四十五、遠山の金さん、埃まみれになる

平山夏加先生とは初対面だが.....俺達はかなり打ち解けた感じだ。

何と言うか.....接しやすいタイプなんだ。

平山先生自体が、だ。


優しいというか.....そうだな、相談しやすいタイプだ。

俺達は.....平山先生に案内されて空き教室にやって来る。

因みに長谷川は部活に戻った。


「.....ここが部活の拠点の場所です」


「.....この教室が」


「.....な、成る程です」


やって来た教室。

それは.....椅子が積まれており。

そして机も積み上がっていて書類の山が有った。

埃まみれだ。

俺達は顔を見合わせて苦笑する。


「.....ごめんなさい。こんな教室しか用意出来ず」


平山先生は申し訳無い様な顔をする。

それに対して.....美帆がニコニコする。

それから.....背に手を回した。


「.....全然です。教室が有るだけ.....全然変わります。片付ければ良いですから。ね?部長♪」


そして俺にゆっくりと向いた美帆。

口角を上げてニコッとする。

いや、ってか.....俺に向くなよ。

思いながら言う。


「.....俺が部長だからか」


「そうですよ。先輩は部長ですから」


「.....まあそうだけど.....でもこれを片すのは.....

かなり面倒臭いな」


「もう。とーくん。そんな事言わないの」


虹がプンスカ言う。

いや、だってそうだろ。

こんなに片してない空き教室なんぞ。


そして俺は半ば無理矢理に部長になった身だぞ。

良い加減にしてくれ。

あくまで半分は俺が認めたけど、だ。


「.....うーぬ.....」


「やりますよ。先輩」


「ですね」


「やろう」


まあもう仕方が無いか。

思いながら見ると皆んな袖まくりした。

そして.....片付けを始める。

平山先生が手を叩く。


「私は掃除道具持ってきます」


「いや、先生にそんな真似をさせるのは.....」


「私は顧問ですからね」


じゃあ行って来ます。

と歩き出して。

ビターン、ドン、ガッシャーンと音がした。


俺達は.....平山先生の歩いて行った方を慌てて見る。

そこには.....倒れている平山先生が居てそして.....バケツを頭に被っていた。

何ちゅう光景だよ。


「痛いです.....」


「.....え.....凄い。.....ドジっ子だ.....」


神楽がそう言う。

ドジっ子ってお前。

俺が言おうとした事を言いやがって。

しかも先生だぞ。

ドジっ子を言っちゃあかんだろ。


「ドジっ子じゃ無いですよ.....酷いです」


平山先生がバケツを取りながら.....頬を膨らませる。

髪の毛を戻しながら、だ。

そして.....俺達を見た。

俺達は顔を見合わせて.....そして、ハハハ、と笑う。

それから.....少しだけ柔和な空気が流れた。



「先輩。そっち持って下さい」


「.....はいはい」


「とーくん。そっち持って」


「.....はいはい.....」


それは良いけど.....いや、重いな.....。

机ってこんなに重いのか.....。

思いながら.....溜息を吐く。


俺達は机を動かしながら.....そして椅子を動かしながら片していた。

マスクしないと死ぬわこれ。

息が苦しい。

そう考えながら.....背後を見る。

先生が、クモォ!、と目を丸くして涙を流しながらあたふたしていた。


「.....蜘蛛ですか?大丈夫ですか?」


「.....だ、大丈夫です.....私は.....先生なんですから.....!」


「先生っても先生は女性でしょう。俺やりますよ」


俺は.....先生の側に行く。

そして俺は蜘蛛を掴んで外に投げた。

その事に.....先生が目を丸くして俺を見てくる。

優しいんですね、と言いながら、だ。


「.....優しいってか当たり前の事です」


「.....でも噛まれない様にして下さいね」


「.....はい」


そんな柔和な感じで居ると。

ホウキで、先輩、と叩かれ.....た。

美帆の目が死んでいる。

俺は!?と思いながら見る。


「.....デレッとしないで下さいね。あはは」


「.....」


「.....」


