九、遠山の金さん、小学校時代の後輩に会う

球技大会、女子はバレー、男子はサッカー。

基本スローガン、皆んなと一致団結、という事らしいが。

俺にとってはマジにどうでも良い。

そして関わりたくも無い。


思いながら俺は少し疲れたので休憩していた。

今、俺はベンチ入りしている。

つまり、暇。

邪魔と言われたのでそうだな、とサッカーコートから出た。

なので今は俺は寝そべって休んでいる。


因みに長谷川とかはそういう奴らは皆んな活躍している。

モブの俺はこんな感じだ。

まあどうでも良いけど。

しかし.....と思いながら体育館を見る。


上手くいってんのかね、あっちは。

思いながら盛大に欠伸をしつつ体育館を見る。

すると.....向こうの方から女子生徒が歩いて来た。

俺はそれを見ながらもう一度、欠伸をして寝転がる。


「.....上手くいってんならそれで良いかな。寝るか.....」


と思っているとさっき見掛けた女子生徒が俺を覗き込んで.....え?

何だコイツ!!!!?

思いながら見つめる。

するとその女子生徒は、あ、やっぱり先輩だ。

と笑った。


「.....誰だお前。ビックリするだろうが」


靴のラインを見るなり、緑なので一年だが。

俺に何の用だコイツ。

いきなり覗き込まれたら驚愕するから。

思いながら睨む。

ズボンに体操服で茶髪のその少女はキョトンとしていた。


「え?先輩、私の事、忘れたんですか?ほら、小学校の時に.....」


「.....小学校の時は覚えて無いんだが。俺には悲惨な記憶しか無い」


「あ、あはは.....。えっと.....私ですよ。嫌な記憶を呼び起こしてすいません。足利美帆(アシカガミホ)です」


「.....足利美帆.....って.....」


小学校時代に確か.....委員会で一緒だった奴じゃねーか。

ってかあくまでそれだけなんだが。

それで俺を覚えているなんてどういう事だ。

たったそれだけで声を掛けてくるっておかしいんじゃ無いか?


「.....お前、何でそれだけの事で俺に声を?」


「.....いや、先輩、言っていたのが結構姑息な卑怯な行動とか意見だったから.....覚えていたんですよ」


「.....卑怯な意見.....ああ.....」


当時だが俺は.....確かに卑屈な意見をしていた。

どういう話かって?

そうだな、例えばの話だが俺は役に立たないから取り敢えず人任せ。

そんな感じの野郎だったのだ。

だから覚えられたんだな.....コイツに。


「.....懐かしいな」


「.....懐かしいですけど本当に全ての行為がゲスでしたね。先輩」


「うるせぇわ。アホンダラ」


「.....でもそんな先輩でも必死に頑張っていたんですから。認めてますよ。私、再会を嬉しく思ってますよ」


足利はそう言葉を発した。

そして笑みを浮かべる。

足利は容姿も女の子として目が大きくて、眉毛も細くて。


スタイルまで女の子に成長しているので少しだけ赤面した。

顔立ちまで美人になってやがるし。

俺は頬を掻く。


「美帆ー?行くよー?」


他の女子生徒が足利を呼んだ。

足利はそれに返事をしながら、じゃあ先輩また、と去って行った。

俺は溜息を交えながらその挨拶に手を挙げる。


それからまた横になろうとして.....目の前を見たら。

そこに何故か.....糸玉が立っていた。

鬼の形相で、だ。


「.....誰かな?」


冷や汗が噴き出た。

俺は.....無罪ですよ?と言う感じの目線を送る。

それから必死に説明した。

取り敢えず、ヤバイ。


「.....落ち着け。糸玉」


「.....浮気じゃ無いよね?あはは」


「.....そ、そうだね」


何で俺はこんな目に。

思いながら額に手を添える。

本当に今日は色々な事が起こるな.....と思う。

いや割とマジに、だ。

殺される。


「.....あの女の子、可愛かったね?あははは」


「.....そ、そうですね」


なんか糸玉に対して胃が痛いんだが。

誰か収めて下さいって感じだ。

俺はまた盛大に溜息を吐く。

それから.....糸玉に全てを説明した。



「ふーん。じゃああの娘は後輩なんだね?それだけだね?」


「だからそう言っているだろ。お前.....」


「怪しいなぁ。仲良かったしね」


糸玉はジッと俺をジト目で見る。

勘弁してくれ。

考えながら.....糸玉を見る。

そんなんじゃ無いっての.....。


「.....でも東次郎くんだからね。嘘は吐かないか。あはは」


ようやっと誤解が解けたようだ。

俺は額に手を添える。

って言うか.....今は暇なのかコイツは。

思い、聞いてみる。


「お前、休みなのか?」


「休みだよ。休憩だね。それで東次郎くんを探しに来たら.....ね?」


あはは、と怒りの声が詰まった様に笑う糸玉。

コイツ.....ヤンデレに近いなこれ。

思いながら.....盛大に溜息をもう何回目か分からないが吐いた。

居心地悪いな。


「.....でも東次郎くんも頑張ってるよね。サッカー」


「.....見てたのか?」


「見てたよ。格好良かった」


ニコニコする、糸玉。

俺は少しだけ赤くなりながら頬を掻く。

小っ恥ずかしい事を.....ってかゴールまで追っていただけだぞ。

思いながら.....糸玉を見る。


「.....やっぱり好きな人がスポーツをしている姿って良いよね。私、好き」


「.....そうか」


その答えを聞いてから、よしっ、と立ち上がる糸玉。

それから俺を見てきた。

じゃあ戻るね、と言いながら、だ。

それから糸玉は指差してくる。


「浮気は駄目だからね」


「.....浮気じゃねーよ.....」


「あはは。じゃあね」


全くどいつもコイツも.....。

そう頭で思いながら額に手を添えた。

俺の幸せゲージって0になったんじゃねーか?

溜息ばかりだしな.....最近。


「.....よし、戻るか」


俺はポツリと言ってから立ち上がる。

それからケツを叩いて土と草を落として。

サッカーコートまで戻った。

取り敢えずは面倒な事が何も起こらない事を祈りながら、だ。

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