実況?! 異世界!

真偽ゆらり

神様もお祭りを観るよ! 観ない訳が無いよ!

 やあ、地球のみんな! はじめまして、僕は……っと、いけないいけない。えっと、出していい名称はっと……。

 では、改めまして。


 はーい! 地球のみんな! はじめまして、僕は暇神連合所属の一柱、好奇神だよ? え、好奇神もダメだっけ……暇神連合所属の一柱、物好きな神様で、いいや。

 あ、正確には神じゃなくて、デミゴッドだけど。

 うん、人からしたら大して変わらないってか、分かんないよね。それに、地球で言うデミゴッドと同じかって言われるとねぇ。神っぽい何かとでも思っておいてくれればいいよ。


 何? 余計なことは喋るなって? 仕方無いよ、だって暇なんだもん。君だって暇だから、こんなことやろうって言い出したんでしょ。

 ん? あ、ごめんごめんこっちの話だから、地球のみんなは気にしないで。


 本題に行こうか、僕らの管理す……管理はしてないや、管理したがるのは大概邪神堕ちするし……僕らの……なんだっていいか。こっちの世界、異世界のおもしろい祭りを紹介しようと思ってね。


 ……ねぇ、世界名も出しちゃダメなの? ダメ、なんだね。はーい。


 そのお祭りは、とある都市で四年に一度行われるとある祭典で……って紹介しづらいよ! お祭りの名称も出しちゃダメなの? 違った、名称決まってないんだった……。もう、全裸祭りとかでいいのになんで決めてないの? そもそもなんで紹介しようと思ったんだっけ。


 そうだった、そうだった。今回の開催に合わせて名称が決まったんだった。邪神もたまには良いことするね。


 僕が紹介するお祭りは、都市『リンポス』で四年に一度開催される『異世界オリンピア』だ。

 ざっくりと説明すると、男女が全裸で飛んだり、跳ねたり、走ったりしてスコアを競うお祭りさ。

 最高のお祭りだと思わない? 僕はそう思うね。

 それに、今回は新しい競技場ができたんだ。故郷『リンポス』にUターン就職することになる若手の建築士の手によってね。

 おまけに、ある秘密組織の協力によって爆発的に知名度が上がったから観客動員数も過去最大になること間違い無しさ。彼らの『噂こそ拡散する種』の大成果だね。口コミのすごい版だよ。


 それじゃあ、僕の注目する選手を追いながら祭りを観て行こうか。

 

 いたいた、この選手だね。ベテランの冒険者で、周りの冒険者に姉御と呼ばせて慕われているよ。

 今回で三回目の出場だ。対覗き魔法アンチ・ピープ・マジックが導入されてから皆勤で出場してるね。

 実力はあったけど全裸が待ったをかけてたから、参加を見送ってた選手だった。でも、対覗き魔法の不自然な光が見られたくない所を隠してくれるのを体験して参加を決めたそうだよ。

