第16話 タイムカプセル

 2020年8月7日

 利根敦は今年、定年で教師をやめる。20年前、当時中学3年生だった長良樹に脅された。卒業間際、校舎裏にタイムカプセルを埋めた。ガチャポンの中にそれぞれの夢を描いた。『君たちが20年後夢を描いたら100万をあげる』と、冗談で言った。

 先日、久々に長良から自宅に電話があった。「トネセン、俺だよ、イツキ。卒業のときに約束したよな?」

「約束?」

「ほら、アレだよ」

「あー、タイムカプセルか?アツシは社長になるんだったか?」

「うん、俺さー会社起こしたんだ」

 聞くところによると派遣社員だった長良は今回の革命で社長になったらしい。

 MUGENという名のロボットコントローラーのファブレスメーカーだ。独自開発のアルゴリズムを現場用にパッケージ化したMUGENコントローラーを使えば誰でもロボットを操れるようになる。現在、注力してるのは自動車などの工場や物流センターのピッキング作業向け。

 ティーチングドレスという言葉を経済ニュースで聞いたことがある。

 長良は卒業式のあと、利根にこう言った。

『願いを叶えたら100万よこせよ?』

 まさか、長良はあのときのことを本気にしたのか?

「あれは冗談だ」

「人を教える人間が冗談なんか言っちゃいけないな」

「からかうのもいい加減にしろ」

「そーいやトネセン、今年で定年だよな?みんなでお祝いしてやるよ」

「それは嬉しいな?」

 木曽海絵、庄内英介、四万十修たち教え子たちがつくばセンター駅前に集まった。ライトアップされたロケットのモニュメントが見える。幼かった海絵たちもすっかり大人になった。

 海絵はお腹が膨らんでいた。

「もしかして?」と、利根は海絵を見た。

「しっかりしてよね?パパ」

 海絵は庄内の肩をポンポン叩いた。

 今は木曽海絵ではなく、庄内海絵なのか?

『梅見屋🏮』って居酒屋で飲んだ。

 庄内夫婦はパパは運転&妊娠のため飲まず、四万十、長良、利根の3人は飲んだ。

 🍸四万十、長良。🍺利根。

「そんな甘いのよく飲めるな?」

 利根は甘いのが苦手だ。カクテルを一度飲んだが香料がキツくて吐きそうになった。

「ビールなんて何がうまいんだか?」と、長良。

「長良、あの話なんだけど?」

「嘘に決まってんじゃん」

 ホッとした。セカンドライフが崩壊するかと思ってビクビクした。

「もうそろそろ、タイムマシンが出来るよ?そんときは楽しみにしててな?」

 社会科の利根は戦国時代が好きだった。特に丹羽長秀の大ファンだった。

 

 天文4年(1535年)9月20日、丹羽長政の次男として尾張国春日井郡児玉(現在の名古屋市西区)に生まれる。丹羽氏は元々斯波氏の家臣であったが、長秀は天文19年(1550年)から織田信長に仕えた。天文22年(1553年)、梅津表の合戦にて19歳で初陣。弘治2年(1556年)の稲生の戦いでは信長方に付き、永禄3年(1560年)の桶狭間の戦いにも今川義元の攻撃部隊には入っていないものの従軍はしている。


『信長公記』などから斎藤龍興との美濃国における戦いで台頭したと考えられ、永禄11年(1568年)に足利義昭を奉じて信長が上洛した際、南近江の六角氏征伐で箕作城を攻めるなど武功を挙げた(観音寺城の戦い)。


 姉川の戦いの直後から信長は8ヶ月におよぶ近江佐和山城の包囲を続けていたが、元亀2年(1571年)2月24日に城将の磯野員昌が開城勧告を受けて退城すると、代わって長秀が佐和山城主となった。


 越前国や若狭国で勢力を振るっていた朝倉義景討伐に加わり、信長の命令で義景の母(高徳院)や妻(小少将)、子の朝倉愛王丸を処刑した。天正元年(1573年)9月、長秀は若狭一国を与えられ、織田家臣で最初の国持大名となった。


 若狭国内での当初の大まかな知行宛行は遠敷郡が長秀、三方郡が粟屋氏、大飯郡が逸見氏であり各領主は所領内に独立した支配権を持っていた。この頃の長秀の家臣として溝口秀勝・長束正家・建部寿徳・山田吉蔵・沼田吉延などがおり、与力としては信長直臣となった若狭衆(武田元明・粟屋勝久・逸見昌経・山県秀政・内藤・熊谷等の若狭武田氏及び旧臣)が他国への出兵時に長秀の指揮下として軍事編制に加えられた。更に軍事の他に若狭の治安維持や流通統制などの一国単位の取りまとめについても長秀が担っていた。


