第3話 最期

 病院に着き、受付で名前を告げるとすぐに地下へと案内された。中へ入ると、医者が一名、看護師が一名、真っ白な部屋の中に佇んでいた。ポツリと置かれた椅子に腰掛けると、看護師がバインダーごとエイトに手渡した。誓約書だった。


「本当にいいんですね?」


 医師が念を押すように言う。エイトは躊躇することなく「はい。」と答えた。目は誓約文を追っており、どこか心ここに在らずといった声色だったのは否めないが。


「サイン、しました。お願いします。」


 側に控えていた看護師にバインダーを返すと、医師はエイトを見て頷いた。彼の手には小さなガラス瓶が握られており、そこに注射針を刺して液体を吸い出した。


「今からこの毒をあなたに打ちます。三十秒で意識が遠のき、一分後には死に至ります。何か言い残したいことがあれば、今ここで。」

「そうですね……今までありがとう、とだけ。」


 医師が看護師の方を見た。彼女は小さく頷き、医師はエイトの腕をとった。ゆっくりと注射針がエイトの皮膚を突き破った。エイトは目を閉じて深呼吸をした。やがて、意識が遠のき、闇の中にぷつりと消えた。

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