第63話:女王

 この世界の暦で【風のしもづき】とは、日本でいう10月のことだ。

 残暑の暑さもだんだんと和らいでいき、これから冬に向かう。

 その先触れのように、秋風はからりとしはじめてほてった体を冷やしてくれる。

 木々も赤らみ、前世ならば自宅の庭には金木犀が香っていたことだろうが、残念ながらこの世界にはなかった。


 しかし金木犀がなくとも、女王シャルロットはこの季節を待っていた。

 鬱陶しい虫も少なくなるし、なにより涼しくなるのは本当にありがたい。

 公務で着用するドレスの暑さたるや、想像を絶する。

 貼りつく生地、べたつく全身、下手すれば朦朧として倒れてしまいそうになる。

 水分をとらなければ、死んでしまうのではないかと思ってしまう。


 それに比べたら、今は本当に楽であった。

 特に夕方になると、顕著にわかる。

 今も室内で公務用の重いドレスを着ていてるが、ほどよく過ごしやすい。


(もう秋ですね……)


 イストリア城の窓の向こうに見える景色は全て赤だ。

 いや、それほど単純な単色ではない。

 赤、朱、紅、赫……いくつもの思いの色のフィルタをかけたような空の下に、燃ゆる様な紅葉が風に揺れ、地面を焦がしている。

 本当なら、何も考えずにその景色をシャルロットは楽しんでいたかった。


「何度も申し上げますが反対です、女王陛下!」


 イストリア王城の会議室に、無粋な声が響く。

 なんで邪魔をするんだなどと思うが、それはお門違いだ。

 シャルロットは、ほんの一瞬だけ現実逃避していたのだ。

 ゆっくりと景色を楽しんでいる暇などない。

 それどころか時間がないのだ。


「我々があのような小国と手を組む利点がありますまい!」


 無粋な……ではなく、シャルロットを現実に引き戻してくれた声の主は、50歳程度の設定だった人物だ。

 光沢のある青地に銀の刺繍が施されたスーツ、下は前面に金刺繍の施されたシルクのベスト。

 首元にはレースで縁取られた白いリボンのような大きなタイが飾られ、その上には三つ編み一本にまとめられた金髪の長髪。

 そしてやはり金のくちひげあごひげほおひげともじゃもじゃの顔をしている。

 彼は四大公爵家の1つ【ウルージ家】の当主で、第一燮和しょうか宰老さいろう【ピスターチ・オ・ウルージ】。


「利点はあります。同盟を結ぶことで安全は確保されるではありませんか」


 シャルロットとしてはさすがにそろそろ見飽きてきた顔だが、つきあわなくてはならない。

 というより、もっとも話し合わなければならない相手だ。


 しかし、彼も平行線の会話に疲れているのか、かなりヒートアップしてしまっている。


「安全が欲しいなら、攻め入ればよいのです。1日もあれば占領できることでしょう。そもそも、我が国から領土を奪った下賤の輩! そのような者と同盟を結ぶなど、なぜそのような愚かしいことを!」