 なお、大飯郡は逸見昌経の死によって、溝口秀勝が長秀家臣から信長直臣に取り立てられ、独立した知行を受けた。本能寺の変に際して若狭では武田元明が明智方について没落したのに対し、粟屋・熊谷・山県・寺西の与力各氏は長秀の支配下に入り、家臣となった。


 その後も長秀は高屋城の戦い、長篠の戦いや越前一向一揆征伐など、各地を転戦して功を挙げる。さらに長秀は軍事だけではなく、政治面においても優れた手腕を発揮し、安土城普請の総奉行を務めるなど多大な功を挙げている。


 天正7年(1579年)には但馬の羽柴秀長(秀吉の弟)とともに、丹波に攻め込み氷上城の波多野宗長に勝利している。


 天正9年(1581年)には、越中木舟城主の石黒成綱を信長の命令で近江で誅殺した。越中願海寺城主・寺崎盛永父子も、信長の命令で、長秀が城主をつとめる近江佐和山城で幽閉の後、切腹となった。同年の京都御馬揃えにおいても、一番に入場するという厚遇を与えられている。また天正伊賀の乱にも従軍しており、比自山城の戦いなどで戦っている。


 家老の席順としては、筆頭格の佐久間信盛失脚後この位置に繰り上がった柴田勝家に続く二番家老の席次が与えられ、両名は織田家の双璧といわれた。


「しかし、俺も60になるのか?ガキの頃は病弱だったから、長くは生きられないんじゃ?と思ってた」

 二次会はカラオケ🎤、利根が若い頃に流行った『金八先生』の主題歌『贈る言葉』をみんなで歌った。四万十は歌が下手だった。

「耳が腐りそうだ」

 長良は辛辣なセリフを吐いた。

 長良は列車で来たのでつくばセンター駅に歩いて向かった。

 他は全員、庄内のオデッセイに乗り込んだ。利根はベロンベロンに酔っ払っていた。街路樹が風に揺れている。オデッセイが走り出す。

 利根は後部席に座っていた。その横には四万十がいる。

「四万十、そろそろだ」

 庄内が言った。車内はサザンオールスターズの『希望の轍』が流れていた。利根は若い頃に『稲村ジェーン』を見た。

 ゴツゴツしたものが利根の脇腹に当たった。それは銃だった。オートマチック製拳銃だ。四万十は悪人を11人も始末している。5POINT✕11人=55POINT。

 宇都宮に住んでる越前屋って塾講師の正体は麻薬の売人だ。彼が一番最初の犠牲者だった。彼のアパートで背後から出刃包丁で突き刺した。はじめて味わう臓物を刺す感触に四万十は吐き気を覚えた。越前屋を殺して麻酔銃を手に入れた。

 2人目は堀田っていう教材のセールスマンだ。人身売買に手を染めている。四万十はセールスマンのバイトをして堀田に近づいた。小金井駅の公衆トイレで麻酔銃で眠らせて喉笛を掻き切った。堀田は玉ねぎみたいな体臭のする男だった。

 10POINT 電車・バス半額

 四万十は宇都宮駅を経由して岡本駅にやって来た。派遣社員はボーナスとかないから、半額になるのはありがたかった。歩いてしばらくしたところにバス工場がある。ここでは観光バスのほか、護送車も造ってる。

「エース」

 ゴリラみたいな男が汗だくになって働いていた。庄内英介はエースってニックネームで呼ばれていた。

 庄内は工場長にマシンガンを向けた。

「たっ、助けてくれ!」

 白い髭を生やした工場長は両手を挙げた。

「護送車使っていいか?散々こき使いやがって!」

「あぁ、好きなだけ使え」

 庄内が護送車を選んだのは外からバレない為だ。

「さてはおまえ、相当殺ってんな?」

「無駄話はいいから運転しろ」

 護送車の中は実に息苦しい感じがした。

 3人目は誰を殺そうか思案していると眠りに堕ちた。


 KANON宇都宮工場にてストームスタッフホールディングス傘下の労働者派遣・業務請負会社マイラインは偽装請負を行なっている。雇用主はマイラインであるにも関わらず労働者はKANONの正社員より教育を受けていた。


