第2話
その日シェリアは朝からぼーっと外で遊ぶ子供達を眺めていた。腹の虫がぐうぐう泣き喚こうがお構いなしだ。子供達のもとにその親らしき人たちが集まる。もう時期昼時なのだ。するとシェリアの脳裏に先日の光景が蘇るそう父を亡くしたあの時のことを。
「なんで、、私何か悪いことでもしたのかな?」
シェリアのその小さい呟きは震え目元に溜めた涙と共に弾けて消える。その後母までも亡くし、今のシェリアに肉親と呼べる者はもうこの世には居ない。そんな事実がシェリアの足を動かし気づくとまたその手には脇差しのような刃物が握られる。かれこれそれを5回程繰り返していた。ただシェリアにそれを自らに突きつける度胸は備わっていなかったのだ。
シェリアはため息をひとつつくと家の窓から外を眺める。
「もうこの家ともオサラバか、」
この国、エレプトでは成人年齢を15と決められており18になるシェリアはもう立派な大人だ。しかし収入を両親に依存していたシェリアにとって成人する事とひとりで社会に飛び出る事は同意義ではなかった。その後の人生をどうするかひとりで決めなくてはならない。その事だけで今のシェリアを悩ませる事は容易かった。
同刻、シェリアの住うインナスから30キロ程離れたエレプトの首都エトミアから8キロほど離れたところでは神の継承者(ネチャイアー)の2人が激突していた。
神の継承者(ネチャイアー)
1200年以上前に存在した神々が封印される間際に残した指輪の持ち主。総じて神に劣る異能を発揮することができる。
一方はその人差し指に2の目が描かれたサイコロの指輪。もう一方は4の目が描かれたサイコロの指輪だ。
「ふふ、流石ですねセンの継承者は。」
奥ゆかしい程の慈愛の篭った声で相手を包み込むように言い放つ女性は雨も降っていないのに傘をさしていた。
「あまり、その名は好かん。ワイはセン=ナルシャ。出来ればナルシャと呼んで欲しいものだフェドゥよ。」
伊達の男であれば虜にされてしまうようなそんな彼女の声と表情に顔色一つ変えない凛々しい男の姿がそこにはあった。
「あらあら、そーゆーナルシャ様はフェドゥと呼ぶではありませんか?わたくしにもテアラという名前がありますのよ?」
両者はその顔に笑みを浮かべはしているものの放つ殺気は何者も近づけさせない。いや、近づかないことの方が利口と言えるだろう。神に劣るとはいえどネイチャーたちの力は並みの人間が耐えられるものではない。天災とはいえなくとも十分に脅威なのだ。2人は視線を外すことなく見つめあっている。先にその視線を外すのは。フェドゥであった。
「こんなに見つめていては恋に落ちるところでしたわ。」
フェドゥの手には刀が握られていた。先ほどまでさしていた傘は刀であり、持ち手から鞘と刃で分かれるようになっている。そのひとふりは風音も聞こえな速さで正確にナルシャに振り下ろされる。ナルシャに接触しようかというところでその刀はどこからともなく炎の壁で遮られ、ナルシャの足元には深いクレーターが出来上がっていた
「赤き城門、(ほのおのじょうもん)なんびともこの門を通る事は許さぬ」
それと同時にフェドゥは後ろへ飛びあとずさる。
「かぁったぁぁい!わたくしの刀(やいば)が切り伏せることができないなんて許される事ではないわ。その身体が切断された時は貴方なんと言うのでしょうね!ゾクゾクしてきましたわ」
フェドゥは悔しいという表情を見せた途端に頬を赤らめその満たされない欲求に心を奪われていた。
「そんな時など、この先一度も来ない。」
ナルシャは顔色を変えずに短く返すと片手を天高く挙げる。
「ワイの国(テリトリー)に入ったからには命をかけろ。炎の王国!!」
その言葉と共にナルシャから半径50mに炎の壁がせりでてくる。そしてナルシャの背後には城を模された炎が立ち込める。フェドゥの顔からは焦りの色は感じない。寧ろより一層の笑顔がその炎を待ち受けていた。
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