「ピスターチ様。今の発言は、女王陛下への侮辱ととれる言葉だと思うがいかがか?」


 そう言って、簡易な王座の横で拳を握ってみせる大男は、この国の英雄の1人である【リーノ・ホーン】だった。

 目と口許以外を隠す黒い仮面の上、額と頭に動物のサイのような角を生やしたホンアニ族(動物の角をもつ獣人)の男である。


「まっ、まさか、滅相もない。そのような意図などございません。言葉が過ぎましたこと、伏して謝罪いたします」


「よしよし、ならよし! 気をつけられよ」


 ピスターチは、慌てて席を立ち頭をさげる。

 きっと頭の中では「この脳筋め!」とでも思っているのかもしれないと、女王シャルロットは心の中で苦笑いする。


 リーノは八大英雄に名を連ね、そのりよりよくは随一を誇る怪力無双。

 しかも、猪突猛進型で短気なところもある。怒らせれば、後のことなど省みないで行動しかねない。

 第一燮和しょうか宰老という大きく国政に関わる役職で、公爵家でもっとも力をもつピスターチでも、なんの策もなく正面から彼に逆らうことなどできないだろう。


 だからこそシャルロットは、もう1人の英雄であるミミではなく、リーノを側に残したのだ。

 安全装置をはずした銃口をなんの躊躇もなく敵に向けて、引き金に指をかけられる男であると、誰もが知っていた。

 故に威嚇として充分に働く。

 そして彼の王家に対する忠誠は絶対だということもよくわかっていた。

 そうのだからまちがいない。


「もう一度、告げます。よく聞いてください」


 シャルロットは会議室の簡易王座に腰かけたまま、正面のテーブルに着く面々の目を1人ずつ捉えていく。

 これは会社の会議で、こちらの意図をしっかりと聞かせるためのテクニックだ。

 視線を合わせることで、無視をさせずにこちらを意識させることができる。

 こういう時は前世の経験が役に立つ。


(と言っても、私は部長どまり。社長はおろか、女王なんて経験しているわけないですけど)


 テーブルについているのは、まず第一燮和しょうか宰老さいろうから第四燮和しょうか宰老さいろうの四大公爵。

 燮和しょうか宰老とは、王の命に従い、具体的な細かい調整を管理する者たちだ。

 実質、国を動かしている者たちでもあるが、細かいルールの決定は4人で決めなくてはならず、最終的に王の承認も必要となる。

 彼らがいかに自分たちの都合よい案件をあげてこようと、王がしっかりとしていれば妨げることができるのだ。

 その他にも、国教の管理者である神祭官長、軍部の統率を行う騎士将領という、国政に対して経験豊富な者たちが目の前には並んでいる。


 父王が彼らを信用しすぎていたために生まれた穴を埋めるため、まだ16歳のシャルロットは戦わなければならない。

 そういうなのだ。


「まず、影の魔王が動いています。これはまちがいない情報です」


「お言葉ですが、それに関して先ほどからお尋ねしているとおり、情報源を教えて頂けませぬかね?」


 発言したのは、クラバットと呼ばれる扇状に広がるネクタイに、赤の軍服スーツで決めた騎士将領【シュウ・クリムゾン】だった。

 彼は短く切りそろえた、いわばスポーツ刈りのような髪を掻きながら、騎士にしてはかるい口調で先ほどと同じ問いを投げかけてきた。

 これを聞かれるのは、もう3度目だ。

 秘密だとごまかしてきたが、どうあってもごまかされるつもりはないらしい。


 彼はまだ30そこそこと幹部の中では若く、言動からは軽薄そうな人間に見えた。

 しかしそれは偽装であり、慎重で思慮深く、その上に義に厚い男である。

 だから信用できる男ではあるが、彼を信用するには、彼の信用を勝ち取らなければならない。


(でも、どうしたら……。ここまでしつこいなんて。こんな性格によかった)


 シャルロットは頭を抱える。

 信用を得るために真実をと言っても、「ロストがそう言っていた」と告げて信用が得られるとは思えない。

 それにそもそも、前世たるゲーム時代の話をしても理解してもらえないだろう。

 影の魔王の中の人が運営でしたと言って、何が伝わるというのか。


「ああ、もう細かいな、シュウよ! 影の魔王の話ならまちがいないぞ」


 手詰まりだとシャルロットが悩んでいると、思いがけない助け船がリーノからだされた。


「どういうことだい、リーノ」


「アムナグ共和国の援助に行った時に、影の魔王らしき者を見かけたし、共和国の兵士からも目撃例を聞いていたしな。あの魔王が、暗躍しているのはまちげーねーと思うぜ」


「見かけたと? 見まちがいの可能性は?」


「そいつはオレの目の前で影に潜った。そんなことできる奴が他にいるなら教えてくれ」


「なるほど。アムナグにいるとは……。親友たるお前の言葉を信じよう。しかし、本当に影の魔王がなにか企んでいるとは驚きだ」


 驚いたのは、シャルロットもだ。

 リーノからアムナグでのそんな報告は聞いていない。

 一瞬、リーノがこの場をごまかすために嘘をついたのかとも思ったが、彼にそんな腹芸ができるとは思えない。

 シュウもそれを知っているからこそ信じたのだろう。


(どちらかというと「報告し忘れていた」という方が納得がいくわね。ああ、もう! ちゃんと報告しなさいと言ったのに!)


