三十一、遠山の金さん、糸玉の妹に再会する
水族館で色々な事を感じたり経験した。
例えばアシカの時に......虹と書いたり、糸玉に頬にキスされたり。
恥ずかしいもんだ。
それから何故.....そんな事を書いてしまったのか分からない。
だけど俺は.....虹と書きたかったのだ。
糸玉の名前を、だ。
「.....糸玉。有難うな」
「.....何が?とーくん」
「.....お前のお陰で良い経験が出来た気がする」
「.....あはは。そうだね」
その様に会話しながらアシカの会場を離れ。
俺達は葉月と友美ちゃんの待っている場所まで向かう。
葉月はこの先の3メートルぐらい離れた大水槽の前に居るらしい。
俺と糸玉は前を見て歩く。
すると.....突然に前に誰かが出てきた。
「お姉ちゃん」
「.....鈴!?」
「鈴.....!?」
糸玉虹の妹、糸玉鈴。
何でこの場所に居るんだ!
俺は驚愕に目を丸くして見る。
ニット帽と変装用の眼鏡だろうか伊達眼鏡を掛けている。
「何でこの場所に居るの!鈴!」
「.....お姉ちゃんを追い掛けて来た。心配だから」
「いや、心配って.....」
俺は額に手を添える。
すると鈴が俺の目の前にやって来た。
顔が近いんだが。
思いながら居ると.....鈴は俺をジッと見据えた。
「.....お姉ちゃんを泣かせてないですよね」
「.....俺はそんな真似はしない」
溜息を吐きながら.....俺は鈴を見る。
鈴は.....少しだけ口角を上げる。
そして.....顎に手を添えて頷いた。
「.....でもそうですね。今日見ていましたけど.....そんな事は無さそうでした」
「.....だろ。だから大丈夫だ」
俺はホッとしながら見る。
鈴はもう一度、頷いて俺を真っ直ぐに見る。
それから笑みを浮かべた。
「.....それだけじゃ無くて貴方の事、見直しました」
「.....鈴.....」
「でも風の噂なんですけど.....貴方の部屋にその、言いづらいんですけど.....え、エロ本.....部屋に有るそうですね」
「..........」
どっから聞いた。
何故知っているのだ。
俺は青ざめながら.....鈴を見る。
鈴の目からハイライトが消えた。
そして俺の胸ぐらを掴む。
「.....卑猥な人は嫌いです」
「.....そ、そうですね」
曖昧な返事が限界だった。
怖いんですけど。
貴方、尻に敷く妻か何か?
思いながら.....胸ぐらを掴まれたまま居ると。
糸玉が慌てて止めに入ってきた。
「鈴!その事はもう良いの!.....手を離してあげて」
「.....このエッチな奴の?.....分かった」
「.....お、オウ」
姉の言う事は従順な奴ですから。
助かりました。
取り敢えずは、だ。
だけど俺を黒目で見るの止めてくれ。
怖いんだがとそうしていると向こうから葉月が怒った様にやって来た。
「ちょっと!お兄ちゃん!遅い!!!!!.....ってあれ?鈴さん?」
「葉月ちゃん.....と誰?」
「.....ああ、初めましてだな。.....長谷川友美ちゃんだ」
「.....貴方に聞いていません。変態」
キッと睨む鈴様。
いや.....これはマジにキツいね。
思いながら.....俺は青ざめた。
俺は冷や汗を拭ながら.....鈴に、と、とにかく、と話す。
それから言う。
「取り敢えずお前も何か食うか。これから俺達は食事するんだが」
「.....私?.....私がお世話になっても良いんですか?変態」
「.....その変態呼ばわり止めて.....」
相当ってかかなりキツいっす。
思いながら.....額に手を添えて。
盛大に溜息を吐き。
それから俺達は.....レストランに移動して.....テーブル席に腰掛けた。
☆
「綺麗な場所ですね」
「.....そうだね。ともちゃん」
そのレストランは簡単に言うと.....明るい場所だった。
明るい場所ってのが.....窓が幾つか天井に空いており、そこにはガラスが敷き詰められている。
それから.....そこから日が差し込んでいる。
真正面もガラス張りで.....魚の模様が描かれ、目の前には海が広がっている。
俺は、落ち着く場所だな、と思った。
「.....何を注文するか、だが」
「お兄ちゃん。私はおにぎりランチが良い」
「.....私は同じ物で」
「私はパスタかな」
おう、分かった。
と呟きながら店員を呼ぶ。
そしてやって来た店員を見て相当にビビった。
何故かと言えば.....。
「.....飯山?お前何してんだ」
「それはこっちのセリフですが。バイトですよ私は。って言うか何をしているんですか?皆さん」
飯山神楽。
つまり.....俺のクラスメイトが働いていた。
俺は目を丸くしながら.....というか全員が目を丸くする。
ただ唯一.....鈴が不愉快そうに眉を顰めていた。
「.....何で神楽さんが居るんですか」
「.....鈴ちゃん。久しぶりです」
「.....」
こんな場所で対決しても仕方が無いだろう。
思いながら俺は静止した。
鈴は噛みつくのを止め、椅子に腰掛ける。
姉が酷い目に遭っていたのを知っていたのだろう。
「.....鈴。大丈夫だ。ソイツは.....昔とは違う」
「.....そうですか?簡単に人は変わりませんが」
「.....」
睨みを効かせる、鈴。
そうだな。
それは言える。
俺が経験してきたから、だ。
だけど飯山は取り敢えずは大丈夫な人間だ。
信頼はまだ余り出来ないが。
「.....でも葉月ちゃんと友美ちゃんが居るから。ね?鈴」
「.....お姉ちゃんがそう言うなら」
「.....有難う。鈴」
糸玉はお礼を言った。
鈴は落ち着いた様に腰掛ける。
まだまだ色々有りそうだが.....取り敢えずは落ち着いている。
だけど何故こんな場所でバイトをしているのだコイツは。
「.....お前、仕事.....やって良いのか?」
「.....やらないと.....アイドルは生き残れないからです」
「.....」
アイドル業界に余り詳しく無いが.....そんな感じなのか。
思いながら.....糸玉を見る。
糸玉は、そうだね。本当にトップだけだよ。アイドルだけで儲けれるのは。私も大変だったから、と呟き俯いた。
俺は、そんなもんか、と思いながら。
葉月を見て手を叩く。
「お前らの気持ちはわかるが心を明るくしてくれ。葉月が困っているから」
「あ、ごめんね.....」
「そうですね」
明るくなった、飯山と糸玉。
それから.....飯山は俺達に向く。
そして.....俺はメニューを指差す。
「取り敢えず.....注文して良いか。腹減ってんだ」
「ですね。どうぞ」
注文後、あとで私も来ます。
と飯山は再び笑みを浮かべて去って行った。
俺はそれを見送ってから.....皆んなに向く。
それから.....見つめた。
「大丈夫か。葉月、糸玉、鈴」
「.....はい」
「大丈夫です」
「うん」
皆んなそう言葉を発した。
しっかしアイドルは本当に大変なんだな。
思いつつ.....皆んなを見る。
そして息を吐いた。
それから.....外を見る。
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