 当初は請負契約であったものが、2005年5月に労働者派遣契約に変更し、2006年5月に請負契約に変更するといった、雇用形態の変更が複数回行なわれた。


 2006年秋には本偽装請負に対して労働局が指導を行なった。


 2007年2月にはKANONユニオン宇都宮支部長が衆議院予算委員会の公聴会に招かれ、本偽装請負について意見を述べている。

 2007年8月29日、毎日新聞の報道によると、KANONはマイラインの従業員82名を直接雇用すると発表した 。ただし、正社員としてではなく、最長2年11ヶ月の「契約社員」としての直接雇用であるという。また同記事の最後に「請負労働者の直接雇用は初めてという」というくだりがある事から、上項の「派遣・請負の正社員化」については一向に進んでいないことも明らかになった。 2011年1月時点で、「派遣・請負の正社員化」とは、「派遣・請負労働者の雇い止めと、子会社の大卒正社員の工場への無期限出向と工場労働者への職種転換」であることも明らかになった。


 新首相は派遣社員たちに企業犯罪を犯した者も殺していいとアプリで提言した。

 KANONの戸川武蔵社長は水面下でそんなことが起きているとも知らず喜連川にある自宅で『G線上のアリア』に酔いしれながら、ハンモックに揺れていた。

 チャイムが鳴った。アイホンには妻が映っていた。出会った頃は広瀬すずに似てたが、今は皺だらけでブクブク太った。

《ただいまー》

 買い物から帰ってきたらしたい。買い物袋をぶら下げている。戸川が玄関ドアの鍵を開けると、マシンガンを手にしたフルフェイスの男が立っていた。戸川は思わず腰を抜かした。銃弾を浴びて戸川は血まみれになった。

 ガソリン代が半額になった。スタンドに寄り、給油中に四万十はトイレに入った。膀胱がパンパンだ。スッキリしてトイレから戻ると給油が終わっていた。


 4人目は若葉翔というヤミ金業者だ。

 ヤミ金の金利はトイチ(10日で1割)、トサン(10日で3割)、セツニ(週2割)、アケイチ(1日1割)などがある。最近は貸し倒すナメた客が増えた。グレーゾーン金利の撤廃が決まった頃はほくそ笑んだものだが……。

「いわゆる融資詐欺って奴だな?」

 赤信号になったので、四万十はブレーキを踏んで言った。 

 融資詐欺とは、代表的な詐欺のひとつで、振り込め詐欺の一形態である。

 融資をするように装って、「信用度を確認する」「保証金」「保険料」「保証料」「紹介料」などの様々な名目で支払いを要求し、口座に金銭を振り込ませて騙し取った上で「やはり信用に欠けるため、融資はできない」などと一方的に告げ、その後連絡が取れなくなる。商工団体等を名乗り中小企業支援のための低金利融資を装って企業を相手にする場合と、消費者金融等を名乗り個人を相手にする場合があり、2005年に入って後者の詐欺が急増していることから、東京都は同年11月1日に個人向けの融資詐欺を「貸します詐欺」と命名した。

「うん、若葉のせいで自殺した人間もいるくらいだ」と、庄内。

 

 若葉は愛知県の豊橋市に住んでいた。路面電車がガタンゴトン走ってる。梅雨空、今にも雨が降りそうだ。

 護送車が路面電車の横を走る。

 この路面電車は大正14年に開業し、戦前戦後も走り続けた。6月〜8月は『納涼ビール電車』も運航する。

 

 若葉は四万十たちがやって来て慌てふためいていた。オンボロなアパートだ。四万十は『麻痺』の魔術を使うことが出来た。蝋人形みたく若葉は動かなくなった。

 庄内は右手に持っていたナイフを、若葉の臍の右下に当てた。力を加え、一気に切り裂いた。肝臓を突き刺した。

 若葉はヨダレ混じりに呻いた。庄内がナイフを外に引き出すと。血がドクドク溢れた。

「あの世で後悔することだな?」と、庄内は言った。

 四万十は出刃包丁で頸動脈を切りつけ若葉を冥界に送った。

 20POINTになり、四万十は新幹線が半額で乗れるようになった。

 

 5人目 

 大阪

 かつて裏社会にその名を轟かせた凄腕の殺し屋、馬場右京は、5年前に最愛の女性、詩子と出会い足を洗う。平穏な結婚生活を送る右京であったが詩子が病で亡くなり、生きる希望を失う。だが、詩子は残される夫を心配して子猫を手配しており、その存在が右京の新たな希望となりつつあった。その矢先、右京の愛車ハーレーダビッドを狙った若者の強盗に家を襲われ、バイクを奪われただけではなく子猫のソングも殺されてしまう。大事なものを再度失った右京は、復讐のため、裏社会へ戻ることを決意する。


