第2話「強行」

俺「今、帰ったぞ」ガチャッ


妹「あ、おかえりなさいお兄ちゃん」


テレビ「」ワイワイ


俺「やれやれ。兄の頼みを断っておいてお前は1日テレビか。いい御身分だ」


妹「ごめんなさい……。でも、学校も休んじゃったから安静にしてないといけないかなって」


俺「体調はどうだ? 腫れは引いたか?」


妹「うん。お兄ちゃんが調合した薬草を患部に塗り込んでくれたおかげですっかり良くなったみたい」


俺「それはよかった」



俺「くくっ。それにしても昨日は見物であった。ただでさえデカいお前の尻がこんなになっていたものな」


妹「もう、気にしてるのに……」


俺「いやいや、女の尻はデカくあるべきだぞ。元気な子を産めるからな。安産型というやつだ」


妹「うん。結婚するかわからないけど」


俺「まだそんなことを……。クラスに気になる男子の1人もいないのか」


妹「いないかな」


俺「しかしだな、恋というものは驚く程あっけなく、突然に始まるものでもある」


俺「自分が傷ついている時にかけられた優しい言葉1つで世界が変わってしまうのよ」


妹「?」


ピンポーン



俺「おっと、来客である。俺が出てこよう」


妹「あ、うん」


シーンッ


俺「喜べ妹ぉ」ヌッ


妹「どうしたの?」


俺「病床に伏すお前の為に見舞いにいらしたそうだ」


妹「そういう連絡は入ってなかったけど、クラスの子?」


友「だ、大丈夫妹ちゃん?」ヌッ


妹「誰?」



俺「くくっ。こいつは友。俺の友人だ」


友「は、はじめまして。お兄さんとは仲良くさせてもらっててさ。妹ちゃんが怪我したって聞いて心配になっちゃったんだ。体は大丈夫……?」


妹「あ、はい。はじめまして。体は……はい、随分良くなりましたけど……」


友「良かった……」ホッ


俺「優しいであろうこいつは。友人の妹の為にわざわざ見舞いなどなかなか出来ることではないぞ」


俺「おい、アレも渡してやったらどうだ?」


友「そ、そうだな」ゴソゴソ


友「これ、少ないけどさ」スッ


薔薇「」


妹「あ、お花ですか。ありがとうございます」



俺「妹。それはただの花ではない。薔薇だ。情熱のな」


友「早く妹ちゃんが元気になぁれって、この花を贈るよ」


妹「綺麗ですね」


友「はぅ……」キュンッ


俺「……ん、なんだって? そうかそうか」


俺「妹。こいつが綺麗なのは君の方だよと言っておる」


友「おまっ! い、言ってねぇだろそんなこと!」


俺「違うのか?」


友「ち、違わないけどさ……」チラッチラッ


妹「……」


友「あうぅ……」カアアッ



フラッ


俺「おっと、足元がふらついておるぞ。大丈夫か?」ガシッ


友「悪い……。ドキドキしすぎて息切れしてきた。くそっ、眩暈もだ」


友「今日はこれで帰らせてもらおうかな……。薔薇も手渡せたしね。今の状態じゃあ彼女の前に立つにふさわしくない」フラフラ


俺「送っていこうか?」


友「いや、大丈夫。それじゃあ、また……。妹ちゃん、1秒でも早い快復を願っているね」ノソノソ


ガチャッバタンッ


俺「やれやれ、折角のチャンスだというのに。軟弱な」



妹「お兄ちゃん。もしかして、今の人が昨日の?」


俺「わかるか?」


妹「薔薇だもん」


俺「そうだ。今時見ぬナイスガイよ。前世はマラドーナかな。くくっ」


俺「それで、どうであった? 実際会ってみると印象というのはガラリと……」


妹「やっぱり、うん、私はいいかな」


俺「……何?」


俺「男があれだけ誠意を見せたのだ。それに応えるのが女というものであろう」


妹「えっと、そうだよね……。ギフト券とか返せばいいのかな……?」


俺「お前ッ!」ガタッ


妹「わっ」グイッ


ドサッ



シーンッ


妹「……お兄ちゃん、重い」


俺「いつもいつも俺の言う事を聞いてくれた優等生なお前が今回に限ってなんだ。近頃は草食系男子が増えているとは聞くが、まさか女もそれとはな」


妹「だって、興味がないと相手の人にも失礼かなって」


俺「それはやらない言い訳であろうが」


妹「お兄ちゃんはどうして欲しいの?」


俺「ん、そうだな、結婚……いや、ひとまずデートさえ行ってくれれば嬉しいかな」


俺「さすれば必ずアイツの魅力に気付くはずだ。惚れるぞ」


妹「そうなんだ」


妹「……いいよ。そこまで言うなら行っても」


俺「本当か」


妹「でもその代わりに、私のお願い、聞いてくれる?」


俺「……やむを得んな。なんでも言ってみるがいい。金はある」






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