 どうやら選手入場する直前だね。

 少し見ていこう。

 ちなみに向こうからこっちは見えてないからね。


 慕ってくれる冒険者と会話しているね。


「あに……姉御! 姉御も参加してたんすね」


「ふふ、緊張で噛んだってことにしといてあげるわね。今年で三回目よ、あなたは初めてかしら?」


「すんませんっす、参加は初めてで柄にもなく緊張してるみたいっす。ここまで大きな祭りと思ってなかったっすから」


「そうね、前回と比べてもかなり大きくなってるわね。でも、楽しまないと損よ! 気合入れなさい」


「うっす! それにしても姉御、体仕上がってますね!」


「当たり前よ、この為に日々の冒険や訓練で鍛えてるんだから! ここでの競技は身体強化の魔法しか使えないから、最後は筋肉がモノをいうわよ」


「魔法は得意なんでなんとかなると思ってたんすけど、もう少し体鍛えとくんだったっす」



「参加選手の皆さん、入場の時刻となります。壁にある縦の白いラインを中央に整列をお願いします」


 選手入場の時刻となり、選手達は整列していくけど、どこから入場するんだろうね。壁しかないよ。


「それでは! 選手! 入場!」


 なるほど、壁の白いラインを軸に壁が回転して競技場内への道が開くのか。まるで忍者屋敷だね。

 忍者屋敷の扉のカラクリみたいに壁が動いて選手が競技場内へ入場するよ。壁に背を向けて並んでたのもこういうわけだったんだね。

 あれだね、どんでん返しってやつだね。この壁。


 選手達が入場して会場は大歓声だ。男達の野太い声が響いているよ。すぐに歓声は萎んだけどね。

 ま、見たいとこが光で隠れてるから仕方ないね。

 僕はこの瞬間が面白くて好きなんだよね。


 競技が進んでいくよ。

 徒競走に持久走、砲丸投げに走り幅跳び。

 僕の注目選手はトップ争いをしているね。

 驚いたのは砲丸投げの時さ、会場の一部が稼働して、O字型がU字型に変形したんだ。

 どんだけ飛ばす気だったんだろうね。



「続いての競技は走り高跳びになります。選手の皆様は競技場の端にて待機してください」


 次は走り高跳びだね。魔法ありだから、迫力があっておもしろいんだよね。でもなんで端で待機なんだろ。


 あはは、今度は競技場の中央がクルンと回転したよ……縦に。端に寄らないと危ないよね、そりゃ。


「まるで、劇場の場面転換みたいね。流石に劇場はここまでの規模で回転しないけど。確か、どんでん返しって言うんだったかしら」


「姉御も演劇観に行くんすね。意外っす」


「意外とは失礼しちゃうわね、こないだの純愛劇とか最高だったわよ。一人で観るのは寂しかったわ」


 へー、演劇とか観るんだ。知らなかった。

 

「次は、私の番ね。私の美しい跳躍を魅せてあげるわ」


「姉御! 頑張ってくださいっす」


「ふふ、ありがと! さぁ、行くわよ!」


「では、次の選手お願いします」


「ふん! どぉりぃゃぁぁぁ! グッ! とう! これが漢女おとめの! 跳躍よぉぉぉ!!」


 それはそれは、綺麗な跳躍だった。

 ほとばしる汗と溢れ出る魔力が陽光で煌めき。

 極限に鍛えあげられた肉体が命の輝きを放ち。

 後ろに伸ばした腕に蝶の羽を幻視する。

 競技場の音を奪い去り、静けさをもたらしながら上昇を続ける。

 やがて、最高到達点に達しヒラリと身を翻す。

 木の葉が舞うように落下していく。

 爪先、片膝、両腕をつき、着地した。

 少し遅れて、競技場に衝撃音が響く。

 一拍の静寂。

 続いて、大地を揺らすと錯覚するほどの歓声が轟いた。


 

「俺、この後……飛ぶんすか……。棄権していいっすかね」


 この後の跳躍者が棄権し、走り高跳びは終わる。



 


 っと、いけないいけない。思わずつい真面目に実況してしまったよ。人類史に残る跳躍と言っても過言ではないね。

 それより、驚いたかい? は、僕の紹介した選手は実は男だったんだよ。

 どんでん返しだっただろう? え、映像で見せてたからバレバレだったの? そ、そんな〜。


 そ、そうだ、文字にして届ければいいんだよ。

 誰か、誰かいない? も……君は? 文字を読むのが専門で書けるわけじゃないの……でも、文字系の神の君なら……嫌って、同じ暇神連合の仲間じゃないか。興味が無い……なら、仕方ないね。

 好奇心の神としては、興味の無いことを無理強いはできないね。


 それじゃあ、ここまでだね。

 実況・解説? の僕、物好きな神と、記録・放送担当の邪神がお送りしました。

 まったね〜。






 あ、僕は邪神じゃないよ。

 邪神のやつが面白そうなことをするから、話にのっただけだよ。誤解しないでね。

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実況?! 異世界! 真偽ゆらり @Silvanote

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