 強盗の正体は、キタを拠点に大勢力を築くマフィア『馬頭組』のボス・馬頭光一の娘である千夏のグループであった。実は右京は過去に馬頭に雇われていた殺し屋であり、馬頭の現在の勢力も右京の働きによるものだった。右京の実力を熟知する馬頭は、すぐに彼との交渉と説得を試みるが失敗し、仕方なく手下達に大阪城近くの右京の家を襲撃させる。だが、馬頭の予想通り、右京は全員を返り討ちにしてしまう。右京は最近、イスラエル製のサブマシンガン、ウージーを手に入れた。コンパクトの武器で車の計器盤の上に置くことが出来る。ハンドガンやドスで襲いかかってきた馬頭の手下は秒殺された。

 そこで馬頭は、懸賞金200万で右京の暗殺を殺し屋達に公示し、右京の親友であり、馬頭と旧知の仲でもある四万十にも声をかける。


 情報収集のため、右京は、殺し屋達が利用してる、梅田にある『ホテルクライム』を訪れる。ホテル最上階にはサウナ設置の大浴場があり、露天風呂もある。ホテルのオーナーであり、裏社会の情報に精通する宇喜多鶴太郎から、千夏の居場所を聞き出した右京は、彼女のいるミナミのナイトクラブを単身で襲撃する。右京は、クラブの護衛達を次々に殺害していくが、標的の千夏には間一髪で逃げられ、脇腹に重傷を負う。

 ホテルに戻ってきた右京は、旧知の女暗殺者でもある滝田梅子に命を狙われる。エレベーターの中でナイフで切りつけられた。右京は梅子を返り討ちにして、エレベーターから降りた。

 瀕死の梅子から馬頭光一の隠し資産の場所を聞き出した右京は、隣室にいた顔馴染みの多賀康介に梅子の身柄を預け、現場に向かう(だが、多賀は間もなく駆けつけた四万十に麻酔銃を撃たれ、梅子のナイフで全身を刺されて死亡する)。

「よし、船が半額になる」

 次の標的を殺すと飛行機が半額になる。


 隠し資産のある天神橋筋のたこ焼き屋を襲撃した右京は、財産に火をかけて馬頭光一を誘き出す。やってきた馬頭光一ら一味を襲撃するも、返り討ちに合い捕まってしまう。再度、馬頭光一は諦めるように右京を説得するが、右京は拒否し、馬頭光一は殺すよう部下に命じる。

 だが、仲間の牙城健一の狙撃によって右京は拘束を抜け、現場を離れる馬頭光一を追い詰める。諦めた馬頭光一は、娘の居場所を教え、右京の暗殺命令の撤回を約束して、解放される。間もなく、右京は、千夏のいる新世界隠れ家を襲撃し、難なく彼女を仕留める。

 闇に聳える通天閣のてっぺんの丸いネオンがブルーに光ってる。白は晴れ、オレンジがくもり、ブルーなら雨だ。

 娘を殺害され憤る馬頭光一は、四万十の情報により、右京と牙城が密会していたことを知って、牙城の自宅で彼を待ち構える。馬頭光一自ら右京をダーツの矢で拷問し、サイレンサーを装着した銃で殺害すると、このことをあえて右京に伝えて牙城邸へ誘き出し、自身は大阪港へ向かう。一方、牙城邸へやってきた右京は四万十のウージーで粛清される。

 飛行機が半額で利用できるようになった。


 四万十と庄内は馬頭を追って関西空港にやって来た。ANAで1時間かけて羽田空港へ。通常なら2万7千かかるが、半分で済んだ。派遣になってよかった。四万十はつくばにあるチェーン会社に勤務してる。正社員からこき使われ、海外旅行とか正社員にはあるが四万十たちはなかった。

 馬頭は東京ミズマチにやって来た。浅草と東京スカイツリータウンをつなぐ新名所だ。今年の春に出来たばかりだ。

 

 馬頭は若い頃、デザインの勉強をするために渡米していたが道を踏み外して暴力事件を繰り返し、金品を巻き上げるなどしていた。それが原因でやがて警察に逮捕される。馬頭が道を踏み外した理由としては、かつて自分が信じていた人に裏切られたためで、人間不信に陥り、金銭だけを信じるようになっていったといわれる。


 保釈された馬頭は日本に帰国し、兄と共に梅田のSMクラブで働き始める。しかしクラブの売り上げが伸び悩んだため、経営者先生智也Aがクラブの売り上げ次第で売り上げの5パーセントを報奨として出すことを約束する。先生でセンジョウと読む。先生は静岡市出身だ。

 先生はS大学を卒業後、大手不動産企業に就職も1年で退社、自ら不動産事業を立ち上げるも失敗。その後風俗コンサルタントと知り合い、セミナーに参加し風俗経営のノウハウを学び、2010年頃から経営を自ら始めるようになった。先生は計6店舗の経営を行っていた。