嫉妬って怖いね。

溜息混じりで.....考える。

そして机を動かすのを再開しているとドアが開いた。

長谷川が立っている。

何をしに来たんだコイツ。


「.....皆んなやってるか」 


「.....何をしに来たんだ。長谷川」


「.....飲み物。買って来たぞ」


「.....ああ.....マジか」


忙しいだろうに。

長谷川は無地の白いビニールから飲み物を出す。

それから.....笑みを浮かべた。

俺達はそれを受け取る。

そして机に並べた。


「.....サンクス。.....ああ、金.....」


「.....要らない。君には世話になっているからな」


「.....あ?.....そういう訳にはいかないだろ」


「.....良いんだよ。本当に」


な?とニコッとする長谷川。

なんかもう.....無駄に.....イケメンだな。

そして困ったもんだなマジに。

思いながら、分かった。じゃあ次に払うわ、と言葉を発する。

そうしてくれ、と長谷川は言う。


「先生も飲んで下さい」


「何を.....私は教師ですよ.....そんな馬鹿な事は出来ません」


「バレなかったら良いと思います」


虹が笑みを浮かべる。

その言葉に.....ゴクッと喉を鳴らした。

それから.....頬を膨らませる。


「.....ムー.....」


じゃあ、仕方が無いですね、と溜息を吐き。

そして紅茶のペットボトルを取った。

それから.....飲んだ.....。

うーん.....ってかコクコクとゆっくりと飲む姿が.....かなりいやらしいな.....。

思っているとバシッと弾く様に叩かれた。


「ど・れ・に。するんですか?先輩は」


「す、すまない」


「もー。とーくんのエッチ.....」


「.....俺は何も言ってないだろ.....」


俺は言い訳をする。

長谷川と神楽が顔を見合わせて苦笑い。

そして小休憩を取った後。

飲み物を飲んでからまた片付けを始めた。


そして俺は.....埃まみれに.....いや。

全員が埃まみれになり。

5時過ぎから長谷川も手伝ってくれて.....取り敢えず片す事が出来た。

それから.....一応だが。


部活が始動した。



ここまで来るのに相当な困難が有ったと思う。

然し乍ら.....皆んな頑張った。

そのお陰で取り敢えずは.....部活がスタートのテープを切る。

俺達はそれぞれの自宅に帰ってからの夜になった。


「.....お兄ちゃん頑張ったね」


「.....まあな」


「.....お兄ちゃんがそんなに頑張っていると.....嬉しい気持ちになるよ」


「.....」


横に居る葉月は笑みを浮かべる。

俺はそれに対して笑みを浮かべた。

そして.....勉強をする。

葉月も俺を見ながら俺の部屋で勉強していた。


「.....お兄ちゃん」


「.....何だ」


「.....本当にお疲れ様」


「.....お前は俺の妻か?」


妻?そうだね.....でも本当に妻になっても良いよ?

血が繋がっているけど。

とクスクス笑う葉月。

俺は苦笑しながら、それはお前が幸せになった時だ、と口角を上げた。


「.....お婿さんって考えにくいね」


「.....お前がお婿さん連れて来たら泣くぞ。号泣するぞ」


「.....このシスコン。あはは」


「.....いや、割とマジに」


考えてみる。

葉月にお婿さんか。

いや、やっぱり考えたく無いんだが。

俺の自慢の妹だぞ。

幸せにしなかったら殴り飛ばす所だ、と考える。

そんな考えをしていると葉月は見透かした様に、有難う、と呟いた。


「.....それはそうと明日から部活だね」


「.....本当に面倒だけどな」


「.....だね。頑張ってね。乗り越えた先に希望が有るよ」


「.....ハハハ。.....サンキュー。.....お前も勉強頑張れよ」


うん。

と俺達は指切りげんまんをした。

そして.....翌日になり。

そのまま.....放課後に部活が始まった。

部活名は考えていた通りのものになる。


(お助け部)


そんな感じの、だ。

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