【SS】俺「彼氏とか、興味はないのか?」 妹「うん」

文月 景冬

第1話「交渉」

友「なぁ、頼むよ」


俺「何がだ?」


友「妹ちゃんにさ、俺のこと紹介してくれって」


俺「くくっ。まさか一目惚れとはな。友人の頼みだ、聞いてやりたいとは思うが」


友「これ、少ないけどさ」スッ


俺「茶封筒? む……この金は?」


友「バイト代。3ヶ月分」


俺「ほう」


友「それやるからさ本気で頼むよ。俺妹ちゃんめちゃくちゃ可愛いと思ってるし絶対幸せにするからさ」


俺「まあ、これはありがたく貰っておこう。妹には話を通しておくよ。ひとまず、デートでいいか?」ゴソゴソ


友「マジか! ありがとう! お前の友達でよかった! でも、妹ちゃんOKしてくれるかな……」


俺「あいつは優しい性格だ。それに、俺の言うことは大抵聞いてくれる。大船に乗ったつもりで待っているがいい」



俺「ただいま」ガチャッ


妹「あ、おかえりなさいお兄ちゃん」


俺「妹、丁度いいところに。ほら、学校帰りにケーキを買ってきてやったぞ」


妹「わっ、どうしたの?」


俺「くくっ。なんとなく、な」


妹「?」


俺「俺は苺のショートケーキ。そして、お前はモンブラン。昔からこれには目がないからなお前は」


俺「さあ、まだ夕食まで時間はあろう。紅茶を淹れてくれ」


妹「うん。今用意するからちょっと待っててね」スッ


尻「」ムチッムチッ


俺「……」


俺(もし2人が結婚すればあいつは俺の弟か。くくっ。それも悪くないかもしれんな……)



俺「甘いな」カチャカチャ


妹「甘いね」


俺「ふぅ……さて、この最後に残した苺。どうすると思う?」


妹「どうするって……むぐっ」ズボッ


俺「苺をやろう」グググッ


妹「お兄ふぁん……? ほうひたの?」ムググ


俺「……実はな、お前に頼みがあるのだ」チュポッ


妹「? 何?」ゴクンッ


俺「くくっ。そう身構えんでもよい。お前にとってもそう悪い話ではないはずだ。むしろ感謝までするかもしれん」


妹「うん」


俺「お前のことが気になっているという奴がいてな。まあ、そいつは俺の友人なのだが、結構いい奴なのだ。男前でもある。捨てられた子犬でも見つけたら迷わず拾うだろう」 


俺「俺としてはあいつの後押しをしてやりたい気持ちがあってな。どうだろう。一度2人でどこか遊びにでも行ってやってはくれまいか? お前もそういう遊びを覚えてもいい頃だろう」


妹「やだ」


俺「……何?」



妹「あっ、甘いよこの苺」


俺「聞き間違いかな」ポリ


俺「やだと聞こえたのだが」


妹「うん」


俺「……何故だ。理由を述べてみろ」


妹「お兄ちゃん怒ってるの……?」


俺「際際だ。返答次第ではどうなるかわからん」


妹「あんまり、興味ないの」


俺「恋愛にか」


コクリ


俺「……兄である俺の頼みでもか。苺もくれてやったぞ」


妹「お兄ちゃんのお願いはともかく……、苺は普通に好きくらいだし……」


俺「……!」ムカァッ



ワイワイガヤガヤ


俺「……」


友「おい! なあ、どうなったんだよ! 妹ちゃんに俺のこと紹介してくれたんだろ? どうなったんだよ!」


俺「良いニュースと悪いニュースがある」


友「良いニュースだ!」


俺「仕置として妹の生尻を20回叩いてやった。最後には紅くなっていたよ」


友「彼女、Mっ気があったのか……」


俺「いや、尻が」


友「悪いニュースは!?」


俺「興味がないと断られた」


友「ふざけんじゃねぇーっ!!! なんだよそれ!」グイーッ


俺「取り付く島もなかった。やれるだけのことはやったつもりだ」


友「結果が出てねぇじゃねーか! 金返せよオラッ!」


俺「そう焦るな。次だ、次こそは必ずお前の手で妹を抱えさせてやる」

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