 先生にとっても、経営のセンスという観点から馬頭は一目置く存在であった。もともと金銭に対する執着心が強かった馬頭は張り切り、1か月で月の売り上げを1000万円以上にまで伸ばしたといわれる。しかし先生は約束の報奨金を守らず、馬頭に対して「文句があるなら辞めろ」と迫っていた。このことが原因で馬頭は先生に不信感を抱くようになった。


 さらに先生が新しい店長として関口悦司を連れて来ると、馬頭の不信感はさらに募った。関口は店長としての経営力がなく、実際の経営は馬頭が相変わらず担当していた。だが、関口は経営の方針をめぐって馬頭と対立し(馬頭はあくまで経営はギリギリのルールに沿って行なっていたが、関口は警察に摘発されかねないことをしようとした)、ついには先生と相談して馬頭兄弟を解雇に追い込もうとした。これが馬頭に事前に知られることになり、陸田は解雇される前に兄、さらに先生・関口に不満を持つ同僚を引き込んで、殺害計画を実行する。


 まず関口が馬頭兄弟によって殺害される。関口は東京に逃げていたが、馬頭光一は私立探偵を雇い、神田川沿いの柳橋近くの船宿に匿われてることが明らかになった。橋の近くには屋形船が浮かんでいる。

 関口が眠っているところを兄弟で共謀し、事前に準備していたバタフライナイフや斧で殺害した。ところが弟の光二が関口を殺したショックから体調を崩したため、6月22日に従業員の面接を口実にして浅草にある新事務所に先生を呼び寄せ、馬頭光一は部下と共謀して先生を殺害した。部下たちは壁みたく先生を取り囲み逃げられなくし、馬頭光一がロープで首を絞めた。死んだあとは首吊り自殺に見せかけた。

 そして関口、先生の遺体をに命令してコンクリート詰めにした上で木箱に入れて、神田川に遺棄した。

 6月25日の夜、馬頭光一は蔵前にあるラーメン屋にやって来た。コラーゲンを多く含む豚の拳骨を野菜や鶏ガラとともに煮込んだスープは絶妙だった。

 ラーメン屋を出て裏路地を歩いてると、フルフェイスをかぶった長身の男が背後から近づいてきた。逃げようとすると、もう1人のフルフェイスが前に立ちはだかった。

 前門の虎、後門の狼ってことわざがあるが、まさにそんな感じだ。

 虎は麻酔銃を撃ち、ヨロっとしたところを狼がナイフで全身を突き刺して始末した。

 虎は庄内、狼が四万十だった。6人目の特典はレストランが割引になる。

 上の仲町通りのビル2階にある隠れ家的なバーに2人はやって来た。フランス・ブルターニュ地方の郷土料理『ガレット』とリンゴの発泡酒『シードル』は格別だった。牛スジの赤ワイン煮も通常は1000円するが500円で済んだ。

 

 7人目の標的は葛城玲奈って偽ブランド屋だ。コピー商品の販売は裏社会において重要なシノギの1つだ。玲奈は『スーパーコピー(S級)』と呼ばれるプロでも見分けがつかない偽ブランドを扱ってる。C級は露天商で扱う粗悪品。B級は細部の作り込みに欠ける。A級は本物に似た材料を使ってる。S級は材料は本物が、本物と同じ工程で縫い合わされる。一大生産地は韓国にある。GUCCIからVUITTONまである。精巧な偽保証書、ブランドロゴや金具など細部まで精巧な作り込みがされてる。

 虎と狼は玲奈を尾行していた。

 玲奈は、古書『鮫の歯』という骨董古民具の店を改装した店でサブカル本を立ち読みしてる。店から出て、玲奈は裏路地に入る。さっきと同じ要領で始末した。

 ホテル🈹が使えるようになった。ミズマチにあるホテルに泊まることにした。


 8人目の標的は中根敦弘って換金屋だ。

 千葉県館山市に住んでいる。

「せっかくだからフェリーを使おう」

 ホテルのロビーでるるぶを見ながら四万十が言った。

 東京湾フェリーは東京湾の入口にあたる浦賀水道を横断し、三浦半島と房総半島を約40分で結んでいる。なお、この航路は国道16号並びに太平洋岸自転車道における実質的な海上区間を成している。


 2008年6月より、乗船券の支払いにクレジットカードのほかにPASMOを利用できるようになった。鉄道のIC乗車カードで乗船券を購入できるようになったのは、日本で初めてのことである。

 久里浜港から浜金谷港までは約40分だ。

 

