十、遠山の金さん、クラスが決勝戦に王手を掛ける

球技大会は話が進んでいき。

取り敢えずは俺は面倒事に巻き込まれていない。

そして糸玉も、だ。


俺は水に流される様にあっちこっちを行ったり来たり。

そしてサッカーにも参加。

うちのクラスは決勝戦手前まで進んだ。


「ハァハァ.....」


無茶苦茶に疲れるなこれ。

思いながら......十二時の太陽を見ながら俺達は昼飯の休憩に入った。

腰掛けながらパンを取り出す。


もう泥だらけ所じゃ無いぐらいに汚れている。

こんなに頑張っているのは久々じゃ無いかと思うが。

その様に考えながら居ると糸玉がやって来た。

手には弁当箱が二つ有る。

俺は?を浮かべながら見る。


「そんなに偏った食事だと体に悪いよ。東次郎くん」


「まさかと思うがそれは俺のか」


「だよ。それ以外に何が有るの?」


当たり前の様に言うな。

結構恥ずかしいんだがと思いながら横に座る糸玉を見る。

糸玉はニコニコしながら弁当を俺に渡してくる。

これじゃ愛妻弁当の様に見えるんだが。


「愛妻弁当だね。あはは」


「.....お前を妻に貰った憶えは無い」


「かったいなぁもう。あはは」


「.....固いのが俺だからな」


でもお礼は言おう。

有難う、と言いながら俺は弁当箱を開ける。

塩シャケがメインの弁当の様だ。

それ以外にも煮物とか卵焼きとか色々有る。

俺は、すげぇなこれ、と糸玉を見る。


「お前、なんでも作れるのか」


「何でも、は無理だよ。外国のとかは実際無理だしね。あはは」


「.....日本の料理が作れれば良いじゃねーか。俺は何も作れない」


「あはは」


優しげな笑み。

俺は息を吐きながら弁当を摘む。

そして食べていると.....横で糸玉がモジモジしていた。

なんだコイツ.....?


「口開けて」


「.....は?何がしたい」


「何がしたいって、あーん、だよ」


「お前?!こんなに生徒が居るのにか!バカタレかお前は!」


背後でも生徒が居るのによ。

前にも、死ね、って感じで男子生徒がメッセージ送って来ているし。

勘弁してくれマジでと思ったが。

してくれないの?と悲しげな顔を糸玉は浮かべた。


「.....ずるいぞお前」


「.....じゃあやってくれる?」


「.....ハァ.....」


なんかもうストレスで寿命縮みそうだ。

勘弁して欲しいんだが。

思いながら.....口を開いて卵焼きを突っ込んでもらった。

糸玉は笑顔で言葉を発する。


「美味しい?」


「美味いけど.....恥ずかし過ぎて味がしない」


「あはは。私も恥ずかしい」


「やるなよ.....じゃあ.....」


お前も恥ずかしいならやるなよ。

思いながら.....額に手を添えた。

そうしながら俺は聞いてみる。

今の球技大会の事を、だ。


「大会の運営は上手くいっているか」


「いっているよ。私、こういうのは得意だからね」


「へぇ.....そうなのか」


「得意って言うか.....ちょっと違うかも。上手にやれる、って感じかな」


昔はこんな感じじゃ無かったけどね。

あはは、と昔を思い出す様に.....黄昏る糸玉。

俺は?を浮かべながらも敢えて聞かない事にした。

そうしていると背後から声が。


「遠山」


「.....ああ、長谷川か。どうした」


「いや、お前ら本当に仲が良いなって思ってな。悪い。話し掛けるつもりじゃなかったんだが、つい、な」


長谷川は笑みを浮かべる。

イケメンスマイルだ。

俺は.....別に構わない、と言いながら目線をずらした。

やり辛いんだよなコイツ。

リア充だから。


「長谷川くんはお弁当食べたの?」


「ああ。俺は.....まあ学食な感じだ」


サッカー部員で食って来たと言う。

お、おう。

流石はリア充だな。

思いながら.....よっこらしょと腰掛けた長谷川を見る。


「遠山は頑張ってるぜ。かなりな」


「.....だから俺は玉を追っかけているだけだっつの」


「そう言うな。頑張っているんだから」


長谷川はバンダナを取りながら苦笑する。

俺は前を見ながら.....そんなもんかね、と思う。

すると糸玉が穏やかに俺を見ていた。


「.....そうなんだね。流石は東次郎くんだね」


「.....ただ追っているだけなんだけどな」


苦笑いを浮かべながら....コートを見る。

サッカーコートでは遊んでいる体力の有り余った奴らが見える。

俺はそれを確認して長谷川を見た。

長谷川はコートを見ながら俺に聞く。


「委員としての仕事は頑張っているか」


「.....当たり前だ。途中でほっぽりだすのは俺の主義に反するからな」


「.....そうか」


するとコートから長谷川を呼ぶ声がした。

長谷川はそれに答えながら、またな、と去って行く。

俺はそれを見送ってから糸玉を見た。

食事が止まったままだったな、そういや。


「やっぱり君は格好良いね。とーくん」


小さく、何か呟いた。

俺は?を浮かべながら聞く。

だが糸玉は、ううん、と首を振ってから。

さ、ご飯食べよ、と満面の笑顔で言ってきた。

俺は首を傾げながら飯を食う。


そして午後の時間になり。

午後の部が始まった。

決勝戦などが始まるのだが。


予定表では女子は俺達、男子より二十分前に終わる様で有る。

羨ましいな。

とっととサッカーが終わって欲しいもんだ。

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