8、最近、どれもこれも種類が細分化しすぎてる気がするわ。その4
一度意識してしまうと再び意識しないようにするのは難しいものでエニグマの体験学習の思い出は“おっぱい”この一言に限る。
途中、エニグマの人に色々話を聞いた気がするがそれ以外のことで忙しくてして何も覚えていない。
あれ?なんで俺、彩玉県立大学の文化祭に来てるんだっけ?
宝生先輩の双丘をいかにばれずに長時間見られるかを考え実行しているうちにいつも間にか時刻は十四時を過ぎ、エニグマの体験学習も終わっていた。
やっ、やってしまった~
性欲にかどわかされ本来の目的を見失ってしまった。
このはばたき祭に向けて具体的なことが何一つ決まっていまい状況を打破するために来たのに、なんの成果の!!得られませんでした!! 状態になってしまった。
俺がやけに冷静で自分がやったことを後悔してしまう賢者タイムにような状態に陥っていると不意にポケットの中のスマホが震えるのを感じ、どこの誰からのメッセージか確認するためロック画面を見てみると、何ともまぁ健気さを感じさせてくれる素晴らしい文章が表示されていた。
『どうでした、エニグマの体験学習は? おっぱいを堪能できましたか? セクハラ先輩』
いやぁ~、俺たちが体験授業を終えたタイミングで労いのメッセージを送ってくるなんて、これぞ後輩系ヒロインってやつだな。
しかも、ふわふわとした抽象的なことは書かずしっかり俺が体験してきたことを具体的に書いてある、これはポイントが高い。具体的なことを入れることで自分だけのために書いたメッセージという特別感が出るからな!
これは賞賛以外の言葉が見つからないほど完璧だ、最後にちゃっかり先輩なんて書いてあるところも俺の庇護欲をくすぐってくる。
素晴らしい、本当に素晴らしすぎる…………いや、怖えわ!
なんで俺たちが今、体験学習を終えたことを知ってるんだよ! まぁ、それは百歩譲って良いとしよう、パンフレットを見れば大体の終了時間は書いてあるのでそれで分かったのかもしれない。
それよりも見過ごせないのは後半の方だ。なんで俺が宝生先輩の胸に夢中だったことがわかるんだよ! それは完全に見てないと分からないことだろ!
このメッセージの送り主は当然、後輩系ヒロイン?の佐倉さん。そういえば完全に忘れてたけど俺たちのことをストーキングしてるんだったな。人多すぎて見失って以来見なかったから諦めて帰ったのかと思ったら、いつの間にか俺たちのストーキングを再開していたのか。
金髪の小柄美少女を探すため、周りを見渡してみるがそれらしい人影はない。金髪なんて目立つからすぐ見つかると思ったが、そこは流石、佐倉さんといったところか。
いつもは『美少女だから誰かがやってるれるんですぅ~』とか言ってるがあれで実は結構スペック高いんだよな、ほんと末恐ろしい後輩兼ご主人様だ。
「目的のものは見終わったしこれからどうしましょうか? もう見たいものもないし帰る? それともまだやりたい事ある?」
階段をとてとて階段を下りながら宝生先輩がそう言ってきた。
時刻は十四時ちょっと過ぎ、文化祭終了の十七時まではまだ結構な時間が残っている。
窓の外を見てみてもまだお天道様はまだ上空からウザいぐらいに紫外線や赤外線を放っていて沈むそぶりは全く見せていない。
午前中に集合したとはいえ流石にまだ解散するには早いだろう。だが、このまま何もなかったら帰宅コース一直線だ。
そんなのは嫌だ! まだ一緒にいたい! やっと緊張がほぐれてきて、ここから落ち着いた大人の魅力ってやつで宝生先輩をメロメロにしてやろうと思っていたのにあっさり解散なんて冗談じゃない、俺がこの日のためにどれだけ準備してきたと思っているんだ!
何か帰る以外の選択肢はないのかと頭を悩ませながら校舎を出ると視界の端に何やら異様なほどに人口密度の高い場所をとらえた。
パンフレットで確認してみるとどうやら人だかりが出来ている場所は大講堂前だった。
意識をそちらに向けてみると勧誘なのかアナウンスなのか詳しくは聞こえないが声を張って何かを発している人たちとその人たちを押し潰さんとするほどの人だかりがあった。
いや~これは無いかなぁ~。
人混みが出来ているということは何かしら人の興味を引くようなことが行われている証拠だが、それが必ずしも俺の興味を引くものとは限らない。
そもそもの問題、俺人混み苦手なんだよな。
近くに人がいるという状況はそれが他人であろうと気を使うものだ、最近セクハラ問題とかうるさいしあんまり知らない人でごった返しているところに行きたくないんだよな。
それに、いつもの態度を見ていて分かる、絶対宝生先輩も人混みが苦手だ。何なら人混みどころか学校内で友達といるところを見ないまである。
そういえば、俺はクラス内での宝生先輩のことを何にも知らないんだな。
一人ぐらいは友達いるのかな?
まぁ、そんなことを聞く勇気もタイミングをつくる器用さもない俺は卒業まで化学部の宝生先輩しか知ることはないのだろうけど……
まぁ、聞いてみて本当に友達が一人もいないって言われたら実際なんて反応していいか分からないし仕方がない、自分が解決出来ない問題に首を突っ込んでも相手の傷口を無遠慮に広げるだけだ、だから、だから……このままでいいんだ……
仕方がない、まだ時間的には早いが帰ろと人混みから目を離し、校門の方へ足を進めようとしたとき、スマホがご主人様からのメッセージを受信したことを知らせてきた。
『まだ、帰るには早いですよ。大講堂前にすごい人だかりが出来てるじゃないですか、面白そうなので行ってください』
俺はこのメッセージを無視して校門の方へ足を進めた。
何度も言っているが俺は紳士だ。紳士は女性が嫌がっていることを強要しない。それどころか女性の趣味思想を考慮し、目の前に存在する出来事を好むか嫌がるかを先読みし、それに従って行動する。
ゆえに、俺はこのメッセージを見て見ぬふりをする。ただの未読スルーではない女性を思いやる勇気を持った未読スルーだ。
すると再び、スマホがご主人様からのメッセージの到着を知らせてきた。
未読スルーをしている手前、気まずかったが俺は漢だ! ままよ! と電源ボタンを押してロック画面を開き内容を確認してみる。
てっきり『命令には従ってください!』やら『セクハラ野郎の分際で超絶美少女の私に逆らうんですか?』という俺の行動を咎める上から目線で女王様気取りのセリフが送られてきていると思ったが実際は違った。
送られてきたのは一枚の写真だった。
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