三十五、遠山の金さん、( ゚д゚)となる

葉月のせいで足利に付き合う羽目になった。

足利が家までやって来てようやっと俺は外に出れたのだ。

つまり意味が無い。

逃げようと思ったのだが.....葉月の野郎め。

思いながら俺は上着をバサッとして翻した。


「.....どうしたんですか?」


「.....服装を整えているんだよ」


「あはは。成る程です」


足利の格好は言えばカジュアル系の可愛い感じだ。

パーカーとか着ている。

俺はその姿を見ながら.....溜息を吐く。

可愛いっちゃ可愛いが何時になったら俺は家でジッと出来るのやら。


「ため息吐いちゃ駄目ですよ。女の子とのデート中に」


「俺は昨日も外に出たんだぞ.....」


「貴方は引き篭もりになるつもりですか」


「そうだ。一生外に出たく無い。出来れば」


うわー.....最低ですね。

と足利はドン引きする。

当たり前だろお前.....俺はもともと外に出ない体質だぞ。

なのに毎日毎日毎日.....。

最悪だ。


「でも来てくれたって事は祝ってくれるんですよね?」


ニコッと笑む足利。

そして俺の手を握る。

全くズルイんだが.....女ってのは.....。

赤面しながら頬を掻く、俺。


「あ、赤面しましたね。私の勝ちです」


「.....お前な.....」


「.....でもそれは糸玉先輩に向けて下さいね。先輩」


「.....」


俺は立ち止まる。

その事に.....足利が俺を見てくる。

どうしたんですか?と、だ。

俺は.....足利を見つめる。

そして眉を顰めた。


「.....お前は.....本当に諦めはついているのか?俺への」


「.....!」


「.....正直、好きって気持ちを諦めるってのは難しいと思っている。それは漫画でしか見た事が無いけどな」


「.....諦めていますよ」


それなりに見開く。

そして目線を逸らしていたが足利を再び見た。

足利はニコッと笑みを変わらずに浮かべる。

それから俺の前に一歩一歩と出た。

こっちに振り返る。


「.....私は糸玉先輩に勝てない。だから初めから負けるんだったらもういっその事で全部を諦めたいんです」


「.....」


俺は.....眉を顰めたまま足利を見つめる。

そして.....また目を逸らした。

足利はニコニコしながら。


さあ行きましょうか、と案内した。

だがその次の瞬間。

予想外の人物の声がした。


「本当にそれで良いの」


「.....え.....」


「.....い、糸玉先輩!?」


何故か糸玉が居た。

昨日、変装していた鈴の様な感じで変装を解く。

それから.....俺に、昨日ぶり!、と声を掛ける。

そして次に.....足利に柔和に声を掛けた。


「美帆ちゃん」


「.....な、何ですか?糸玉先輩」


「私を応援するのは有難いけど、それで君は満足なのかな。全部.....知っているんだよ。君達のやっている事」


「.....え.....そんな!?」


足利が青ざめて慌てる。

変装を完全に解いて、伊達眼鏡を掛けながら。

真剣な顔で見据える糸玉。

それから.....糸玉は足利の手を握った。


「.....私としては君がとーくんを諦めきれてないと思っているよ。だから昨日から私ね、考えたんだ。色々と」


「.....な、何をですか?」


その次の言葉に俺は驚愕する。

目が丸くなる程に、だ。

どういう事を言ったかって?

それはこういう言葉だ。


「.....君は君なりの道を歩みなさい。.....私の応援はしなくて良いから。だから恋のライバル同士でいこう?ね?」


「.....!!!!!」


「!?」


まさかの言葉に心底から驚いた。

何故かって言われたら糸玉がそんな事を言うとは思わなかったのだ。

足利もかなり驚き.....目をパチクリしている。

そして足利の目尻に自然に涙が浮かんだ。


「.....私はそういうのは嫌って思ってる。でも.....それで後悔するなら.....私は君にも一歩を踏み出して欲しいって思ってる。私も負けない」


「.....糸玉.....先輩.....それで良いんですか?本当に.....」


涙がポロポロ零れる、足利。

とーくん。それで良いよね?と俺を見てくる糸玉。

いや、俺の意見は無視か.....と思ったが。

悪い気はしなかった。

そして苦笑しながら見つめる。


「.....お前らな.....まぁ良いけど.....」


「あはは」


「.....」


足利を静かに抱きしめた、糸玉。

そして.....グスグス言う足利の頭を優しく撫でる。

俺はその姿を見ながら.....目を閉じて、ったく、と呟き。

空を苦笑したまま見上げた。

ん?そういえば。


「.....で、今日は何でこの場所に居るんだ糸玉」


「あ、えっとね。用事が有って来たの。丁度良いかなって思った。見かけた時に美帆ちゃんも一緒だったから」


「.....どういう用事だよ?」


「実はね、美帆ちゃんをアイドルスカウトしに来たの♪」


( ゚д゚)

とてもじゃ無いが俺の顔がそんな感じになった。

足利も、え?、と素っ頓狂な.....え!?

ウッソだろお前!?

まるで.....世界が止まる様な衝撃なんだが。


「えっと.....わ、私.....アイドルヘ!?嘘ですよね!?」


「うーん。嘘じゃ無いよ?だって美帆ちゃん可愛いし、声も可愛い。上には意見を通しているんだ。だから.....ね?あはは」


「.....糸玉.....無理が有るだろそれ」


「え?」


いや、一般人にいきなりアイドルって.....。

いやまぁ、スカウトデビューという言葉は有るが!?

思いながら.....足利を見る。

わ、私ってそんなに可愛いのかな.....と困惑していた。


「えっと.....ね?.....先輩」


「だよね?とーくん」


「.....俺にどうアイドルの意見を言えと.....?」


マジ卍だろこれ。

と思いつつ俺は盛大にまた溜息を吐く。

二人はいつまでも俺を見つめていた。

何で俺に意見を求めるんだ.....。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る