第4話 パラダイスならぬパラサイトになりそうな二人プレイ
かぎっこさん、もとい、かぎっこちゃんと初音声チャットをして数か月。
お互い同じ時間にインしてるとわかったときは、どちらからともなくチャット要請をして遊ぶようになった。
掲示板に載るくらいなので相当上手いと思っていたが、かぎっこちゃんはかなりの猛者であった。
ホラーゲーム以外にもいろんなゲームに誘ってみたのだが、ゲームのコツを早々につかみ、
あっという間にアタシを抜かすんじゃないか、というぐらい上達してしまう。
「かつさん、すごいですね、こんなにいろんなゲームできるなんて!」
「ははは、ありがとうよ」
新しいゲームをやる度にかぎっこちゃんは尊敬の声をかけてくれる。が、かぎっこちゃんの腕前と成長力にアタシの心は折れそうです……。
そんな葛藤はさておき、こんな強い子が変なプレイヤーにつかまって遊ぶゲームを狭められていたのは不幸だったとしか言えない。かなりもったいないことになっていただろう。
だからでこそ、アタシはいろんなゲームにかぎっこちゃんを連れまわしていた。
ホラーゲームも悪くないんだけれど調べてみたら17歳以上対象ゲーだった。
ニュースみたいに影響がどうのこうの言うつもりはないけど、他に遊べるゲームがあるならそっちの方がいいだろう。かぎっこちゃんに聞いたら、あのホラーゲームは両親に内緒でプリペイドを活用して購入したって言うし。
というわけで、少しずつ他のゲームのオンライン環境へ抵抗がなくなるようにアタシは誘導している、のだが……。
「かつさん、この装備すごいですよ、レジェンドです! どうぞ!」
某アクション要素のあるFPSゲームで遊んでいると、厄介な位置にあるボックスを開けたかぎっこちゃんが嬉しそうにアタシに声をかけた。
「それはかぎっこちゃんが持っててよ」
「わたしの戦い方だとあまり使いこめないと思うので、いいですよー」
「え、え、ええ!? あ、ありがとう」
少し進み、難易度の高いボスに挑む。
かぎっこちゃんが操るキャラが超高速で飛び回り、攻撃をかわしつつ、的確にレーザー銃を乱射してボスのHPバーをガリガリ削っていく。
気づけば一人で倒すのに20分とかかかってたボスを5分程度であっさりと処していた。
シングルプレイの時よりも、マルチプレイの時の方がボスのHPも攻撃力も高いにも関わらず、である。
で、報酬のアイテムがドロップすると。
「先にかつさん拾ってくださーい」
「そこはお互い早いもの勝ちでしょ?」
「この辺のアイテムはわたしも持ってるので、本当に大丈夫なんでどうぞー」
このボスって倒すの苦労するはずなので、かぎっこちゃんが明らかに譲ってくれているとわかる。
このままではかぎっこちゃんがいつまでもアイテムをゲットしないのでありがたく頂戴する。
しかし、これって逆にアタシがかぎっこちゃんに寄生プレイしているということにならないか?
それはそれで下手な妨害プレイヤーよりも性質が悪い気がするのだが。
「このボス苦戦してたのが、あっさり倒せてうれしいです! かつさんすごいです! また遊んでくださいね!」
そう嬉しそうな声で話すかぎっこちゃん。
この声を聞くたびに胸をずきゅーん、とやられてしまって他のことがどうでもよくなってしまいそうになる。
SNSでもフレンドになっているので、タイムラインにのってる小柄でかわいい本人の写真も見ているので声の向こうの本人を想像し、さらに心が浄化されていく。
そこで、はっ、とアタシは気づいた。
(いかんいかん、萌えに負けて趣旨が変わっちゃいかん!)
そう、いろんなゲームにかぎっこちゃんを連れまわしているのは他のゲームでも遊べるようになってほしいためである。ゆくゆくは他のプレイヤーとも知り合えるようになってほしい。
今のような貢ぎプレイのままではまたカモにされてしまう、それはいただけない。
「あの、かぎっこちゃん、今度あのハンティングゲームやろうって言ってたじゃん」
「はい、この間誕生日だからって勝ってもらいましたー」
「その、遊ぶ時にアタシの知り合いも一緒に呼んでもいい?」
アタシは以前から考えていた計画を実行することにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます