遠山さん、見知らぬ娘から幼馴染と告げられる

四十七、遠山の金さん、ルートを決める様に迫られる

「最近、虹先輩と私達、イチャイチャとか恋愛が少ないと思うんです」

という感じの事を生徒会室を片していると美帆から受けた。

いやちょっと待て、突然だな。

何でだよ。

それって全然、今と関係無いだろ。

思いながら盛大に溜息を吐きつつ美帆を見る。

「.....つまりはどういうこった？」

「.....もっと先輩とイチャイチャしたいんです。特に虹先輩が、だと思います」

いやそれは分かるが.....。

虹の事を気に掛けているんだな？

一応.....納得は出来るが.....。

って言うか.....俺は言っているだろイチャイチャしたく無いって。

そんな感じの真似をしたら.....俺らしく無いし。

しかも.....色々有ったしな。

佐藤の件とか。

「そこで私、考えたんです」

「.....何を？」

そう聞くと、とんでもない答えが返ってきた。

真剣な顔をしながら美帆から、だ。

俺は見開く羽目になる。

「.....そろそろ、誰が先輩と付き合うかって事を真剣に考える時期じゃ無いかと」

「何なの？アホなのお前？今決める事じゃ無いだろ」

そんなん今決める必要有るか？

完全にダメなパターンじゃ無いか。

ってか片付けろ、と思いながら.....額に手を添えた。

美帆は真剣なままで俺を見る。

そんな美穂のデコに溜息混じりにデコピンする。

「ちょ！痛いです！何するんですか！」

「.....あのな。俺は絶対にお前らと付き合う気は無い。そしてこれからも暫くは、だ。佐藤の件も有る。だから.....」

「.....でも先輩。そろそろ付き合う人を決めましょうって時に赤くなってましたよね？さっき」

「.....！」

見逃して無かったのか。

本当は好きな人が居るんじゃ無いですか？この中に。

と言って、美帆が、皆んなが俺を見てくる。

ニヤッとする美帆。

俺は.....冷や汗を流した。

確かにそうなのかも知れないが.....今言うかそれを。

俺は思いっきり眉を顰める。

うーん。

「でも確かにそうかもな。.....好きな人はいるのかも知れないな」

「実はですね、先輩。私達、三人で考えたんです」

「.....は？何を？」

「私達がそれぞれの道を夢を歩む為に、です。もう.....高校二年生ですから.....時間もそう長く無いと思ったんです。そして.....先輩にご迷惑をお掛けしない様にしたいんです。なるだけ」

それは分かるがいきなりすぎるだろ。

俺は困惑しながら美帆を見る。

美帆は.....相当に真剣な様だが.....。

何で今なんだと思いながら俺は眉をまた顰める。

そして仕方が無いかと諦めた。

「.....俺は.....」

「はい」

「.....お前だよ。美帆。好きなのは」

「.....え.....」

何を言っているの的な感じで目がパチクリになる美帆。

そして、え？.....え？ちょ、嘘ですよね？、と俺を驚愕しながら見てくる。

美穂が迫って来るのを避けながら.....俺は美帆を見る。

そして.....唇を少し噛んでから美帆を見据える。

「.....お前は昔から。そして今も。ずっと俺の影で俺を助けてくれている。そんなお前の事が.....好きなんだ。俺は」

「.....え.....ちょっと待って.....え.....？」

まさかとそんな.....、と言いながらボッと赤面しつつ.....目を彷徨わせる美帆。

コイツが言い出した癖に.....マジに言葉に詰まっている。

それから.....俺をまた見てきた。

それ本当ですか？と、だ。

「.....何で私.....」

「.....俺はな。昔から一緒に居るお前が気になっている。可愛いとかじゃ無い。顔じゃ無い。.....良いかお前には.....他の人に無い魅力が有る。それは.....俺にとっては.....嬉しかったんだ」

「.....ちょ、っと.....席を外して良いですか？.....私、虹先輩の事を.....言われるものと.....思っていて.....予想外で.....その.....えっと！」

「逃げる気かお前。お前が言い出した癖に」

逃げないです。

でも.....その.....気持ちを整理したくて.....失礼します！！！！！

と駆け出す、美帆。

その姿を俺は直ぐに追う。

何だか知らないがヤバイ気がする。

「.....虹.....神楽。任せて良いか」

「うん。大丈夫。行ってらっしゃい！」

「.....大丈夫だよ」

虹と神楽には後で謝ろう。

そう思いながら頷きつつ生徒会室を飛び出した美帆を追う。

今ここで捕まえないとマジにヤバイ気がするのだ。

絶対に！

☆

「何で私.....」

その様な嗚咽混じりの声がする。

屋上に逃げた様だった。

俺はそれを追い掛けて.....屋上まで来る。

そして.....空を見上げる。

「.....晴れてんな」

「.....そんな事はどうでも良いです。何で私なんですか！！！！！.....先輩！！！！！」

「.....あのな。聞くが.....何でお前が吹っかけたのにそんな答えが返って来ると予想して無いんだな.....。って言うか.....ここまで答えを導いたのはお前だろ」

「.....私が.....選ばれて良い訳が無いです.....だって.....」

と言う、美帆に一歩一歩近づく。

そして.....俺は困惑している美帆の前に立った。

それから見下ろす。

あたふたしているその頬に触った。

「.....確かに俺は虹が好きだと思った。だけどな。.....改めて考えたんだよ。俺の心に居た優しさって何だろう？ってな」

「.....それで.....そこにいたのは私だったって事ですか？」

「お前は隣に何時でも立ってくれた。小学校時代から憧れてくれていた。.....虹もそうだけど.....でも俺は.....お前が立っている花唄が感じれたんだ。助けてくれた。泣いてくれた。そして.....俺を見てくれた。お前が好きだ」

「.....」

涙が止まらない様だった。

俺は.....選択ミスをしたのかも知れない。

だけど.....俺は心に残っているのは虹では無い。

神楽でも無い、他ならぬコイツだった。

まあ俺も驚愕だけどな。

「.....美帆」

「.....何ですか？」

「.....キスするか」

な！？.....デリカシーが無いですね。

と美帆は号泣する。

だが、その口は嫌とは言わなかった。

その為俺は.....唇を合わせる。

美帆に、だ。

「.....何やっているですか！下手ですね！歯が痛いです！先輩！」

羞恥の顔で俺をぶん殴る、美帆。

俺は痛みに.....何すんだ！、と美帆を見る。

美帆は.....涙を流しながら俺を笑顔で.....見ていた。

そして唇に手を添えて.....歯に噛む。

「.....先輩。大好きです」

「.....そいつは結構。.....俺も好きだからな」

苦笑いと笑う俺達。

そして俺と.....美帆は。

正式に恋人同士になった。

虹と神楽には.....申し訳ないという裏腹に.....感謝しか無い。

帰ってから謝ろう。

思いながら.....俺は前を見据えた。