第3話「凶弾」

妹「甘いね」ニコニコ


俺「まあ、そうであろうな」


デカいパフェ「」ドーンッ


俺(今までの拒みようからもっと過大な要求をされるかとも思ったが)


俺(このパフェでは3000円が精々。大した出費でもない。3ヶ月分の給料もあることだしな)


妹「このお店雑誌に載っててね、ずっと気になってたの。だからお兄ちゃんと行ってみたいなぁって」ニコニコ


俺「そうか。堪能していけぃ」


俺(くくっ。やはり、妹。可愛いものよ。機嫌も良さそうだ)



妹「お兄ちゃん」


俺「ん?」


妹「あーん」スッ


俺「やめい、恥ずいわ。家ならともかく、人前でやることではない」


妹「お願い聞いてくれるんでしょ?」


俺「……えぇい! 南無三!」パクッ


妹「どう?」


俺「甘いな」


妹「よかった」



妹「はい、もう一口あげるね」スッ


俺「妹。欲しければ自分で食べるからよい」


妹「でもお兄ちゃんはこの前私の口に苺入れてきたでしょ?」


俺「いやあれはだな……」


妹「こんな風に」クンッ


スプーン「」グワアッ


俺「おっと」スイッ


生クリーム「」ピッ


妹「お兄ちゃん、逃げないで」


俺「くくっ、一体何処を狙っておるのか。まあ、カス当たりとは言え俺の頬に生クリームをつけたのは褒めてやるがな」


ペロッ



俺「……!」ビクッ


妹「えへへ」


俺「お前……」


妹「今、隙だらけだったよ?」


俺「まさか兄の頬の生クリームを舐め取ろうとしてくるなど考えていなかっただけだ。しかし……なるほど、そうか。わかったぞ」


妹「?」


俺「お前は今、友とのデートの予行演習をしておるのだな。くくっ。熱心なことよ」


妹「ううん。そういうわけじゃないよ」


俺「違うのか? しかし、それでは……」


頭「」ガシッ


俺「むっ。誰だ、背後から俺の頭を鷲掴みにしておるのは。喧嘩ならば買ってやろう!」バッ


友「お前、何妹ちゃんとイチャついてやがんだよ……」コホー


俺「友!?」



俺「何故この店にお前が……」


友「お前、俺の恋を応援するとか言っておきながら裏ではこうか!」


友「頬についた生クリームを舐め取ってもらうだぁ~~~? 鬼畜かよお前は!!」


友「俺にこんなものを見せる為に呼んだのかよ!」


俺「ち、違う! そんなつもりは! それに、呼んでおらぬ!!!」


妹「私が呼んだの。お兄ちゃんのスマホから」


俺「何故だ!」


友「俺のバカヤロー! 見損なった! お前なんて敵だ! 敵だよッ!!!」


俺「も、元々俺達は兄妹、家族であろうが! 何をそんなに焦っておる!」


友「関係ねぇよ!!!」



俺「くぅ、妹への恋慕が奴を暴走させておるのか……。お、おい! 妹からも何か言ってやってくれ!」


妹「ごめんなさい、友さん。まだ私、あんまり恋愛に興味がないんです」


俺「いや、今そんなことは……」


妹「今興味があるのは」スッ


デカいパフェ「」ズブブッ


俺「い、妹!? 何故パフェに手を突っ込んでおる!?」


鉄塊「」チラッ


俺(何か、黒い塊が……! あれは……!?)


拳銃「」ズボォッ


俺(なっ!? パ、パフェの中から……! 拳銃ッ!!!)


妹「人間の生き死にの瞬間」


友「……」ゴクリ



カチャッカチャッ


妹「この銃の装弾数は6発。この内に実弾を1発だけ込める」スッ


ジャララララッ……ジャキンッ!


妹「5回、引ける?」コトッ


俺「引けるわけがないだろう妹! 勝ち目が薄すぎる! これはロシアンルーレットではなくただの殺しだ!」


友「引ける。引けるさ」コトッ


俺「友!?」


友「好きな女性が求めるなら、それに最大限応えるのが男ってもの。妹ちゃんへの想いがあればこれくらいの危機、乗り越えられるはず」スッ


こめかみ「」グリィッ



俺(な、何ということだ……)


妹「自分の逝きたいタイミングでいいですよ」


友「ふぅー……」


俺(今目の前で繰り広げられている事態が未だに飲み込めぬ……)


友「……妹ちゃん。俺は必ず生き残って君を迎えに行く。だから、最期まで見ていてほしい。さあ、1発目────」グッ


俺「!」ビクッ


シーンッ


友「……」ガクブル


俺(あぁ、口では強がっていても、あんなに手が震えて……。当然だ、下手をすれば待っているのは死────。体を竦めるなという方が酷……)


友「はぁっ……はぁっ……!」ウルウル


俺「……もうよい! 友! 無理をする必要はない! こんな場面で命を賭けることに何の意味もないであろう!」



友「俺ぇ……」ポロポロ


俺「他に女などいくらでもおる! お前ならすぐに最高のパートナーが見つかる! 友人の俺が保証する!」


友「なあ俺……もし、もしこの勝負で俺が死んだらさ……」


俺「うむ! うむ!」ポロポロ


友「お前が妹ちゃんを幸せにしてやってくれるか?」


俺「もちろんである!」


友「ありがとな……。正直さ、妹ちゃんへの想いだけではここまでは出来ねぇよ俺……」


俺「え……」


友「ただ、なんつーか、こんな事言ったら笑われるかもしんねぇけどさ!」


友「妹ちゃんと結婚して! お前の弟になるのも悪くないかなって思っちまった!」


俺(こいつっ、俺と同じ事を……!)



ウルッ


俺「くっ」ゴシゴシ


俺「……俺としたことが、漢の真剣勝負に野暮というものであったな」キリッ


友「ははっ。さあ、引くぞ俺。そして、勝つ」グッ


俺「引け! 俺とお前、そして妹の想いがあれば必ず勝てる! 引くんだあぁぁぁっ!!!!」


友「うらあああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」クイッ


ダァンッッッ!!!


シーンッ


友「」


俺「と、友……?」


グラァッ……ドッサァッ……


友「」ビシャアッ


俺「し、死んでしまった……1発目で。そんな、こんな事が……」ボーゼン



俺「くっ!」バッ


拳銃「」ガチンッガチンッガチンッガチンッガチンッ


俺「取り決め通り、実弾は1発だけ……イカサマではない」


妹「うん」


俺「もしや、友の覚悟を試す為、裏で弾を全て抜いているのではとも思った。だが、現実には」


友「」


俺「銃弾が発射され! 友は死んでしまった!」



妹「お兄ちゃん、検分は終わった? そろそろ帰ろっか。ごちそうさまでした」スクッ


俺「待て! 見たぞ妹! お前の猟奇的な内面! その心の闇を目の当たりにしたからにはもう元の兄妹には戻れんぞ!」


妹「くすっ」


俺「何が可笑しい! 生死にしか関心を示せぬ異常者がッ!」


妹「ううん。興味ないよそんなの。漫画じゃないんだから……」


俺「何……? いやしかし、先程は確かに……」


妹「そう言った方がらしいかなって」


俺「演技だったのか……」






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