四十一、遠山の金さん、美帆の誕生日を祝う
「先輩!私のお誕生日!絶対にスルーしましたよね!?思い出して良かったです!」
「.....いや.....忘れている訳じゃ無いんだが.....まぁスルーしたってのは有る。でもな今日来るかお前.....」
「プレゼント買いに行こうと思ったら.....色々有りました.....私も忙しかったですからね」
だから来たってかコイツは。
帰ったと思ったら何故か10分後に荷物を持って泊まりに来た。
マジ卍且つ嘘だろコイツ.....。
思いながら俺は盛大に欠伸をする。
勘弁してくれよマジで.....と思いながら見つめる。
そんな美帆と言うと。
東次郎先輩からのプレゼントは私と泊まりこみという事で、と嬉しそうに言う。
いや.....うん。
俺は頭に手を添える。
すると横に座っていた葉月がはしゃぐ。
わーい、とだ。
友美ちゃんもつられてはしゃぐ。
「じゃあ.....お前、マジに今日1日は泊まる訳か?」
「そうです。誕生日.....祝って欲しいですから」
「.....もう誕生日を建前にしているだけだろお前よ。何?寂しがり屋なの?アホなの?.....明らかに俺目的だろ」
「.....うーん。デリカシーが無いですね。東次郎先輩。一応ですが私は.....東次郎先輩を目的とはしていませんよ」
.....多分。
とニコッとして言う。
俺は目を丸くしながら.....、ハァ.....、と溜息を吐いた。
そんな俺達の側に母さんがやって来る。
母さんは父さんより先に帰って来たのだ。
「東次郎。アンタにお嫁さん候補が沢山居て嬉しいわ。私」
「やだ。お母様ったら」
「おほほ」
ハイタッチする美帆と母さんの二人。
ノリノリの馬鹿共。
俺は盛大に溜息を吐いた。
もう何度目の溜息か知らないが溜息が出る。
いや、マジに勘弁してくれ。
高校の女の子が泊まりに来るとか何?
罰ゲームなのこれ?
「でもお兄ちゃん。良かったね」
「いや、良くねぇよ.....」
葉月はニコニコするが。
何で俺はこんな目に巻き込まれているんだ。
思いながら.....美帆を見た。
そしてまた盛大に息を吐く。
「そんなに溜息吐かないで下さいよ。東次郎先輩」
あはは、と喜ぶ美帆。
何だか意地悪をしたくなった。
取り敢えず一言と思い、ニヤッとして言葉を発する。
何を話すかって?そうだな.....。
こうだ。
「じゃあ泊まるからには一緒に風呂にでも入るか。な?」
「..........え?.....いや、お兄ちゃん.....」
「うわ.....」
何を言い出すの.....ゲスい。
という感じの目をする葉月。
それから.....友美ちゃんも、最低.....、という目をしていた。
何だその目は。
だってそうだろ?
俺に美帆が来たせいでストレスが掛かっている。
それなりに代金は払ってもらうぞ。
俺はニヤニヤしながら.....美帆を見る。
だが次の瞬間だ。
予想外の言葉が飛んできた。
「.....わ、分かりました。東次郎先輩がそう言うなら.....入りましょう.....!」
一瞬、何を言っているか分からなかったが。
目がパチクリした。
何.....な!?
へぇ!?
「.....は.....?......は!?」
「だって東次郎先輩が言ったんですよ!やるからにはやりますからね!ジョークとは思いません!」
「は?は?ウッソだろお前!?」
馬鹿なのかコイツは!!!!!
母さんも、きゃっ、と目を頬を赤くしながら抑える。
いや、ちょ、ちょっと待て!
何だコイツ!?
こんな痴女とは思わなかったぞ!
予想外だ!
真っ赤になりながら.....美帆は手をわさわさ動かしながらニヤニヤする。
俺のズボンをひっぺがそうとする。
「さあ.....入りましょう。東次郎先輩」
「お前!?.....いやー!!!!!」
葉月と友美ちゃんが、見ちゃアカン、という感じで部屋を出て行く。
嘘だろ!葉月!友美ちゃん!
