主人公未定

東利音(たまにエタらない ☆彡

第1話 待機室

 ここは待機室。いざという時に備えて待機している。


「いざって時なんて何時だよって話だけど」


 そう愚痴るのは赤居。戦隊系ヒーローのリーダーの可能性を秘めた男だ。

 周囲にも似たような若者が多数いるが、赤居に応じるものは居ない。


<<緊急警報発令! 緊急警報発令! 駅前で怪人らしき何者かが暴れているという情報が入りました>>


「おいでなすったか……、とはいってもお呼びがかかることはないんだろうけれど」


「ええ、赤居さんが出動? 出撃? するくらいならまだ僕が行ったほうがましですよ」


 そう話すのは、門合。彼は悪の秘密結社に囚われて改造手術を受けた……、可能性が示唆されている。


「似たりよったりだろ? 俺もお前も?」


「全然違いますよ」


「どっちもどっちだと思うけどね」


 口をはさんできたのは、今はまだ何物でもないニート。名前の名乗ることすら禁じられ、ニートのN氏と呼ばれている。


 ニートが続ける。


「門合さんが対応してしまうと、少なくとも相手も怪人であること。そして、怪人改造手術の手段が存在することが確定してしまいますよ」


「そのリスクぐらい被らないと怪人の相手なんてできないと思うけれど?」


「それだけで済めばまだいいですが。あなたたちの場合、怪人だけでなく、無数に存在する雑魚戦闘員の出現の呼び水になる可能性がありますからねえ。あれ、朝の子供向け番組とかで、対象年齢の問題とか色々あってなんとなく悪さしてるようにしか描写されてませんが、多分そこそこ訓練されてるでしょうし、武器もあって、一戦闘員が一般人を複数、いえそれどころか何百人と殺戮してもおかしくないですから」


「だから俺たちには出番が回ってこない」


 赤居がぼやく。


「一緒にしないでくださいってば」


 門合が不満を漏らす。


「赤居さんの場合、多分怪人が巨大化しますからねえ。ロボとの市街戦なんて実際に起こった日には……」


「ロボ無しのパターンもあるじゃん?」


「いやぁ、さすがに怪人倒して終わりってことにはならないでしょう」


「昨今の戦隊系見てるとねえ」


「で、今回の怪人って結局なんだったのかねえ。今回に限ったことじゃなく、前も、その前もずっとそうだけど。そもそも怪人ぽいってだけでなんなのか判明してないけど」


「まあ警察か自衛隊の通常兵器でなんとかなってるうちは大事にならないですし、我々も身の危険にさらされないんだからいいんでは?」


「そういうもんかねえ……」

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主人公未定 東利音(たまにエタらない ☆彡 @grankoyan

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