 だが、それはここで追求しない方がいいだろう。

 シャルロットにとって、話の流れはよくなっている。


「話を戻します。神出鬼没である影の魔王は、領地こそもちませんが、各地に少数精鋭の部下が散って隠れながら勢力を保っています。実態の掴めない影の魔王が動いている今、油断はできません。近隣諸国で争っている場合ではないのです」


「それは仰るとおりですが、あの者たちはわが国の領土を奪った者たちですぞ、シャルロット女王」


 70過ぎの老体ながら、真っ直ぐと伸びた背筋からでる声は朗々としている。


の国……いや、の者が女王陛下の加護を受けたというならば、まずは領土を返還し、我が国の住人に戻り、女王陛下の元で我々の指示に従うべきではありませぬか?」


 第三燮和しょうか宰老【アモン・ド・ハタン】。

 もっとも保守的で、王国絶対主義者の宰老最古参の人物だ。

 堅物で融通が利きにくく、かなり扱いにくい。

 真っ白になった長髪と、いつも線のように細い目を弓なりにした表情が特徴的だった。


「ハタン卿、それは同盟とは言いません。つまり卿は、同盟を認めないと仰っているのですね」


「同盟とは、対等な国同士が結ぶもの。しかし、たかがいち冒険者が、わが神聖なる領土を奪って国を名のるなど、盗人猛々しいというものではありませぬかな」


「お待ちください、ハタン卿」


 口を挟んだのは、スイーティア神を奉る神祭官長【ピナ・ツー・ラッカ】。

 美しい銀髪のアンジェン族の女性だ。

 年齢不詳だが、20代半ばに見える容姿をしていた。


「女王陛下のお話では、そのロストという方はドミネーター・クレストの持ち主。領土の取得は、そのクレストの力による正当なものと聞き及んでおります。クレストは、我らが崇めるスイーティア様にとっても創造神である、クリア様が定めし力。その力を行使した者を『盗人』と呼ぶと言うことは、クリア様やスイーティア様を『盗人』と呼ぶのと変わないのではありませぬか」


「ぐぬっ……」


 まだ若いながらも、ハキハキとした物言いにアモンも言いよどんでしまう。

 保守的なアモンにとり、スィーティア神も絶対の存在だ。

 その名を出されては、さすがの老獪も口が出せない。


「創造神クリア様は世界を創り、女神スイーティア様は人の世の定めを導かれる。クレストもまた、スイーティア様の導きのひとつです。それにクレストを愚弄するということは、シャルロット女王陛下に引き継がれた、【イストリア・クレスト】も愚弄するに等しいこと」


 ドレスのような真っ白い神官服に包まれたピナの言葉に、アモンは最後に「ふんっ」と鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまう。


(ああ、きついです……。会社よりきつい……精神が病みますね、これは)


 ざわめく会議の様子を見ながら、シャルロットは心がかんなで削られていくように感じていた。

 王家のいざこざとか、貴族社会の面子の張り合いとか、小説やゲームの中で見ている分には楽しいが、当事者となったら精神的苦痛でしかない。


 彼女はもっとお気楽にかっこいい王子様と結婚して、国政などに関わらずのんびりと幸せに暮らせればよかったのだ。

 それなのに父親たる前王が死んだとき、王の手を握っていたシャルロットの右手にクレストが宿っていた。

 つまりその瞬間、この国の支配権が正式にシャルロットに渡ったということだ。

 その時のシャルロットの驚きたるや、筆舌に尽くしがたいものだった。

 なにしろ「クレストを引き継ぐことができる」という設定などなかったのだから。


(ああ、もう。本当にこんなことなら、あんな追加シナリオを提案するんではありませんでした……。私のバカ!)