「久里浜って逆から読むと魔法みたいだな?」

 フェリーの中で庄内はしょうもないことを言ってた。四万十は吐き気と闘っていた。

 整理屋とは、債務者に債務整理を請け負うと持ちかけ、手数料を騙しとり、債務整理をしないか、きちんと債務整理をせず、ずさんに処理をするというものだ。

  手口として弁護士や司法書士より料金が安いと持ちかけ手数料を騙し取ったり、弁護士と手を組んでお金を騙し取るという手口がある。

 館山市街はフェニックスが海岸通りに植わっていた。館山は、江戸時代に滝沢馬琴の書いた『南総里見八犬伝』の舞台として名高い。館山城が聳え立っている。

 1580年(天正8年)、里見義頼によって館山城が築城された。天正19年6月から11月までの間にかけて、里見義康が岡本城から館山城へ移転をしてくる。その後、1614年(慶長19年)に里見氏は改易され、館山藩は取り潰しとなった。この際に館山城も廃城となり、破却された。後の1781年(天明元年)に、稲葉正明が館山藩主となって館山に入ったが城を再建することはなく、2代正武が城の麓に館山陣屋を構えて、そこを新たな政庁とした。


 現在建つ天守は、後に丸岡城を模して1982年(昭和57年)に再建された模擬天守であり、当時の天守の概要や外観については不明である。この天守は現在、館山市立博物館分館(八犬伝博物館)として利用され、周辺は城山公園となっている。

 中根は城のすぐ近くにあるアパートに住んでいた。まだ40代のはずだが、やけにシワっぽい。四万十と庄内は宅配業者を装い部屋の中に忍び込んだ。庄内が玄関先で麻酔銃で中根を眠らせて、2人がかりで寝室に運び四万十は出刃包丁で中根の腹を何度も突き刺して始末した。

 中根を殺した報酬として病院が割引になる。

 

 9人目は六条ウタって女性だ。

 2011年7月5日に宝田英子と親族が連絡が取れなくなったため、安房鴨川署員らと一緒に10階建てマンションの3階の一室にある1人暮らしの資産家女性宅を訪れたところ、血を流して倒れている宝田英子の姿が発見されて事件が発覚した。死後数日が経過していて首や胸など数10カ所を刃物で刺されていた。2011年7月1日から2日にかけて殺害されたと見られ、安房鴨川署は殺人事件として捜査を開始。部屋が荒らされた形跡がないことから顔見知りとトラブルになった可能性が高いとして交友関係を中心に捜査して、資産家女性と不動産の取引があり、1500万円の借金を背負って資金繰りに苦しんでいた会社社長の女性(当時62歳)、六条ウタが9月17日に殺人容疑で逮捕された。携帯電話の通話記録や返済期限の延期を求めるメモなども証拠とされた。しかし、六条ウタは一貫して殺害を否認し、黙秘権を行使して10月7日に起訴できるだけの証拠がそろっていないとして、処分保留で釈放された。殺人容疑で逮捕された六条ウタが責任能力とは無関係に釈放されるのは極めて異例とされ、大きく報道された。


 館山駅は発車メロディとして、X JAPANの『Forever Love』が使用されている。ToshiとYOSHIKIが館山市出身だ。四万十&庄内は内房線に乗り込み、安房鴨川駅を目指した。

 線路は繋がっているが、内房線と外房線それぞれの終着駅である。そのため、当駅から発車する列車は上りしか存在しない。1997年(平成9年)頃までは両路線を相互に直通(当駅を経由)する普通列車が設定されており、急行列車は1975年(昭和50年)3月まで両路線を循環運転していた。両路線の相互直通を頻繁に行うと、車両の向きが容易に反転する不都合が起きるため、現在、定期列車は内房線・外房線ともにすべて当駅で折り返しを行っている。なお、内房線にあたる区間が北条線として先に当駅まで開業し、外房線にあたる区間は後から当駅に乗り入れたため、太平洋側にある九重駅(太平洋と東京湾の中間にあたる)~当駅も内房線に属し、所属線も内房線となっている。


 内房線は普通列車のみだが、外房線は普通列車のほか特急「わかしお」も当駅まで来ている。また「わかしお号」は鴨川シーワールドの無料送迎バスと接続をするダイヤが設定されている。「わかしお」の一部は当駅から勝浦駅までの区間を普通列車として運転する。なお普通列車は一部を除き内房線、外房線相互の上り列車を対面接続する。


 また、2007年(平成19年)に開催された「ちばデスティネーションキャンペーン」では、多数の臨時列車が当駅に発着した。鴨川シーワールドの最寄り駅であることから、2013年(平成25年)1月12日より、地域とJR東日本、鴨川シーワールドが連携して鴨川の観光をアピールするため、熱帯の海の魚を展示する水槽を駅改札の隣に設置している。水槽は高さ2.1メートル、直径1.3メートルの円柱型。海洋の熱帯魚21種130匹が泳いでいる。

「そーいや今日から7月だな?」

 水槽の中を覗いていた庄内がつぶやいた。

「どーりで暑いと思った」

 四万十は自販機で買ったコカ・コーラのペットボトルをラッパ飲みした。昨日中根を殺したばかりだ。2日連続で殺したら特典とかつかないのかな?

