十四、遠山の金さん、足利を追う

足利とはそう仲が良い訳じゃ無い。

俺の小学校時代の後輩だが小学校時代に話をした覚えは、ほぼ無い。

のに、何故か好きと言われた。

俺は多少の理不尽さが有りながらそれでも妹に背中を押されてしまったので仕方が無く足利の元へ向かう。


足利が居たのは某有名カフェの下。

そこに立っていた。

俺は足利の元へむか.....った?

驚愕して見開く。

コイツは本当に足利か?と思ってしまった。


「.....何だその茶色のツインテールは」


「先輩が好きかと思って」


「.....いや、ツインテールとか.....一瞬、誰かと思ったんだが?」


でも先輩、ニヤけてますよね。

と、勝ち誇った様に笑みを浮かべた足利。

そして八重歯を見せる。

コイツには八重歯が有るのか。

可愛らしい笑みだが.....。


「ね、先輩。この服どうですか?」


「.....可愛いんじゃ無いか?」


服装としてはカジュアル系のスカートが似合う服装。

俺はそんな服装をマジマジと見るつもりも無く目を逸らす。

何でかって?

顔が近い。

何を期待してんだコイツは。


「.....ありきたりですね。まあ良いでしょう。それじゃ行きましょうか」


「.....それは良いんだがお前.....俺の妹に何か仕込んだか?」


「何の話でしょうか?」


「.....オイ」


ニヒヒと言いながらスカートを翻した、足利。

絶対にコイツは何かを仕込んだな.....。

思いながら.....歩く。

まさかこの俺がデートをするとは.....。

そう思っていると.....足利が俺を見てきた。


「.....ところで先輩。糸玉先輩の事は.....それなりに愛しているんですか?」


「.....何故それを質問する」


「.....糸玉先輩に対抗する為ですよ。事前情報を得る為です」


「.....お前の性格って.....何か嫌だな.....」


え?何処がですか?