マジかこのタコ!
た、助けてくれぇ!?
コイツ.....この痴女めぇ!
クソッタレぇ!?
☆
結論から言って俺は一緒に風呂に入る事は無かった。
当たり前だが。
下半身がエクスプロージョンしたらどうする気だ。
思いながら俺はバスタオルで髪の毛を拭きつつ自室で外を眺め見る。
「.....」
『お前なんか存在意義すらねぇよ』
チクリと心が痛む。
俺に対してそう言い続けた.....佐藤の言葉だ。
静かに眉を顰めて.....胸に手を添える。
筋肉が萎縮している。
息が荒くなる。
変わり無いな、昔と。
「クソッタレ」
その様に眉を顰めて悪態を吐いていると。
ドアがコンコンとノックされた。
俺は驚きながら後ろのドアを見る。
そして入って来たのは。
「東次郎先輩」
「.....お前かよ」
風呂上りの美帆だった。
俺は?を浮かべながら.....見る。
美帆は.....少しだけ罰が悪そうな顔をしながらも。
笑みを浮かべた。
「.....大丈夫ですか」
「.....大丈夫。死んでない」
「極論ですね。.....でも.....それが先輩らしいです」
「.....」
少しだけ笑みが溢れた。
すると美帆は一歩一歩を踏み出す。
そして俺の横にやって来る。
女の子の香りがして目を背けた。
「あ、先輩〜?ドギマギしました?私の勝ちですね」
「喧しいわ。してない」
「あはは」
でも先輩。
それは良いですけど何を見ていたんですか?
と俺をニコッとしながら見つめてくる。
俺は.....外だ、と話す。
「.....先輩」
「.....何だ」
「.....今、死にたいですか」
「.....!?.....何を聞くんだお前」
俺を真っ直ぐに見据える美帆。
目を丸くする俺。
美帆は.....俺の頬に手を添えた。
そして俯く。
「.....私は.....貴方に死んで欲しくないです。もし自殺する様な事をしたら.....恨みますから」
「.....そうだな。死にはしないよ。俺は.....」
「.....だったら良いです」
死にたくは無い。
だけど.....俺は今、苦しい。
それは確かだ。
だけどコイツらにそれを背負わす訳.....にはいかない。
俺の苦しみなのに、だ。
「.....先輩は話しませんけど、先輩の思っている事は全て分かっていますよ」
「.....?」
「.....苦しみを一人で背負うのは止めて下さい」
「.....何でも見透かされるなお前らには」
当たり前ですよ。
私は何年も先輩を見ましたから。
と胸を張る美帆。
俺は、もう諦めた、と思いながら美帆を見る。
「.....本当にお前達に頼るぞ。良いか」
「.....初めからそうして下さい。ね?先輩」
「.....」
「.....私は糸玉先輩と先輩がくっ付くのを望んでいます」
確かに私の事も有りますけどまず第一はそれです。
とはにかむ、美帆。
俺は.....お前には敵わないなと苦笑した。
そして.....前を見る。
「.....でもね、先輩」
「.....何だ」
と言葉を発すると。
横から爪先立ちでキスされた。
俺は驚愕して美帆を見る。
美帆は唇に赤くなりながら手を当てていた。
ニヒヒ、と勝ち誇った様な顔をする美帆。
そして俺に笑みを浮かべた。
「.....私は先輩が好きです。憧れですから」
「.....お前な.....」
でもそれを知って欲しいのは山々ですが、実際、今はそんな事を考えている場合じゃ無いですね。
と美帆は真剣な顔をした。
俺は.....そうだな、恋愛戦は一時停止だ。
と答えながら.....窓を開けてみた。
「.....私は先輩を守ります。その女から」
「.....俺はお前らを守る。何かあったら」
「.....有難うです」
口角を上げる、美帆。
この世界がどうなるかは分からない。
だけど.....きっと大丈夫と信じながら.....生きていくしか無い。
それが今出来る最優先の事だ。
じゃ無いと人は.....生きられないから、だ。
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