 駅のベンチで駅弁を食べた。朝はコロネパンだけだったから四万十は死にそうだった。四万十はあわびちらし、庄内はうにとさざえめしだ。

「あわびって女のアレに形が似てるな?」

 庄内がはしたないことを言ってる。

 駅東口は昔からの市街地を形成しており、中小商店街が連なる。東口からまっすぐ道を進むと前原海岸に突き当たる。駅西口は鴨川バイパスが開通してから開発された地区であり、イオン(フローレ鴨川)が立地する。

 六条ウタは東口商店街に住んでいた。

 ボケていて四万十のことを息子だと勘違いしてる。

「マサト、小遣いやろうか?」

 5万円をくれた。庄内が麻酔銃で眠らせて、四万十が出刃包丁で腹を突き刺して殺した。六条ウタを殺したことで電車・バスが無料になった。

 次の標的を殺すと武器を入手し、次の次を殺すとガソリン代及びタクシーが無料になる。

「せっかくだから房総半島めぐろうぜ?」

 庄内はテンションがやけに高かった。

「どうせなら女とがいいな?」と、四万十。

 

 7月4日午前5時頃、東京都大田区で弁護士の小杉音吉(82歳)の家が全焼し、就寝していた音吉と妻、カメ(81歳)が全身やけどで重傷を負う事件が発生。同時午前4時ごろには、神奈川県横浜市内のアポロン社員寮で車両が放火され、夕凪市の陸上自衛隊夕凪駐屯地でもアーチェリー練習所が放火される事件が同時多発的に発生した。


 警察は同時爆弾テロであると判断した。その後の捜査で、焼け跡から時限式発火装置の燃えカスが発見された。発火装置は家屋の最も燃えやすい場所に仕掛けられ、更にタオルやぼろ布を敷くなどの手口で燃焼効果を高めていたという。

 7月10日、小杉音吉は多臓器不全により入院先の病院で死亡した。

 小杉は整理屋の中根と組んでハイエナみたいに金を儲けた。

「爆弾の作り方なんてどこで覚えたんだ?」

 神奈川の田舎町、夕凪市にある民宿で飲んでると庄内が言った。四万十はレモンサワー、庄内はグレープフルーツサワーだ。

「俺は頭がいいんだよ」

「自分で言うなよ?」

 小杉を殺したことで四万十はK5ってオートマチック銃を手に入れた。1990年代より大韓民国国軍に導入された他、DP51の名称で輸出された。


 トリプルアクションもしくはファストアクション、トライアクション、3H等と呼称されるダブルアクションを改良した機構を有していることが特徴となっている。これはFNハースタルの特許を実用化したもので、トリガーを引くことでハンマーが動作し、発砲に至るまでは一般的なダブルアクションと同様であるが、いったんコックされたハンマーを手で押し戻すことができる。ハンマーが手動で前進位置に戻されても、ハンマースプリングはコック状態を維持している。この状態でトリガーを引けば、ダブルアクション時の12ポンドに対して半分以下の5ポンドの張力でハンマーが再び起倒するので、軽いトリガー操作で発砲が可能となるものである。より安全性の高い一般的なダブルアクション、正確な射撃を行うためのシングルアクションでの使用も可能となっている。


 フレームはアルミニウム合金、銃身、スライドなどは鋼鉄製である。照準器は3点式のアイアンサイトを備える。安全装置はレバー式でグリップの両側面上方、フレームの後端部に位置する。


 標準の弾倉を使用した場合の装弾数は13発であるが、装弾数15発のスミス&ウェッソン5906の弾倉を流用可能である。装弾はショートリコイルによって行われる。弾丸は初回は無料だ。

 

 11人目の標的は千葉菊雄って臓器ビジネスマンだ。

 2006年2月、「知人に頼まれて腎臓を提供した。なのに貸していた金すら返してくれない」との電話が女性から神奈川県警にあり事件が発覚した。その後、警察は捜査により移植を受けた患者男性と仲介役をした内縁の妻を逮捕した。ドナーとなった女性も書類送検された。