と知った様にすっとぼける足利。

もう良いや.....と呟きながら額に手を当てて盛大に溜息を吐いた。

それから.....それはそうと早く行きましょう、と手を引かれる。


「.....」


その際に.....頭に一瞬だけ何故か糸玉の悲しげな顔が過った。

俺は?を浮かべながら.....切符を買う。

ってか何処に行く気だコイツは。

思いながら足利に聞いてみる。


「おい。何処に行くんだ。遠出は嫌だぞ」


「そんな事言ったら彼女出来ませんよ。遠出します」


「.....ハァ.....」


ボッチだったんだぞ俺は。

面倒臭い。

と思いながら.....見つめる。

すると.....足利は、うーん、と顎に手を添える。

それからこれだけなら言っても良いかな、とニコッとした。


「遊園地ですよ。この近所に出来た二駅先の遊園地に行きます」


「.....嘘だろお前.....」


「何でそんなに疲れているんですか。失礼ですね」


「当たり前だろ。俺の体力を舐めんな」


全くコイツは.....と思いながら。

列車に乗り込んだ。

何でこんな目に俺は遭っているのだろうか。

そして.....何故、糸玉の悲しげな顔が浮かんだのだろう。

思いながら.....列車に揺られる。



「わー!!!!!デッカイですね!」


「.....人混みが嫌いなんだが」


「もー!良い加減に気を上げて下さい!」


はしゃぐ足利を他所に人が多すぎると思った俺。

まさに開店したばかりの遊園地って感じだな。

思いつつ人酔いする俺は頭に手を添えた。

マジに.....人が多い。


「何から乗ります!?」


「.....お前が好きな物に乗れ。俺は知らん」


「もー!!!!!先輩!」


何だよウルセェな。

思いながら.....目の前を見ると。

遠くの方に長谷川の様な奴がいる事に気が付いた。

忘れていたがアイツもリア充だったな.....。

面倒臭いな.....と無視でスルーして足利に付いて行く。


「で、何をする」


「ジェットコースターに乗りましょう!」


「マジかオメェ......」


ジェットコースターとか三年ぶりぐらいなんだが。

何か.....色々と考えたく無いな。

思いつつ.....溜息を盛大に吐いた。


そしてジェットコースターに乗る為にチケットを買う。

それから乗り込み安全ベルトが降りて来ての発車しようとした時だ。

足利がニコッとしながら呟いた。


「.....先輩」


「.....何だ」


「私ですね考え.....」


それ以上は聞けなかった。

何故かと言えばゆっくりと動くジェットコースターに気を取られたから。

足利は首を振って、ニコニコする。

何を言い掛けたんだコイツはと思ったその時。

ジェットコースターが急落した。


「うおおおお!!!!!」


「ひゃー!!!!!」


そして記憶が飛んだ。

足利が何を言い掛けたかも忘れる程に、だ。

だけどその答えは直ぐに分かる事になる。

二時間ぐらい遊んでから観覧車に乗った時に、だ。



「先輩。最後に観覧車に乗りましょう」


上に上がって落ちるアトラクションとか乗りまくった。

本気でコイツは元気だな、と思いながら.....俺は盛大に溜息を再び吐きながらチケットを購入。

それから.....観覧車に乗り込んだ。


そして上がり始めた時に聞く。

さっきの言葉を、だ。

最後って何だろう。


「最後って言ったけど.....俺に配慮しているのかお前」


「.....配慮ですか?して無いですよ?」


「じゃあもう帰るのか。お前?」


「.....」


そこで押し黙った足利。

それから.....悲しげな顔で俺を見た。

泣きそうな顔で有る。

俺は?を浮かべて.....見開く。


「先輩。私と一緒に居て楽しいですか」


「.....楽しいかは別として.....」


「私と一緒にデートは楽しめてますか」


「いや、オイ。何でそんな.....」


いきなり何でそんな言葉が出る。

よく見ると足利は真剣な顔をしている。

何だコイツ。

一体何故、そんな事を聞いてくるのだ。

思っていると.....足利は、私じゃ無理か、と呟いた。


「.....先輩。貴方はきっと糸玉先輩が心配なんですよ」


「.....え?どういう.....」


「私、貴方の気を引こうとしたんです。でも.....貴方の心までは変えれなかった。貴方はきっと.....糸玉先輩が気になるんです」


思いっきり見開いた。

は?

観覧車は下に降り始める中、俺は。

足利をずっと見つめていた。


「.....私にキス.....出来ますか?今ここで」


「.....出来る訳無いだろ。キスってどれだけ重要か分かるだろ。ファーストキスってのは.....大切だぞ」


「そうですか。分かりました」


何を分かったのかは分からないが。

確実に変わった。

何かが今、この瞬間に、だ。

思いながら.....足利、と呼ぼうとしたが。

彼女は、すいません帰ります、と駆け出して行った。


「足利!!!!!」


「追って来ないで下さい!!!!!」


そして凄い勢いで足利は人混みに.....まるでインクを水に一滴を落とす様にスッと消えて行った。

俺は必死に追い掛けるが人が邪魔で追えない。

クソッタレ.....と思いながら。

周りを見渡す。


今の足利が行きそうな場所と言えば.....人が居ない場所だろう。

思いながら回り道をする為に.....遊園地を後にした。



グスグスと足利の声がするビルの隙間、遊園地から10メートルぐらい離れた場所に人が来なさそうな路地裏を見つけた。

俺は.....その声を聞きながら声を掛けずに居ると。

お?可愛い子ちゃんはっけーん、と男達の声がした。


「.....?」


な、何ですか?と足利が驚く。

男達の声が足利に迫っている様な感じだ。

するとその声はやがて危機迫る声に変わった。

止めて.....という感じの。

俺は慌てて飛び出した。


「足利!」


見ると足利は腕を掴まれて涙目になっていた。

え、せ、先輩!?という感じの声を発する。

それからそのか細い腕を掴んでいる目の前、あ?、という感じの筋肉質な男共が三人ほど立っていた。

俺はゾッとして.....身を引きたくなったが。


「.....離せコラ。その子は俺の知り合いなんだ」


「.....誰に向かって言ってんだ。このヒョロガリ」


しまった.....と思う。

それから、マズい、と思いながら冷や汗をかいた。

これは分が悪すぎる。

思いながら.....居ると男の一人が俺の前に立った。

身長的には180は有りそうな感じの、だ。


「お前、彼氏か?お前みたいなのが、か?」


相手共は大笑いする。

俺は.....汗をかきながら.....見つめていると。

じゃあ今からお前の彼女は俺達のもので、と言葉を発して。


足利の胸元を引きちぎって開けた。

小さく悲鳴を上げる、足利。

俺は愕然とする。

ここまでするのかコイツら!!!!!


「案外、大人っぽいじゃねーか。ハハハ」


「お前らぁ!!!!!」


流石の俺も、その行動で思考も何もかもが吹っ飛び。

ブチキレた。

そして一歩を踏み出して男共にパンチしようとする。

が、凄まじい勢いで顔を殴られた。

二回目と言えど結構、効くパンチに倒れる。


「せ、せんぱ.....むぐ!」


「黙ってな。かわい子ちゃん。そしてアンタに警察呼ばれるとめんどいから」


「.....!」


今の一発で脳震盪でも起こったかも知れない。

と、地面にヨタヨタと這いつくばって考える。

駄目だ、このままじゃ。

足利を助けないと、と思うが.....。


と考えていると路地裏から誰かが出て来て前に立った。

その後ろ姿は見た事の有る様な、と思うが.....ヤバイ。

それ以前に意識が.....。


「お前ら。俺のクラスメイトに何してくれてんだ?」


長谷川の声に聞こえる。

でも幻聴だよな。

遊園地から.....離れたこの場所に居る訳無い.....と思いながら俺の意識は薄れた。

そして気絶してしまい.....。

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