三十四、遠山の金さん、足利に誕生日だからと脅される

足利が部活を創ると言い出した。

何故、部活なのか彼女に聞くとこんな回答だ。


俺に憧れたから、人を助ける部活を創りたい。


だそうだ。

俺はそんなに憧れる程の存在じゃ無い気がするんだけどな。

だってそうだろ。

卑屈だし、根っから腐っているんだぞ俺は。

ただ目の前の事を少しずつ自分なりに変えているだけだ。


「.....」


夕食後、直ぐに俺は二階に上がり。

自室で寝っ転がり足利にメッセージを打った。

内容としては、何故そうまでして部活を創りたいんだ?、と、だ。

すると足利からメッセージが来た。


(私は先輩が好きです。それから卑屈ですけど理論は正しい点に憧れています。だから私は.....部活を創って人を助けたいんです)


そのメッセージに俺は.....眉を顰めた。

そんなに俺は憧れる存在なのだろうか。

あの昔の事を思い出す度にそんな良い人間じゃ無いと思ってしまう。

俺は本当にクソだから。


(足利。俺としては.....部活を創るのは大変だと思うぞ)


(はい。分かっています。なので先輩。私を助けてくれませんか)


(.....昔の馴染みとして助けてやっても良いが.....本当に大変だと思うが)


(はい)


覚悟している様だった。

俺は、じゃあ俺は何も言わん、とメッセージを飛ばす。

それから手伝えるだけ手伝うよ、とメッセージを送ってみる。

足利は、ありがとうございます!、とメッセージをくれた。


「.....」


昔の記憶。

懐かしい記憶と.....嫌な記憶が蘇るな。

どういう嫌な記憶かって?

そうだな.....裏切りと.....血みどろのイジメ。

そんな記憶が、だ。


(.....足利)


(はい)


(.....昔の俺は良いやつだったか)


(え?それはどういう?)


何故、そんなメッセージを送ったのかは分からない。

だけど足利に聞いてみたくなったのだ。

俺の昔の事を、だ。

すると足利は直ぐにメッセージをくれた。


(先輩は不思議な人でした。だけど.....言った事は必ず貫き通す。そんな先輩です)


「.....」


(だから先輩には色々な人が寄って来るんですよ。先輩。良い加減に気付いたらどうですか)


「.....」


俺は.....本当に良い奴なのだろうか。

足利は俺を称賛しているが.....。

俺は.....溜息を吐いて起き上がる。

そして棚に有る、小学校の卒業アルバムを取り出した。


「.....やっぱりねじ曲がっているな」


顔も.....クラスメイトとの距離も、だ。

一人だけ笑顔じゃ無いのだ。

全部が.....ねじ曲がっている気がする。

俺は.....苦笑しながら見つめる。


「.....」


駄目だな。

やはり卑屈な感じしか思えない。

何故.....俺はこんな卑屈になったんだろうか。

思い出すは昔の記憶。

あの女に裏切られた時から、だ。


「.....止め止め。もう嫌な記憶しか蘇らない」


そしてアルバムを閉じた。

それから.....足利にメッセージを送る。

お前に言われて昔の俺を見たけど.....やっぱ卑屈だな。

と、だ。


(先輩。でも卑屈でも先輩は憧れです)


(.....お前だけだ。そう言うのは)


(いいえ。そうは思いません。糸玉先輩も.....飯山先輩も.....皆んな先輩を支えたいって思っています。先輩。先輩が思っているより世界は明るいんですよ)


「.....足利.....」


全く。

気が狂わされる。

どいつもコイツも、だ。

思いながら.....再び盛大に溜息を吐いた。

それから.....ベッドに腰掛ける。


(足利。お前と出会えて良かった。そして.....糸玉とも、皆んなとも)


(.....はい。私もです。先輩に出会えて光栄です)


正直言って.....世界が変わったかは今だに分からない。

俺の周りの世界は色づき始めてはいるが。

今だに俺は.....気付けていない。


馬鹿なだけかも知れない。

だけど.....今の時間は刻一刻と過ぎている。

それは変わりない。

だから俺は.....この世界にしがみ付く必要が有るのだと思う。

だけど.....皆んなに会えて良かった。


それは変わりない。

だから.....俺は.....感謝しないといけないのだろう。

葉月にも、だ。

明日は.....どんな事をしようか。

思いながら俺は.....暫く他愛ない会話を.....足利としていた。



春休みと言えば。

引き篭る事が出来る休みだ。

ああ何と素晴らしい。


今日こそは絶対に外に出ない。

思いながら俺は勉強とラノベとスマホを持った。

そして自室に篭る。


プルルルル


「.....電話も無視っと」


スマホの電源を落とした。

そして俺は素晴らしい休みを満喫する。

まさにベリービューティフルだ。

ヒャッハー!

と思っているとノックが聞こえた。


コンコン


「.....?.....葉月か」


「お兄ちゃん。電話だよ」


「.....え?」


何だよ一体と思いながら電話に出る。

その電話の主は.....足利だった。

電話の声で直ぐに分かったが.....何だよ一体。

思いながら話す。


「どうした。足利。俺は引き篭もる予定なんだが」


『電話.....無視しましたね』


「.....」


『藁人形で呪いますよ?酷いですね』


いや、別に呪うなら呪って良いが。

何と言われようが俺は絶対に家から出ないぞ。

ステイホームだ。

思いながら.....言葉を発した。


「足利。用事ならまた今度な」


『嫌です。先輩。私、今日、誕生日なんですけど外出に付き合ってくれますか』


「.....勘弁してくれ.....」


『今から先輩の家に行きます。卑屈な先輩を引き摺り出す為に』


よし分かった。

逃げるか。

俺は思いながら逃げる用意をする。

のだが、葉月が眉を顰めた。

何だ葉月、我が妹よ。


「お兄ちゃん。逃げちゃ駄目だ」


「お前は碇シンジか.....」


「逃げちゃ駄目だよお兄ちゃん。嫌な事から逃げちゃ駄目」


「.....お前は綾波レイか.....」


何だコイツ、エヴァオタクかよ。

そして逃げちゃ駄目だ、じゃないんだが葉月よ。

そんな葉月に自室の扉を押さえられ。

逃げ道が無くなった。


何で俺はこんな目に遭っているんだ神様。

俺の行いってそんなに悪かったっけ。

思いながら俺は.....盛大に溜息を吐いた。

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