十節、飯山と飯山の姉

三十六、遠山の金さん、飯山の姉に出会う

結論から言って足利はアイドルの打診を保留にして欲しいと言った。

今はまだ決められない、親の意見も有ると胸の内を明かしたのだ。

で、その後どうなったかと言うと俺と糸玉と足利。

その三人で一応、アミューズメントへ遊びに行く事になった。

うわ、リア充の聖地!いやぁ!


「何で俺はこんな目に.....」


「先輩。良い加減に諦めて下さい」


「そうだよ。とーくん」


最近出来たアミューズメント施設。

リア充の聖地とかマジに嫌気しか無い。

だってそうだろ。

ボッチオタクがこんな場所ってキツいわー、無いわー。

思いながら.....俺は嫌々言いながら引き摺られる。


「太○の達人しようよ。とーくん」


「私はプリクラが良いです!」


「.....もう好きにしてくれ.....」


ここまで来たらもう何でもオーケーです。

早く帰ってラノベが読みたい。

思いながら.....ゲーセン内を見る。

やはり最近出来た施設のせいか、綺麗だった。


「.....ん?」


そうしていると.....ゲーセンのトイレの入り口付近。

そこで小学生らしき男の子が女の子にカツアゲしている。

俺は溜息を吐きながら.....店員を探す。


そして店員を見つけたので声を掛けるとその店員が振り返った。

女で有る。

しかしこの顔、どっかで見た様な、って思ったが今はそんな事はどうでも良い。

俺はすぐに内容を伝えた。


「.....はい」


「.....ああ、すいません。カツアゲしている奴が居て.....」


「.....ああ、またですか」


「.....また?」


俺は驚きながら居ると。

その年上の美人の店員は歩き出して小学生の背中をバシンと叩いた。

それから、またカツアゲしてるね。警察に通報するよ、と脅す。

その事に小学生達は青ざめながら一目散に逃げて行った。

カツアゲを受けていた小学生と店員だけが残る。


「あ、有難う御座います!」


「弱い人を虐めるとか最低だね。あの子達。君も気を付けな」


「は、はい!」


カツアゲを受けていた女児は頭を下げた。

それから直ぐに去って行く。

手を振りながら見送る、店員。

俺はそれを溜息を吐いて見て居ると先に歩いて行った二人が戻って来た。


「何をしているんですか?」


「いや、カツアゲしている馬鹿共が居たから.....その事を訴えたんだ」


「成る程ね。最低だね、その人達」


糸玉が不愉快そうに眉を顰める。

だけど強い感じの女の店員さんが居たから.....助かった。

思いながら.....その店員を見る。

店員は俺達の元に来た。


「.....有難う御座います。言ってくれて」


「.....いえ.....」


「ああいう不届き者も居るので.....ゲームセンターなので」


「.....」


溜息を吐く、女性。

しかし見れば見るほど誰かに似ているな。

思いながら顎に手を添えていると。

糸玉が目をパチクリした。


「もしかして神楽の.....お姉さんか何かですか?」


「.....え?そう言う君達は.....」


「.....私とこの人達は神楽の友人です」


「.....ああ.....神楽の。.....私は神楽の姉貴だ。名前は飯山鋼(イイヤマゴウ)だね」


マジかと思う。

だけどそう言われるとどことなく.....黒髪が、横顔が似ていたとは言える。

しかしと思いながら目を丸くした。

俺達の様子に砕けた言い方になる飯山のお姉さん。

しかし.....飯山と顔立ちも性格も全く正反対だなこれ。


目付きは鋭く、顔立ちは凛としていて、身長も高い。

俺より高いのだ。

これは.....迫力が有るな.....と思いながら見る。

すると鋼さんは俺を見て皆んなを見た。


「.....君達は神楽の友人になってくれたんだね。神楽は.....昔から友達を作ろうと必死だったから.....安心したよ」


でも.....と言葉を切る、鋼さん。

それから苦笑した。

そして溜息を吐く、鋼さん。

俺と糸玉と足利は顔を見合わせた。


「.....私は.....アイツに酷い事をしたから今は姉貴と思われて無いと思う」


「.....え?それってどういう.....」


いやいやグイグイ来るね、君達は。

と苦笑する、鋼さん。

俺達は、あ。すいません.....、と慌てる。

いや、良いよと鋼さんは苦笑いした。

そして真剣な顔で話す。


「私はアイツの世界を壊したんだ。そして両親に嫌われて.....出て行った。そんな感じさ」


「.....!」


「.....え.....」


なんて暗い話をしても仕方が無いな。

と苦笑いを再びした、鋼さん。

それから.....俺と糸玉と足利の手をポンポンした。

そして、まだ話すなら後でな。仕事に戻るから、と笑みを浮かべて去って行く。

女性とは思えない風格だった。

糸玉が呟く。


「.....神楽.....苦労しているんだね」


「.....だな」


俺はポツリと呟く。

それから眉を顰めた。

すると足利が手をパンと叩く。

そして笑顔になった。


「.....暗くなりましたね。もし良かったらプリクラ撮らないですか?」


「.....分かった。じゃあ撮るか」


「そうだね」


本当に色々有る。

人生ってのは.....だ。

思いながら.....俺は飯山の事を考えつつ。

俺達はプリクラコーナーまで行った。

そして.....プリクラ機に入ろうとした所で足利が言う。


「糸玉先輩と先輩、そして私と先輩で撮ったりしましょう」


「.....何でそんな面倒な事を.....」


「.....先輩。面倒じゃ無くてそれが当たり前ですから」


それはどういう当たり前だ。

思いつつ俺は.....鋼さんを思い出しながら。

写真を次々と撮影した。

溜息しか出ないな.....マジに。

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