 逮捕された患者、千葉菊雄は慢性腎不全を患い人工透析を続けながら、夕凪病院に2004年の開院時から通院し、泌尿器科部長であった、鬼神邦男医師の診察を受けていた。2005年6月頃、症状が悪化したため鬼神より「早く移植をしないと助からない」と言われたことにより移植手術を決意する。当初は内縁の妻が腎臓を提供する予定であったが、医学的理由により却下され、親族からは臓器提供を断られた。そこで同年夏、千葉は当時200万円の借金をしていた女性に「腎臓を提供してくれたら300万を上乗せして返す」と依頼。8月、女性は千葉の妻の妹と偽り病院にて検査を受け、腎臓の提供をすることとなった。


 9月末、女性をドナーとして腎臓移植が行われた。千葉と内縁の妻はドナーに対し、11月に現金30万円、翌2006年4月に新車(150万円相当)を渡したが、女性は事前の約束と違うと不満を持ち警察に相談した。この時点でこの女性は臓器売買が犯罪であることを知らなかった(移植を受けた千葉と妻は犯罪であることを認識しており、女性に口止めするなどの工作をしていた)。これが発端となり同年11月、同院では癌などの病気に冒されたために摘出された腎臓などの臓器を、その臓器を必要としている患者に移植していたことが11件あったことが発覚。また臓器移植に際して口頭約束だけで書面での約束を交わさなかったことや、杜撰な手術や管理などが露見することになり、神奈川県による調査が行われた。


 臓器移植法違反(売買の禁止)により移植を受けた千葉及び内縁の妻が起訴され、ドナーとなった女性が略式起訴された。裁判では千葉が「臓器提供の謝礼は車だけの約束」「現金は女性の傷跡が大きく申し訳なく思い支払った」と供述するなど、ドナー女性の主張との間に一部食い違いが見られた。また千葉、その妻の両被告人とも「ドナーは他人で、対価を支払うことも医師に話していた」「鬼神医師から相場は1本(100万)くらいと聞いた」と供述、ドナー女性も「車がもらえなかったので鬼神先生に相談したところ、先生が直接電話してくれた」と証言。これについて千葉も鬼神を名乗る男性から電話があったことを認めるなど、鬼神が事前に臓器売買と知っていて協力したのではないかとの疑惑があったが、鬼神自身はこれらについて全面的に否定し、立証も困難であったことから責任は問われなかった。


 2006年12月、神奈川地裁夕凪支部は、「臓器移植法の人道性、任意性、公平性という基本理念に著しく反するもので、移植医療に対する社会の信用性を揺るがした影響は大きい」として、両被告人ともに懲役1年、執行猶予3年(求刑・懲役1年)と判決した。ドナー女性は、罰金100万円、追徴金30万円、乗用車没収の略式命令を受けた。


「千葉はまさか自分が殺されるなんて思ってないだろうな?」

 四万十がレンタカーの助手席でうつらうつらしていると庄内が話しかけてきた。  

「あっ、ああ」

 四万十は最近不眠症に苛まれていた。夢の中で死んだ者たちに復讐される夢をよく見る。昨夜は黒焦げになった小杉に廃墟に追い詰められハンマーで殴り殺された。


 夕凪駅の裏通りのヘルスから出てきた

千葉に、四万十がそっと近づいてきた。四万十は千葉に煙草を勧める。

 気持ちよく紫煙を燻らせている千葉を背後から抱くようにしてK5のトリガーを絞った。こめかみから血が噴き出し千葉は死んだ。🔫残り12発


 仕事を終えた四万十はタクシーを呼んだ。タクシーなんて派遣の給料じゃ高くて乗れない。首相には感謝しないとな?宿に戻ると長良から電話があった。四万十はスマホを耳に当てた。

《久しぶりだな?トネセンの為にお祝いしてやるべ》

 

 四万十は長い回想から我に返った。

 利根の死体をつくば山の山奥に遺棄した。

 まさか教え子に撃ち殺されるなんて思ってもいなかっただろう。🔫残り11発

 利根はとんでもない教師だった。成績の悪かった四万十は激辛カレーを食わされた。海絵なんかは放課後の体育館で陵辱されたりした。利根を殺したことにより新幹線が無料になった。

 四万十たちは夕凪にあるアジトに戻って来た。午前2時近かった。四万十は悪夢を見た。ゾンビ化した利根にホテルで追いかけられた。銃を10発撃って漸く倒した。

 病院🈹をまだ使っていなかったのでメンタルクリニックに行って精神安定剤をもらった。

 次の標的はイニシャルにOがつく人物だ。

 


 

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