ウザ後輩(カノジョ)を家に上げたら、妹が食い気味で質問攻めをしてきた。
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
いつもと違う、ウザ後輩。からの、怒濤の手の平返し
今日は、カノジョである斉藤クルミを家に呼んだ。
「お、おじゃましますよぉ」
「おい、いつものウザ態度はどうした?」
「ああ、いえ。それは」
なんか調子狂うな。
今日のクルミ、借りてきたネコみたいだぜ。
服もいつもみたいな肉感的なファッションではなく、女の子らしい。
こんなおとなしめのショートパンツ姿なんて、見たことがない。
いつもはきわどいミニのプリーツとかはいてきて、こっちがドギマギしてしまうのに。
「お帰りお兄ちゃん。カノジョさんこんにちは」
「チヒロ。改めて紹介するぞ。斉藤クルミさん。オレのカノジョだ」
「さん……」
さん付けされただけで、クルミの顔が沸騰しそうなまでに赤くなった。
「チヒロさん。初めまして、じゃないや。こんにちは。今日はお邪魔します」
「クルミさん、こちらへどうぞ」
しっかり、お茶とお菓子を用意してある。
気が利く妹だ。兄として誇らしい。
「お兄ちゃんとはどこまでいったの?」
前言撤回。
「う~ん、チヒロ、お前にはまだ早いんじゃないかなぁ?」
「やましい気配がない。お互いがまだ距離を掴みかねていると判断した。プラトニックなのは一目瞭然」
クルミを見ると、紅茶すら喉を通っていなかった。
苦笑いを浮かべるのみ。
「沈黙ということは、事実であるとの認識でファイナルアンサー。これでは、恋愛以前の問題。発展性がない」
ズバリ言い張る妹。
「妹さん、キャラ変わってませんか?」
「元々こんなヤツなんだよ」
実は、猫を被っているのは妹だったのである。
オレがカノジョ持ちと知って、包み隠すのをやめたくさい。
「チヒロ、お前、オレとクルミに別れて欲しいのか?」
チヒロは首を振る。
紅茶を置き、ため息をつく。
「張り合いがない」
オレは、チヒロの意図をはかりかねて、呆然とする。
「わたしにも、もっとウザい反応して欲しい」
意外な解答だったらしく、クルミはキョトンとした。
「実はな。お前を家に呼びたいって言ったのは、チヒロなんだ」
仲良くなりたいんだってさ。
結果的に、ケンカを売るような形になってしまっているが。
「わたしにも、ウザい返しをして欲しい。お兄ちゃんと同じように。でないと、お兄ちゃんをちゃんと愛せない。あなたは、お兄ちゃんがわたし以外に愛した人。わたしにも知らないお兄ちゃんを知ってる。お兄ちゃんの別の一面を、教えてほしい。わたしと一緒にいないときに、何で笑って、何で怒るのか……」
しばらく沈黙していたが、クルミはニヤリと口角を上げた。
「え~っ。ヤですよ~っ」
出た、いつものウザ態度!
「あのですね、妹さ~ん。この際言っておきますが~。あたしがウザいのは~、先輩の前だけなんですよぉ~。ウザい反応は先輩だけの特権でして~」
「むかっ」
この段階でウザがられているぞ、クルミよ。
「どうしてもっていうならぁ~、妹さんには手加減してあげよっかな~と思わなくもないですよ~。大好きな先輩の妹さんですからね~」
なんか主導権を握った途端、怒濤の手の平返しが。
「むむ~。じゃあどっちがお兄ちゃんのこと好きか、勝負する」
「望むところですよ~。ジローさんはですね~。特撮の話になると別人になるんですよ~。でも、無知なあたしにも分かりやすく説明してくれるんです~」
「お兄ちゃんは、毎日お弁当を作ってくれる」
案の定、二人は口論を始めてしまった。
でも、クルミもチヒロも楽しそうに見えるのは、オレだけか?
「あと、お兄ちゃんのツッコミ大好き」
「あたしも大好きですねぇ~。あのツッコミ体質はなかなか巡り会えませんからねぇ~」
「お兄ちゃんと付き合ってるのは、ツッコミ体質だからってだけ?」
「うぉ……。そそそれはですねぇ」
クルミが咳き込んだ。
「秘密ですよぉ~。教えるわけないじゃないッスかぁ~。ただ、あなたよりはあたしのことを愛してるとだけ伝えて差し上げましょお~」
なんか、オレの方がハズい……。
ウザ後輩(カノジョ)を家に上げたら、妹が食い気味で質問攻めをしてきた。 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
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