二十、遠山の金さん、飯山の全ての秘密を知る

室内に入ってから。

部屋を見て驚く俺が居た。

何故かって?輝いているから、だ。

俺は目を丸くする。


「.....何だこの部屋。ピカピカじゃないか」


「そうですよ。私は埃とかゴミとかが嫌いなんで」


「.....お前の性格とは思えない」


「失礼ですね」


いや。

普通に考えたらそうだろ。

こんな汚い性格の女が?

部屋もそれなりに汚いと思ったんだが。

こんなに綺麗な和室を模している部屋とはな。


「適当に腰掛けて下さい」


「.....あ?.....ああ」


そして言われるがままに敵陣に突っ込む。

それから腰掛けた。

目の前に傷だらけのちゃぶ台が有る。


この部屋にそぐわない様なちゃぶ台だ。

新品とは到底思えない。

俺は?を浮かべて聞いた。


「.....オイ。この部屋の物ってどうなってんだ」


「.....え?あ、買った訳じゃ無いですよ。し、知り合いから貰いました。あはは」


「.....」


嘘くさいんだが。

このちゃぶ台、下手すりゃゴミの様に見えるのだ。

脚も脆く、壊れそうだ。

親戚がこんな物を渡すとは思えないな。

何か.....別に理由が有るな、多分。


「はい。お兄ちゃん。.....オムライス」


「.....いや、何でオムライス.....?お前.....俺は夕食を食わないといけないんだが」


「良いじゃ無いですか。オムライス」


「.....意味が分からん」


目の前には半熟にしたオムライス+パセリが有る。

俺は.....溜息を吐きながらオムライスを食べた。

そしてかなり仰天する。

何だこの美味さ!?


「.....お前.....料理上手なのか?」


「当たり前じゃ無いですか。私は一人暮らしなんですよ?」


「.....イメージに似合わないんだが.....」


「失礼過ぎます」


いや、割とガチに、だ。

糸玉を嫌う心無い人の飯とは思えない。

毒でも入っているかと思ったらそんな事も無い。

だとするならコイツは.....?


「お前なんであんな意地の悪い事をするんだ」


「.....!」


「心無い人とは思えないんだが。俺の経験上」


「.....それは.....」


そこまで言って。

インターフォンが鳴った。

俺は?を浮かべて玄関を見る。

するとバタバタと、はーい、と返事をした飯山。

そして玄関を開けて接客をする。


「あ、佐藤さん」


「これ、煮物作り過ぎちゃったから食べて。神楽ちゃん」


「.....」


性格が悪いとは思えないな。

俺はその光景を見ながら目の前を見据える。

一緒に出された水を飲みながら、だ。

そして目の前のベッドの床下に何か落ちている事に気が付いた。


俺は目をパチクリして取ってみる。

それから唖然とした。

これは写真だが.....え、と、だ。


なんで糸玉が写っているんだ.....ってか。

これ学校での盗撮写真の様に見えるんだがと考えていると。

飯山が戻って来ていた。

目を丸くして.....青ざめている。


「.....お、お兄ちゃん.....?何を.....」


「.....!!!!!」


写真は飯山にガバッと奪われた。

そして胸元に写真を押し当てる、飯山。

いや、ちょっと待て。

どういう事だ!?


「.....お前.....糸玉を嫌っているんじゃ無いのか?」


「き、嫌いですけど?」


「.....じゃあ何だその写真は。明らかにおかしいだろ」


「.....」


どんどん追い詰められた様に赤面していく、飯山。

これは言い逃れ出来ないんだが。

と思っていると.....飯山は盛大に溜息を吐いて言った。


「.....私は糸玉ちゃんに憧れているの」


「.....は!?」


「糸玉ちゃんは.....何時もアイドルの中心に居るの。だから.....仲良くなりたいから.....私は.....頑張ったのに.....別の方向に向いちゃって」


「.....」


話を聞いていると.....コイツはかなり重度のツンデレでは無いかと思い始めた。

と言うか.....ぶきっちょと言えるかも知れない。

俺は超盛大に溜息をまた吐いた。

それから.....飯山を見る。


「.....お前.....相当にヤバいんだが」


「な、何が」


「.....信じられないぶきっちょなんだな。お前」


「.....そ、そんな事は.....」


ぶきっちょだよ。

俺は額に手を添えながら.....話す。

本気の本気でぶきっちょだ。

思いながら.....飯山を見る。


「.....俺はお前みたいなのは初めて見た。だけど.....分かる。お前、仲良くしたいんだな?本当は糸玉と」


「.....ち、違いますが.....」


「ならなんで盗撮なんかしてんだ。つーか犯罪だぞお前」


「.....」


おっそろしいぐらいにぶきっちょで。

でも性格はそれなりに良いんだなコイツ。

改めて女子って生き物ってのは.....と思ってしまった。

飯山は困惑しながら俺と目を合わせない。


「.....俺が手配してやろうか」


「.....な、何をですか」


「.....糸玉と仲良くなれる様に」


「.....余計なお世話です!」


でもな。

お前のやり方だと周りが不幸になるぞ。

俺は思いつつ、悩み。


飯山のデコを弾いた。

痛い!と飯山は言って額を、うー、と触る。

それを見ながら言葉を発した。


「明日から頑張ろうぜ」


「.....」


「.....な?」


「.....信じても良いんですか」


言葉に、は?と俺は目をパチクリする。

すると飯山は.....言い淀み。

そしてまた言葉を大きく発した。


「信じても良いんですか!」


「!」


「.....わ、私はぶきっちょだから.....!」


言いつつ涙目になる、飯山。

俺は.....今日、何度目か分からない溜息を吐きながら。

ああ、と答えた。


こんな女の子は初めて見た。

しかし.....悪い気はしない様な.....そんな感覚だ。

そして俺達は、明日頑張ろう、と約束をして別れた。

飯山は手を振って見送ってくれる。


そんな騒動のその日だけで十年分ぐらい俺の人生を使った気がする。

そう思いながら俺は帰宅する。

そして糸玉に、何で神楽の家に行ってるの!、と怒られての翌日になった。

つうか、何で家に行ったの知ってんだよ.....。

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