第5話 アンジェリナの恋(勇者目線)

私はいったいなんて事をしてしまったんだろうか?


 私は勇者、14の時に勇者の『ジョブ』を授かり、この人間世界の希望を背負った


 そして、16の時、魔王討伐の為の冒険が始まった


 従者は剣聖『ルナ』、賢者『ラーナ』、聖女『シェリファニール』


 そしてウォーリア『エルウィン』


 私たちはみなレベル1からエルウィンさんのおかげで安全にレベルをあげられた


 みんな、エルウィンさんに感謝している


 大して剣技も魔法も使えなかった頃、エルウィンさんが必死に戦ってくれた


 私は男嫌いだったけど、エルウィンさんには好感が持てた


 でも、あの事故の時、私は鬼になった


 10階層も落下する事故が起こり、


 私達は帰還に必要な食糧と野営の為の魔物避けの結界が不足した


 私はエルウィンさんを犠牲にする事にした


 パーティの為だが、許される訳がない


 私は殺人者なのだ。勇者などと呼ばれるのは心苦しい


 私は生き残る為に恩人を犠牲にする汚い人間なのだ


 それだけではない、私達のパーティにはポッカリと穴が空いてしまった


 私の心にもポッカリ穴が空いてしまった


 私もみんなもエルウィンさんが好きだった


 戦力として弱くなったエルウィンさんはそれでもみんなの憧れだったのだ


『みんなの私を見る目が冷たい』


私はそう感じた


☆☆☆


そして、あののダンジョンを攻略し終えた私達はいよいよ魔王城へと向かった


 だが、レベルは上がってもかつて程の連携はなかった


 私達の心はバラバラなのだ。全ては私がエルウィンさんを殺したから


 みんな私を許さないんだ


「エルウィンさんごめんさい


 私、だから処刑されるんだ」


私は一人呟いた


 私達は魔王城の近くで魔族の一人と戦い、そして敗北した


 私達は囚われ、私は早速死刑になるらしい。衣服は全て脱がされて


 手には枷、首には奴隷の首輪が嵌められた


 手の枷は手を上にしかできない様にされている


 私は裸の体のどこも隠す事ができなかった


 でも、屈辱はなかった。だって、これは罰なんだ


 エルウィンさんを殺した私への罰


 これ位で神様は許してくれない


 この先にある、断頭台で首を落とされても......


 その時、それは起きた


 激しい爆発音


「何?」


そして、彼は現れた


「エルウィンさん!」


私は多分泣いていた。エルウィンさんはやっぱり私達の勇者なんだ


「大丈夫か?


 ちょっと待って」


エルウィンさんは自分の上着を脱ぐと私にかけてくれた


 エルウィンさんは周りの魔物を次々斬り倒すと


 魔法を放って私を連れて逃げてくれた


 私は泣きじゃくった


『エルウィンさん、エルウィンさん、エルウィンさん


 どうして私なんかを助けるですか?


 私はあそこで死刑になった方がいいのに』


私の声はエルウィンさんには届かなかった様だ


 エルウィンさんは私を抱えて、すごいスピードで魔王城から逃げた


『エルウィンさんは生きていてくれた。私は殺人者じゃなかった


 それにあの頼もしいエルウィンさんが帰ってきてくれた』


私の胸にはドクンと一つの感情が浮かんだ


『......エルウィンさんが好き......』


報われる訳がない、私はエルウィンさんを殺そうとしたんだ


 殺される事をあっても、決して好きにはなってくれないだろう


 でも......


『それでも好き』


私は決して報われない恋に落ちた

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