第4話 追葬(ツイソウ)
想いを弔うことができたなら
きっと貴女は幸せでしょう
追憶に目をふせても
心の声は伽藍洞
時の優しさは貴女を傷つけて
凪いでいくよ、それでいいよ
そっと葬送(オク)ってくださいな
貴女の大切なひとかけら
想いに棺はないから
其の痛みは甘く淡く
疼く気持ちは消えないでしょう?
記憶が例え不確かでも
“忘れたくないの”貴女は泣くけど
移ろう日々は残酷ですか?
それでいいよ、それでいいよ
貴女の流す一雫
また、あちらに葬送(オク)ろうか
思い出を、想い出を
貴女の痛む心ごと
優しい恋文(タヨリ)じゃないですか
貴女の愛しいひとかけら
想いを弔うことができたなら
きっと貴女は幸せでしょう
でも、それは寂しいから
そっと想い起こすのでしょう
“忘れそうなの”貴女は泣いた
凪いでいく心の空白に
それでいいよ、それでいいんだ
だって失くしはしないでしょう?
ひとかけら、ひとかけら
貴女の中で溶けていく
泡沫の想いは貴女自身に
何時しか重なっていくでしょう
例えば想うことが少なくなって
例えば憶う(オモウ)ことがわずかでも
貴女は微笑ってくださいな
思い出を、想い出を
灯して貴女は生きていくんだ
だから―
泣いていいよ、泣かなくてもいいよ
失くさないよ、大丈夫だよ
貴女の生きる今を葬送(オク)ろう
繰り返す追葬(ツイソウ)に
そうして貴女が微笑えたなら
その笑顔を恋文(テガミ)にして
―僕に伝えて、愛しい人
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