 シャルロットは、WSDプロデューサー時代の自分を呪ってしまう。


 次の大型バージョンアップでは、【影の魔王ベツバ編】(仮題)を行う予定だった。

 ベツバは退屈の魔王で、ひとつに執着することもなく、気ままに生きていた。

 だが、彼はとうとうこの世界自体に飽きてしまった。

 そこでこの世界を壊して、新しい世界を創りだすということを考えだす。

 大雑把に決まっているのは、このぐらいの設定だ。

 このあらすじを元に、シナリオライターが細かいストーリーを作っている最中だった。


 もちろん、ベツバがいきなりそんな行動をとっては違和感がある。

 そこで本編が始まる前に、使えそうな伏線を張るようにしていたのだ。

 シャルフのイベントで、ベツバの影が見えるのも伏線の1つだった。


(ただ、悪魔召喚の資料をベツバが盗みだすというシナリオはなかったのですが……)


 ちなみに他にも伏線は張ってあったが、テコ入れとして追加のショートシナリオも展開する予定になっていた。

 その追加シナリオのうちひとつが、【イストリア王宮の影編】(仮題)だった。

 八大国家の中で、もっとも力があるイストリアの王座を巡る権力争い、そこに介入するベツバ。

 新キャラクターの権力者たちや、悪役令嬢的なキャラクターも登場させる、少しドロドロとした王宮物語をやろうとしていたのである。


(だって……だって、わたくし、そういう話が好きなのですもの!)


 その願望があだとなり、ストーリーの提案者であるシャルロットは今、自分の首を絞めることになっている。

 たとえば、ピスターチは【シャルロット・オ・イストリア】の弟である【ビスケット・オ・イストリア】を後押しし、権力を得ようとする「敵」である。

 さっきのお堅い重鎮のアモンも、自分の息子をシャルロットの夫にと企んでいる。

 他にも権力を狙う者たちがたくさんいる。

 それらほぼすべて、シャルロットが前世で生みだした設定が元になった者たちなのだ。


(洒落にならないですね……)


 ただし、悪いことばかりではなかった。

 自分が生みだした設定なのだから、この王宮で誰が敵で誰が味方になるのか、そして各キャラクターがどんな性格なのかも把握しているという強みはあるのだ。

 それを使えば、リスクを事前に排除することもできるかもしれない。


(でも、思い通りになかなかならない……)


 シナリオは基本でしかない。

 この世界が現実となった時、すべてがシナリオ通りにはならなくなっていた。


 それはロストがドミネーター・クレストを手にいれた経緯からも明らかだ。

 ストーリーの流れは、プレイヤーの行動でリアルに変わってしまう。

 そうなれば、こちらの企みとて上手くいかなくなる。

 今のWSDは、すべてのキャラクターが意志をもって行動しているのだ。


(その最たるが、影の魔王ベツバ。初期設定と同じように世界を壊すつもりなのか、それとも中に入っていた誰かが、別の何かを成そうとしているのか。どちらにしても対抗するには、唯一無二の力をもつドミネーター・クレストの力は必要に……)


 魔王に対抗するには、魔王か英雄の力しかない。

 しかし、魔王たちは基本的に敵対者であり、英雄たちとて1人では魔王に対抗できない。

 やはりロストという、将来的に強力な戦力となる存在は必要なのだ。


 しかし、ロストたちが【VSダンジョン・エクスプロレーション】――VSDEバーサードをクリアするまでに同盟を決めておかなければならない。

 そうしなければ、ロストたちを守る大義名分が立たないのだ。

 なのにもう何日も会議は堂々巡りをくりかえし、すでにVSDEバーサードはスタートしてしまっている。


(無論、彼らがVSDEバーサードで勝たなければ意味がないのですけどね……)


