ。

 するとたった1回のバックステップで、10メートル以上背後に高速移動をおこなえる。



――――――――――――――――――――――――――レア度:★★★★――

【ストライド・ステップ】/報酬取得

 必要SP:10/発動時間:0/使用間隔:120/効果時間:60

 消費MP:0/属性:なし/威力:0

 説明:両足を地面から離して移動すると、その移動距離が10倍になる。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「――【サブオーディネーション・エレメンタル】!」



――――――――――――――――――――――――――レア度:★★★★★―

【サブオーディネーション・エレメンタル】/報酬取得

 必要SP:30/発動時間:3/使用間隔:180/効果時間:180

 消費MP:100/属性:幻影/威力:0

 説明:効果時間内、精霊型魔物を操ることができる。成功率は使用者と魔物のレベル差により判断される。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 精霊型である【ロック・ゴーレム】には効果が期待できる。

 結果は、成功。

 1体のゴーレムがフォルチュナの指示に従い、別の1体を攻撃し始める。


 残り2体。


「いい手際や、フォルチュナはん! 【ストライク・スピアー】!」


 その内の1体に、TKGが攻撃を仕掛ける。

 突きだした槍が生みだした衝撃波が、見えない刃先となって【ロック・ゴーレム】の胸元にダメージを与えた。


 これで攻撃を受けた【ロック・ゴーレム】は、フォルチュナではなくTKGを狙いに行く。

 あとはそれを斃すまで、フォルチュナは速度を活かして残りの1体を連れ回しながら、同士討ちしている2体の【ロック・ゴーレム】の様子をうかがっていればいいだけだ。

 このように魔物を連れ回しながら時間稼ぎをする方法を俗に「マラソン戦法」と呼んでいた。


「オラオラオラ!」


 TKGが声をあげながら、【ロック・ゴーレム】の攻撃を捌いていく。

 人の胴ぐらいある巨大な拳が、細い槍にまとわれた風に巻きとられ、横に流れていく様子は非常に不思議な光景だ。


「高らかに笑え、【哄笑】!」


 そして槍を振うたびに、風が唸り「ワッハハハ」というような音が鳴り響く。

 隙ができると、TKGの攻撃が【ロック・ゴーレム】のHPを削っていく。


「こりゃあ、最高や!」


 【ロック・ゴーレム】は、魔術スキルを持っていない。

 精霊型魔物でありながら、物理攻撃に特化している。

 おかげで、TKGにとって相性がいい敵だった。


(これなら……)


 問題なくいける。

 そう思っていた矢先だった。

 足下が大きく揺れ動き、地響きが足の底から伝わってくる。


「地震!?」


 フォルチュナから少し離れた大地が、唐突に盛り上がってくる。

 それはすごい勢いで丘のように膨れると、今度は卵が割れるように罅がはいり、それが亀裂となっていく。

 亀裂を破って、そこから何かが立ちあがる。


「あれはまさか……」


 【ロック・ゴーレム】から走って逃げながらも、その立ちあがった巨体を見つめていた。

 それは【ロック・ゴーレム】を大きくして、さらに刺々しい鎧をまとわせたごとき魔物。

 黄土色をした、自分の身長の5倍はありそうな、目も鼻も耳もない巨人。


「【キング・ゴーレム】……フィールドボス!」


 【戦場型バトルフィールドタイプ】には、必ずフィールドボスと呼ばれる魔物が配置される。

 出現タイミングは【戦場型バトルフィールドタイプ】によって異なるため、どこで遭遇するかはわからないが、このタイミングはかなり悪いかもしれない。

 まだ本陣は、【ファイヤー・ドール】を相手にしているし、さらに【ロック・ゴーレム】もまだ残っている。



フォルチュナ≫ ごめんなさい! 私がボスの感知エリアに入ってしまったかも!



 自分がマラソン中に走りすぎてしまったのかもしれない。

 もう少しコンパクトにマラソンするべきだったと反省するが、ともかく何とかしなければならない。

 ここはボスの敵対心ヘイトも稼いで、マラソンをするべきだろうか。

 そうすれば最悪、自分が死んでもかなり時間が稼げるはずだ。



フォルチュナ≫ 私がボスもマラソンしますから――


ロスト≫ その必要はありませんよ。


フォルチュナ≫ え?


