第2話
放課後の体育館、男子更衣室に向かう一人の生徒の姿があった。
「う~、トイレ、トイレ...その前に着替えとこ。良かった。まだ誰も来てないや」
1年の卓球部員、赤星すばるが昼の校内放送で流れた曲を口ずさみながら上着を脱ぐとカーテンから影が伸びてすばるの口元を手で塞いだ。
「!?」「動かないで。楽にして」
恐怖で硬直する体。目を動かして相手を確認すると後ろには卓球部部長の松田忍。
「せ、先パイ...なにを...」「やっとふたりっきりになれたね...」
「ちょっと、まさか」
「おい、俺も混ぜろ」
更衣室のドアが開き、大柄の逞しい体躯の男が後光を背にふたりの前に姿を現した。
「初台先パイ!?」
すばるが考える最悪の展開が目の前に迫って来た。「さぁ、力を抜いて...」
「や、やめてよ」「くくく...」
ランニング一枚の3年生、初台正義がロープを伸ばしながら近づいてくる。
「や、やめてよ!それで縛って乱暴するつもりでしょう!?エロ同人誌みたいに!」
「はっちゃん、はやく」「ウホ」
「アッーーーーー」
断末魔のようなすばるの悲鳴が体育館中に響きわたった...
「よし、これで部員全員の採寸が終わったな」
「新ユニフォームは来月出来上がるって。楽しみだね~」
練習前のミーティング中。「......」すばるがブツブツ呟きながら真っ赤に座った目をして3年の先パイふたりを眺めている。
「おいどうした。魔物でも召喚してんのか?中二病クン」ぼくの友人の鈴木タクが背中を叩くが反応なし。
「マネージャー、全員分の注文表だ」
「はいはーい...確認するけど、すばるくん身長154cm ウエスト58。パンツサイズはSでいいね」
「ウエスト58!?」「グラビアアイドルかよっ」
「軽すぎだ。もう少し食べた方がいいぞ」
バナナを剥いて忠告する初台先パイをすばるはふらふらとあてのない目線で見つめていた。
「新学期が始まってもう一ヶ月かー」「なんだよ唐突に」
ぼくのとなりでタクが体育館を見回した。「ちょうど去年の今頃だったよな。俺がここの入部したの」
「ああ」
ぼくは去年の入学当初の事件を思い出した。
※ちょっと長くなります。
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