 プニャイド村のシャルムとノーダンの関係、ノーダンと影の魔王との関係、シャルロットが知っている関係する手札は、すべてロストに晒してある。

 そしてその引き換えに、レベル50でシャルムを倒した方法、一般人を冒険者に変える秘密を教えてもらった。

 まさかそんなバグ技があるとは思わなかったが、それも彼の機転と技術があればこそなしえたことだと思う。

 彼だからこそ、ドミネーター・クレストは輝いている。

 だからシャルロットは、あの不敵なハズレ好き男のアタリに賭けることにしたのだ。

 必ず勝つと言い切ったあの男に。


(こうなれば一蓮托生。絶対にアタリを引いてくださいよ、ロストさん! そのためにわたくしも!)


「みなさん、聞いてください!」


 シャルロットが王座から勢いよく立ちあがり、一歩前にでる。

 まるでそこに一陣の風が吹き抜けたかのように、輝く金髪と純白のドレスがふわりとたなびく。


「もしかしたら、皆様は今回のわたくしの提案を愚かな早計、もしくは小娘の単なる我が儘とでも思われているのかもしれません。わたくしは所詮、若輩者。わたくしの言葉に重みなどないのでしょう」


 周りから否定する声が上がるが、シャルロットはかまわず言葉を続ける。


「ですから、わたくしはわたくしの言葉の重みを示しましょう」


「重み……ですと?」


 アモンが睨むようにシャルロットを見つめてきた。

 ああ、これは社長に直に無茶なプレゼンをしたときと同じだ。

 こちらを品定めするような鋭い眼光に覚えがある。

 そう思いながら、シャルロットはその眼光を捉える。


「ええ。今、ドミネーター・クレストをもつロストは、皆さんもご存じの通りVSDEバーサードに挑戦しています。もし彼が勝利したら、その瞬間に同盟を成立とさせてください。基本的な同盟の内容は事前に示したとおりです」


「ほほう。賭けというわけですか、女王陛下。これは面白い」


 今まで静かに聞いていただけの第四燮和しょうか宰老【アース・キー・ダイズン】が開口した。

 他の公爵家はメインレイス族だが、彼は唯一のエレファ族だ。

 見た目は女性と見まちがえる中性的な容姿で、真っ白な肌に青い長髪と胸元で膨らんだ真っ赤な蝉型ネクタイアスコット・タイが異様に目を惹いた。


「それで、あなたの言葉の重みを示すのに、あなたはなにを賭けるベットするのです?」


 いたずらっぽく、それでいて挑発するような口調のアースに、シャルロットは受けて立つとばかり微笑してみせる。


「王位です」


「――なっ!?」


 その場の空気が固まった。

 誰もが息を呑んだまま呼吸を一瞬忘れる。

 だからシャルロットは、ここぞとばかりに宣言する。


「わたくし、シャルロット・オ・イストリアは、ドミネーター・クレストの所持者たるロストが、今回の【VSダンジョン・エクスプロレーション】で敗北したなら、我がクレストを弟のビスケット・オ・イストリアに譲ることをここに誓いましょう!」


「ほ、本気ですかな?」


 真っ先に食いついてきたのは、やはりピスターチだった。

 彼は少し血走ったような目で、シャルロットを睨むように見つめている。


「もちろん、二言はありません。わたくしは、ドミネーター・クレストの力を信じていますし、イストリア・クレストも我と共にあると信じています」


「つまり、クレストの導きに従うと仰るのでしょうか」


 神祭官長ピナに、シャルロットは強くうなずく。


「畏まりました。ならばわたくしも、スィーティア神様の導くクレストの光のままに」


 するとピナは席を立ち、両手を胸に当てて頭をたれた。

 それは恭順を示す、この国のポーズ。


「面白い。実に面白い。私もその賭けを見届けさせて頂きましょう」


 アースもクスクスと笑いながら、同じボーズで恭順を示す。

 それで流れは決まってしまった。

 数秒後にはその場にいた全員が、同じポーズでシャルロットに頭をたれていたのである。

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