三、遠山の金さん、自宅に幼馴染?が来る

俺の名前は遠山。

遠山の金さんとか言われ名前を弄られるボッチだ。

ボッチ故に俺には女性の知り合いも女性の友達も居ない。

簡単に言っちまうと俺には老若男女の親しい知り合いは居ないのだ。


その筈なのだが俺を、幼馴染だよ!、とか言いながら。

俺が好きだと話した女の子が居る。

当然だが俺にそんな知り合いは居ない筈であると思うのだが。


「東次郎くん。一緒に帰ろう」


唐突に放課後、糸玉にそう言われた。

女子と仲良くしていた筈なのだが。

教室でその様に笑みを浮かべながら俺をマジマジと見てくる。

マジかコイツ.....。

俺は額に手を当てて盛大に溜息を吐いた。

周りを見ると、お前マジに殺したろか?、的な顔をした男子生徒が居る。

マジに勘弁してくれ。


「.....配慮してくれよ.....万が一、俺がお前と一緒に帰ったら殺される」


「え?何で?」


「え?何で?じゃ無いんだが.....本気で一緒に帰る気だったのか?マジ?」


マジだよと笑顔。

コイツ.....と思いながら反論しようとしたが。

教室で注目を集めていたので俺は何も言わず立ち上がる。

それから静かに帰り出した。

音を立てない様に。


その後ろからテトテトと音を鳴らす様に糸玉が追って来る。

マジにこれから一緒に帰る気の様だ。

勘弁してくれ.....。


「東次郎くん。帰宅は電車?それとも徒歩か自転車?」


「.....何故お前にそれを知らさないといけない。アホか」


「だって一緒に帰るんだから」


お前.....。

コイツ、周りに対する配慮だけはマジに欠けているな。

俺は盛大に溜息を吐きながら勝手にしろと言いつつ歩く。

徒歩なんだね、と嬉しそうに付いて来る。


「.....あ、私ね、この地区の3丁目に住んでいるよ」


「.....だから何だ?俺には関係無いだろ」


「自宅を知っているのは幼馴染同士の特権だからね!」


ふふーんと胸を張って話す糸玉。

あのな.....。

何度も言っているが。


「.....俺は幼馴染は居ないとあれほど言っているんだが」


本当に思い出も無いし、記憶が無い。

糸玉と一緒の記憶が、だ。

だからと思っているのだが、糸玉は嬉しそうに俺を見る。


本気でコイツには気を狂わされっぱなしだな。

しかしこんなに俺を幼馴染とか言うんならコイツに記憶が有るよな?

質問してみるか。


「.....お前さ、具体的な思い出の記憶って有るのか?俺との」


「有るに決まっているよ?一日一日が大切な思い出だったからね」


「.....じゃあ具体的にどういう思い出が有るんだ?」


「.....そうだね、例えば私が.....幼稚園の頃、穴に落ちた時、東次郎くんが助けてくれた」


駄目だ、全く記憶に無い。

そもそも俺が幼稚園の頃に女の子を救った記憶なんて無い。

どうなっているのだ?

思いながら.....胸に手を当てている糸玉を見る。


「あれから私、成長して.....そうだね人前に出れたんだ」


「.....人前?」


「.....あ、内緒だよ。あはは」


人前って何だよ。

思いながらも秘密と人差し指を立てたのでまあ、それ以上は聞かない事にした。

俺は夕焼け空を見ながら.....歩く。

その横を.....糸玉が付いて来る。


「.....東次郎くんは何処に住んでいるの?」


「この地区の2丁目」


「.....あ。じゃあ近くだね。あはは。.....今から家に行って良い?」


「.....いや、冗談だろ」


冗談では言わないよ?

と柔和な顔を見せる、糸玉。

マジかコイツ.....思いながら.....盛大に溜息を再び吐く。

それから.....糸玉は自宅の有る三丁目に向かわず俺の家に付いて来た。

マジかコイツは.....。


何?寂しがり屋なの?

それともストーカーなの?

あらやだって感じなんだが。



「お帰り。お兄ちゃん。.....え!!!!?」


「.....葉月。これには訳が.....」


「お母さん!!!!!お兄ちゃんが女連れて来た!!!!!」


あのクソッタレボケナス妹!!!!!

思いながら止めに行く。

その様子を、嬉しそうに見る、糸玉。

俺は追い掛け、頬を抓りながら俺の小六の妹、遠山葉月(トオヤマハツキ)を連れて来た。


痛いよー!お兄ちゃん!と言う、葉月。

お前が悪いと言う。

そんな葉月の容姿はボブヘアー。

それから.....童顔の顔付きで大きな目でクリッとした眉。

美少女って言っても過言じゃ無いとは思うが。

俺にとっちゃただのクソガキだが。


「葉月。挨拶は?」


「.....あ、うん。初めまして!遠山葉月です!」


「宜しくね。葉月ちゃん。私は糸玉虹です」


仲が良い家族も変わって無いなと呟いた、糸玉。

俺はその言葉を受けながら.....葉月を見る。

リビングまで案内してやれと葉月に言った。

葉月は、はーい、と言いながら手を挙げながら、行こ!、と糸玉の手を引く、葉月。


「ね?虹お姉さんって呼んで良いですか?」


「勿論良いよ。私も葉月ちゃんって呼んで良い?」


「うん!」


直ぐに打ち解けた様だ。

俺はそれを見ながら.....靴を揃える。

それからリビングに行くと.....母親が座っていた。

化粧をしている.....オイ。

母さんまで!


「初めまして。遠山菜々子です。宜しくね」


「え?あ、はい.....」


「母さん.....」


この人は何をやっているのか.....と思いながら額に手を添えた。

全くこの家族は全く.....と思う。

すると糸玉が横から耳打ちして来た。

やっぱりお母さんも全く変わらないね、と、だ。

会った事があるのかよ。


「.....母さん。そんなぎこちない.....」


「いえ。もしかしたらその娘は貴方の将来のお嫁さんになるかも知れないんだから。それなりに雰囲気を出しておかないと」


ちょ、母さん!!!!!俺は絶叫した。

何を言ってんだ!!!!?

すると糸玉は赤面しながら満更でも無い様に、いやー、と恥ずかしがった。

もう嫌だ.....この家。

そう考えながら.....顔を覆った。

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