ロスト≫ 盾1、【アース・バインド】もち後衛2、ボスに向かって。

ロスト≫ 盾はヘイトとって後衛を守護、後衛2は【アース・バインド】をボスに!



 ロストの指示で、各リーダーがさらに細かい指示をだす。


(【アース・バインド】って、まさか……あれを!?)


 フォルチュナは、ロストがやろうとしていることを察する。

 もし予想が当たっているならば、攻撃範囲は広範囲だから近づくわけにはいかない。


 だが、同時に気になる事がある。

 【アース・バインド】要員を2名指定しているということだ。

 過去の戦いの記憶で、レアが【アース・バインド】を失敗したときのことが蘇る。


(そうか。レベル差の保険……)


 デクスタとシニスタは、今のところレアのサポートに回っている。

 つまり回復要員でくるのは、レベル50台のメンバー。

 目の前のボスに、【アース・バインド】の効果を発生させられるか微妙なラインだ。


 そして、その嫌な予感は当たってしまう。

 2人の【アース・バインド】は、【キング・ゴーレム】に抵抗さレジられてしまう。


(たぶん、もうタイミング的にロストさんは飛んでいる。【キング・ゴーレム】は動きが遅いから【アース・バインド】がなくてもロストさんなら当てられるかもしれない。だから、【アース・バインド】自体が保険……でも!)


 フォルチュナは高速に思考を巡らす。

 そして自分にできることを考える。


「――【ノックバック・エレメンタル】!」



――――――――――――――――――――――――――レア度:★★★★★―

【ノックバック・エレメンタル】/報酬取得

 必要SP:50/発動時間:0/使用間隔:1800/効果時間:60

 消費MP:100/属性:神聖/威力:0

 説明:使用者が効果時間内に発動した精霊魔術スキルを当てられた相手は、0ダメージでもノックバックする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ロストからもらったレアスキルを発動する。

 そして自分を追ってくる【ロック・ゴーレム】に向かって手をかざす。


「――【ウインド・カッター Lv1】!」


 一陣の風を刃として放つ魔術スキルが、追ってきた【ロック・ゴーレム】を背後に向かって少しだけ吹き飛ばす。

 それは小さな刃で、本来ならば【ロック・ゴーレム】を少したりとも吹き飛ばす力はない。

 しかし、【ノックバック・エレメンタル】の効果で必ず2メートルはノックバックする。

 さらにフォルチュナは射程の許す限りと、3発の【ウインド・カッター】を連続して放つ。

 そして距離を稼ぐと、ギリギリ残っていた【ストライド・ステップ】の効果と、装備の加速効果で一気に、【キング・ゴーレム】に対する盾役となっていたダークアイの背後に位置どった。


「――【チェンジ・アーマメント】【マジカルモード】!」


 また、派手な発光現象をともない、フォルチュナの姿が元の白いローブの姿となる。

 この装備セットは、魔術スキルを使うのに適している。

 そして、さらに今度は音声と同時に思念通話でも唱える。



フォルチュナ≫ 【アース・バインド】!



 本当ならば、みたいに【アブソリュート・オラクル】を使って、100パーセントの確立で【アース・バインド】を成功させたいところである。

 しかし、保険としての技に【アブソリュート・オラクル】を使うわけにはいかない。

 【アブソリュート・オラクル】は一度使えば、8時間は再使用できないスペシャルスキルである。

 この後に控える真のボス戦に向けて残しておかなければならない。



フォルチュナ≫ 成功しました!


ロスト≫ さすがです!



 幸い、【アース・バインド】はきっちりと成功し、地面から現れたあぎとは【キング・ゴーレム】にしっかりと噛みついた。

 そしてその直後に、【キング・ゴーレム】の頭上に巨大なドリルが現れる。


 激しい衝撃と、耳を劈く破砕音がその場を支配する。

 砕かれた岩の破片が、周囲にまき散らされる。

 危うくその破片に当たりそうになるが、それはダークアイがシールドスキルで守ってくれた。


「な……なにこれ……」


 衝撃音が収まり、砂埃がある程度引くと、目の前で盾を構えていたダークアイが愕然とした声をもらした。

 そばにいた後衛のナオト・ブルーたちも、唖然としてしまっている。


 たぶん、ドミネートのメンバー以外は、状況を理解できなかっただろう。

 そこには、フィールドボスを一撃で葬ってしまった、プラチナ色に輝く大量の剣で作られたドリルが、墓標のように地面に突き刺さっていたのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る