三十八、遠山の金さん、未来を見据える

まぁ冗談だとは思うけど.....飯山に告白された。

俺はそれを冗談で受け止めながら良かったと思う。

何故かと言えば.....飯山と鋼さんが分かち合えたのだ。

その事を思い出しながら.....嬉しい気持ちで俺はコインを機械に入れる。


因みに今現在、鋼さんと飯山はプリクラを撮ったりしている。

その暇潰しにやっているのだが.....面白いなこのゲーム。

そうしてやっていると背後から声を掛けられた。

女の子のちょっと大きい声で、だ。


「メダルちょっと頂戴」


「.....ああ足利か」


別の場所で遊んでいる足利と糸玉のうちの足利が来た。

足利が子供の様に声を甘くしながら俺に手を差し出してくる。

何がしたいんだ。

思いながら.....見る。

足利は、ニシシ、と笑う。


「それはそうとメダル落としゲーム面白い?」


「.....そうだな。静かに出来るから」


「.....じゃあ私、隣でしようかな」


「.....やっても良いが.....お前だけ抜け駆けだとか言って糸玉が怒るぞお前」


あはは、だね。

と足利は苦笑いしてメダルを受け取る。

だが直ぐに笑みを浮かべた。

話を切り替える様に、飯山先輩は良かったね、とだ。

俺はそうだな、と若干に笑みを浮かべる。


「.....そうだな。良かったと思う。飯山が.....取り敢えずは幸せになったしな」


「うん。.....飯山先輩.....本当に嬉しそうだったからね」


「.....だな」


俺は機械を見る。

ジャックポットゾーンを決めるボールがジャックポットゾーンに入った。

俺は、おお、と思いながら見る。


背後に居た足利が、うわ凄い!、と歓喜の声を上げる。

俺達はゴクリと喉を鳴らす様に見守る。

そしてそのボールは.....何とジャックポットに入った。


(ジャーーーーーックポーット!!!!!)


「おお!マジか!すげぇ!」


「やったね!」


足利と俺は歓喜の声を上げてイエーイ!とハイタッチ。

そうして俺達はハッとして赤面した。

こんなんで喜んでどないすんねんと思いながら、だ。

ジャラジャラとメダルが出てくる。

すると糸玉がやって来た。


「うわ。凄いね」


「.....糸玉」


「頂戴?」


「良いよ」


糸玉にやっても差し支えの無い枚数が出てきている。

ジャックポットは五千枚だ。

俺はジャラジャラ出てくるメダルをほいさほいさと渡す。

そして余ったメダルをカップに打ち込む。

横から視線を感じたので足利を見た。


「良い事をしたらやっぱり良い事は返ってくるね」


「.....そんなもんかね」


「だよ。あはは」


「.....」


いやって言うか。

良い事っていってもな。

ただ単に俺は良い事って言うか.....うーむ。

当たり前の事をしただけなんだけどな。

思いながら.....出てくるメダルを見た。


「.....やっぱり格好良いです。先輩」


「.....あ?なんか言ったか?」


「.....いいや。何でも無いですよ。あはは」


赤くなっている足利を見ながら俺は?を浮かべる。

そしてジャックポットは10分余り続いた。

メダルは三千枚程、出て。

俺はメダルバンクに預ける事になった。



「.....良かったね」


「だな。で、この後どうする?」


「あ、私は.....お姉ちゃんと一緒に帰ります」


ゲーセンの入り口でその様に話す

飯山が手を挙げてその様に話した。

俺は.....見開く。

そして少しの笑みを浮かべた。


「.....じゃあ帰るんだな」


「はい。ね?お姉ちゃん」


「.....ああ」


すると鋼さんが思いっきり頭を下げた。

俺は驚愕しながら見る。

糸玉と足利も驚きながら見ている。

そして鋼さんは言葉を発した。


「.....君達のお陰だ。ここまで.....全て.....変わったのは」


「.....俺達は.....何もしてないっす」


「.....いや。君達が神楽と友人だったから.....変わったんだ」


「.....」


だから.....感謝している。

今度、ゲーセンに来たら.....サービスするし。

何時でも.....私の家に来てくれ。


本当に有難う。

と目尻に涙を浮かべながら.....鋼さんは拭った。

そして.....頭を下げて飯山と共に去って行く。


「.....良かったね。とーくん」


「.....だな」


「とーくん居なかったら何も変わらなかったよ。本当に.....今までの事も」


「.....そいつは嬉しいな。でも.....俺居なくても変わっただろ」


いいや。

とーくんだから。

私の大好きなとーくんだから、ね。

と赤面で笑みを浮かべる、糸玉。


「.....そうですよ。とうじ.....じゃなくて。東次郎先輩が居たからです」


「.....お前.....名前で.....」


「嫌ですか?」


「.....嫌じゃ無いけど.....」


名前で呼ばれるの恥ずかしんだけど。

思いつつ......溜息を吐いた。

それはそうとこの後、どうしたもんかね。

思いながら.....足利と糸玉を見る。


「この後どうする?」


「.....じゃあもう少しだけ遊んでいこうか」


「ですね!」


「.....了解」


俺は苦笑しながら二人に頷く。

そして.....ゲーセン内に戻った。

それから.....メダルで遊ぶ。


3時間ぐらい遊んでしまったが.....悪い気はしなかった。

飯山の事が有ったからだろうか。

考えながら.....俺は少しだけ柔和になった。



夜、自室で横になる俺。

この世界で奇跡が怒るのは稀だと思う。

だけど俺の行動でその稀が.....稀じゃ無くなっている。

糸玉も足利も飯山も皆んな俺が居なかったらと言う。

それは言い過ぎだと思うが.....。


「.....奇跡を起こせる人.....か」


俺はそんな人間とは思わないけどな。

スマホを弄りながら.....そう思う。

俺は良い奴とは思えなかったからな.....昔は。

人を.....敵と認識して今まで歩んで来たから、だ。


「俺だけじゃ無い。皆んなの支えが有ったから.....な」


思いながら俺はスマホを置く。

それから.....一週間後ぐらいに始まる学校の勉強をする。

春休みの課題だ。

面倒臭いがするしか無い。


「後でラノベ読むか.....」


ラノベ の山を見つつ思いを馳せた。

そして.....勉強を始める。

この先、どうなるかは分からない。

だけど俺達は今を見据えて動く必要が有るのだろう。

例え.....絶望が有っても、だ。

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