十一、遠山の金さん、告白される

うちのクラスは異常なまでに強かった。

サッカー部やラグビー部に野球部と勢揃いな点が問題か。

俺は唖然としながら.....コートの後ろの方でサッカーの様子を見守っていた。

無茶苦茶に疲れたので、だ。


しかしゴールに次から次にサッカーボールを打ち込み。

そして決勝戦まで進んだ。

俺とクラスメイトは結局、最後の最後までサッカーをする羽目になった。

決勝戦も後ろで一人で居よう。

思いながら.....休憩時間にコートを眺めていた。


「先輩」


「.....おう.....って.....何だ。足利」


体操服の土を払っていると背後から足利が声を掛けてきた。

俺は?を浮かべながら.....足利を見る。

足利はニコッとしながら俺を見ていた。

コイツ.....って言うか糸玉以外の女子と話すのは苦手なんだが。


「先輩の姿、見ましたよー。格好良かったです。でもやっぱり先輩らしいですね。背後に居て何もしないのが。あはは」


「喧しいっての。俺はボールを追いたくないしそもそも俺の活躍する場は無い」


「でもそれでも裏方で色々と活躍しているって聞いてます。流石、先輩です」


「.....それは褒めすぎだ。そんなに頑張って無い」


ただ単に選手の体調を見たり走って書類を取って来たりしているだけだしな。

水筒の水を飲みながら.....コートを見る。

すると足利が横に腰掛けた。

胸が大きいもんだから胸元が見えて赤面する。


「アレェ?先輩、何処を見ているんですかぁ?」


「.....お前.....態とやっているな?」


「当たり前じゃ無いですか。誘惑ですよ、誘惑」


誘惑って。

何で俺なんかを誘惑するんだ。

思いながら.....居ると腕に足利が腕を絡めてきた。

それからニコッとする。

俺は驚きながら見つめる。


「先輩。先輩って.....女性と付き合っているんですか?」


吐息を掛けてくる。

何だコイツ!?

周りの男子が恨めしそうに見てくる中、足利は構わず続ける。

何をしているんだコイツは!


「付き合って無いんだが.....って言うかそれをお前に知らせてどうするんだ?意味が分からないんだが.....ってか離せ!」


「でも先輩、糸玉先輩と付き合っている様に見えるんですけど。糸玉先輩って確かにスタイルも顔も良いですよね」


「だから何だ。離せよ」


えっと、離します。

その前に糸玉先輩と付き合って無いんですよね?

じゃあ先輩、私と付き合って下さい。

と言っ.....ハァ!!!!?

俺は驚愕して足利を見つめる。


「私、先輩が好きですから」


「.....!!!!?......!!!!!」


「駄目ですか?」


「確かに法則的には俺は糸玉と付き合ってなくて駄目じゃねーけど.....でも駄目だ。お前とは付き合う気は無い」


え?何でですか?と目を丸くする足利。

何でって言われたら.....困るのだが。

俺は必死に頭を回転させる。

すると頬を思いっきり膨らませて足利は言った。


「何でですか?付き合って無いんですよね?じゃあ.....」


「だから付き合えというのはおかしいだろ。確かにお前が俺を好きなのは嬉しいが俺は.....今の糸玉とのこの絶妙な距離を保ちたいんだ。お前と付き合ったら壊れるしな。その距離が」


「.....へぇ.....ふーん.....そうですか」


足利は怒りながら立ち上がる。

それからベッと舌を出してから、先輩のバーカ、と言って去って行った。

俺はその後ろ姿を見送る。


何だかなぁ。

惜しいと言えば惜しいのだが。

何で告白をキャンセルしたのだろうか、俺は。

思っている遠くから糸玉が歩いて来た。

ちょうど、足利が去って行った方向を辿る様に、だ。


「.....東次郎くん」


「.....どうした。糸玉」


「.....有難う」


は?

俺は目をパチクリしながら糸玉を見る。

糸玉は泣きそうな顔をしていた。

だけど俺の様子に花が咲く様な笑顔を見せる。

俺は???を浮かべながら見る。


「あ.....お前、まさか.....今の聞いていたのか?」


「うん。そうだよ」


「.....マジかよ.....」


額に手を添えながら.....溜息を吐く。

あんな恥ずかしいものを見られたのか.....と気を落とす。

そうしていると糸玉が赤くなりながら俺に向いた。

それから笑みを浮かべて俺に話す。


「ね?.....君の事これから、とーくん、って呼んで良い?」


「.....いや、とーくんって.....お前.....それは流石に」


「大好きだよ。とーくん」


俺の答えも無視でそう言葉を発した。

答える暇をくれ。

少しだけ赤面しながら俺は前を.....向く。

その際に頭に何か稲妻でも走ったかの様な記憶の感覚に陥った。


『とーくん!』


「.....え.....?」


何だ今のは。

横で、どうしたの?、と見つめている糸玉に、いや、と答える。

本当に一瞬だったが.....。

俺はクエスチョンマークを浮かべて頭に触ったが詳しく考える暇も無く。

そのまま決勝戦が始まってしまった。

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