十八、遠山の金さん、キス(未遂)をする

幾ら何でもやり過ぎだと思う。

思いながら.....走る。

アイツは.....何処に行ったのだろうか.....。

外に行ったのは考えにくいが.....取り敢えずは屋上に行ってみるか。


こんな事をする様な奴じゃ無かったんだがな。

俺という奴は.....だ。

だけど糸玉や足利、長谷川に接して.....俺の世界が少しだけ変わってきている。

たった一人の女の子の為に.....俺は駆けている。


目の前に屋上の扉が見えた。

俺はドアノブを捻ってから扉を開ける。

そして.....俺は目の前を見た。


そこには涙を流していて遠くを見ている糸玉が居た。

俺はその姿を見ながら.....少しだけ複雑な思いで一歩を踏み出す。

その事に糸玉はビクッと反応した。


「糸玉」


「.....あ.....な、何?とーくん」


「.....大丈夫か」


つい、その様な言葉が出た。

すると.....糸玉は首を振ってニコッと歯を見せる。

俺はその姿を見ながら同じ様に手すりに腕を添えながら外を見る。

糸玉は俺に向いてきた。


「大丈夫だよ?私は.....」


「.....そうか。.....それは大丈夫じゃ無いけどな」


「.....?」


「これまでの俺の経験上から言って.....いや。俺じゃなくても分かる。お前は.....大丈夫じゃ無い」


糸玉はゆっくりと俯く。

俺は糸玉を見据えた。

そして.....思った言葉を発する。

その言葉を、だ。


「.....何を言われたんだ。アイツに。.....話してくれ」


「.....えっとね.....うん」


そう言ってから号泣し始めた糸玉。

俺は愕然としながら.....見つめる。

そして.....涙を流しながら俺にぐちゃぐちゃな顔を見せた。


私が、無能、だって.....言われたの。

そんな貴方は遠山くんと釣り合わないって言われた.....と話す。

静かに聞くが.....嫌気が差してくる言葉ばかりだった。

俺は拳を握り締める。


「.....何だってそんな言葉を.....」


思いながら居ると。

背後から声がしてきた。

俺と糸玉はビクッと反応する。

そして振り返ると.....。


「それはね。私は糸玉ちゃんが嫌いだから」


「.....それで友達の様に馴れ合うお前は何なんだ」


「.....私は糸玉ちゃんが嫌いだけど、からかいごたえが有るからね〜」


コイツ.....何を言っているんだ。

流石にカッとなってしまう。

そして、オイ!、と胸ぐらを掴む為に詰め寄ろうとする。


その後ろに振った腕を糸玉が掴んだ。

止めて.....大丈夫だから、と、だ。

俺は.....その事に唇を噛む。


「糸玉ちゃん。私はアイドルのセンター付近に居る貴方を妬んでいる。だから貴方の周りは全て壊す事にしたの」


「.....お前.....!」


「糸玉ちゃんに彼氏?そんなもの要らないと思うしね」


「.....」


コイツと話していると頭がおかしくなりそうだ。

思いつつ、糸玉を見る。

糸玉は悲しげな顔をしていた。

俺は.....その糸玉を見てから.....飯山に向く。


「.....調子に乗り過ぎだと思うが」


「え?そうかな」


「.....すまないが俺はお前が嫌いだ。慣れ合いたくも無い」


「そう?じゃあ好きになってもらうよ」


好きになる訳無いだろ。

俺は眉を顰めて糸玉の手を引いた。

この場所から離れようと思いながら、だ。

糸玉は驚きながら俺を見る。


「糸玉。もう良い。行こう」


「.....でも.....」


「アイツは.....もう変わらない。チャンスは無い」


「.....」


あれれ?行っちゃうの?と飯山が寄って来る。

俺はそれを無視で糸玉を連れて行く。

この場所は吐き気がする。

何時もならそうは感じないが今日は嫌気が差した。

嫌な奴が現れるだけでこんなにも変わるもんなんだなと思ってしまう。


俺は過去を思い出した。

過去で.....虐められていた時の記憶を。

その.....記憶で頭が少しだけ.....強迫観念に囚われた。



「.....有難う」


「.....何がだ」


「.....私一人だったら心折れてたよ。君が来てくれたから.....」


結局、六時限目は間に合わずサボる事になり。

俺達は人目を盗んで中庭で話をしていた。

糸玉は.....涙を拭ながら俺を見る。

やっぱり好きだよ、君の事、と言う。

俺はその言葉を受けつつ、聞いた。


「.....なんで飯山はあんなに歪んでいるんだ?」


「.....彼女は私と同じチームだった。だけど.....ある日に辞めて別の事務所に入ったの。それから.....おかしくなったんだよね」


「.....」


正直、飯山の居る教室に戻りたく無い。

だけど戻らないといけない。

どうしたものか、と思いながら.....顎に手を添える。


今まで色々な事を乗り越えたが今度は.....と思う。

そう思っていると糸玉が俺の肩に頭を置いた。

お、おい、と俺は言う。

その言葉に糸玉は赤面しながら答える。


「.....このままで.....居させて」


「.....ハァ.....。.....まぁ仕方が無いな」


すると糸玉は過去のアイドルになる前の話をし始めた。

路上ライブで批判を浴びた事、上司にセクハラを受けた事。

そして.....メンバー同士にイジメも受けた事。

それらの苦労などを、だ。


「私はアイドルを続ける必要、有るのかな」


「.....正直、俺はお前の人生には触れられない。だからお前自身が.....考えていく必要が有る。俺は手助けしか出来ないから」


「.....だね。有難うね。大好きだよ、とーくん」


「.....」


すると横に糸玉の顔が有った。

俺は驚愕しながら見る。

糸玉も少しだけ赤面しながらも、良い、という感じで居た。

このままキスをしても良い、的な感じで、だ。


「お、おい.....」


「.....」


そして俺はなすがままにキスを.....と思ったが。

校内放送の音が鳴った。

その音に俺達は仰反って離れる。


「えっと.....ご、ごめん。気が動転してた」


「い、いや。俺もだ。すまん」


そして耳をすます。

その校内放送とは.....俺達を探している先生の声だった。

俺と糸玉は顔を見合わせる。

そして.....行くか、と言う。


「.....とーくん。.....ね。今度、また続きをしようね」


「.....しないっつーの.....」


「あはは」


糸玉はそれなりに気持ちが回復した様だ。

俺はそれを見て安心する。

その後、教室に戻り俺達はこっぴどく叱られた。


生徒指導部の先生達に、で有る。

ずっと探していた様だった。

飯山も怒られた様だ。


だけどこれで全ては終わりじゃ無かった。

その後に.....飯山の信じられない秘密が判明する。

それは.....予想外の秘密であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る