第55話 米作りのノウハウ

 塩水選が終わったら、今度は種まきと苗代の作成だ。苗代っていうのは、水田の一部を区切って種を植えて、一定の大きさの苗になるまで育てることだ。そしてその育ったのを本田に植え直すと、収穫量が増す。

 田植えの時期は地方によって違うけど、尾張だと五月下旬くらいか。


 じゃあ五月上旬くらいに塩水選すればいいのかね。


 田植えの五日くらい前に、代掻しろかきっていって、水田に水を入れて土塊を砕く作業をする。それによって水田の漏水を防止し、田植えをしやすくするんだな。代掻きをする時は、備中クワをさらに横に伸ばして櫛みたいにした櫛型っていうのを使ったり、同じような形の馬鋤を馬とか牛に引かせて土をならす。


 ちなみに肥料はここで混ぜこむ。


 肥料は鶏糞を使いたいところだよなぁ。剛腕でGOでも農業の達人と呼ばれる二瓶にへいさんが、化学肥料並の即効性があるから、使う量には注意しないといけない、って言ってたっけ。


 番組では確か、枯葉とかもみ殻に1割程度の鶏糞を混ぜて、半月後に上下を反転するっていう作業を3回程度繰り返して、2ヶ月間放置してたっけ。

 とすると、2月頃には肥料作りを始めないといかんな。


 って、もうすぐ2月じゃないか!?

 先に鶏の飼育もお願いしておかないとダメだな。


「その後は、種まきしてある程度育った稲を、等間隔で田んぼに植え替えます。そうすると、丈夫な稲が育つようです」

「ほう」


 俺の大雑把な説明を理解してくれたのかどうか、信長兄上は、ならばそれでやってみろ、と言った。いずれ俺の知行として与える予定の篠木郷の一部を、先に貸してくれるらしい。


 いわゆる農業実験場みたいなもんか。早めにもらえるのは嬉しいな。できることが増えるからな。


「それから鶏の糞を肥料として使いたいので、諏訪大社さまをお迎えする前に、何羽か飼育したいです」


 そしたら卵料理もできるようになるしな。

 生卵は危険かもしれないけど、火を通せば食べられるだろう。卵料理っていえば、卵焼きははずせないけど、普通に目玉焼きもいいな。オムレツとかスクランブルエッグとか……


 スクランブルエッグといえば、マヨネーズだな! マヨネーズを作るには酢と卵黄と油があればいいんだったな。あとは味付けに塩と胡椒か。


 信長兄上は濃い味付けが好きだから、マヨネーズを発明したらマヨラーになりそうだな。ご飯の上にマヨネーズ……うう。やりかねん。


 マヨネーズができたらツナマヨも食べたいなぁ。おにぎりに入れたらおいしいからな。

 熊に食べさせたら、それこそうまいうまいって言って、おひつ一杯分の握り飯を食べそうだ。


 ツナマヨのツナってマグロか。マグロって一本釣りで獲れるのかね。確か青森が有名だったよな。大間のマグロだっけ。ここら辺でも獲れるといいんだがなぁ。漁港にでも行ったら調べてみるか。


「それから特別な肥料も作りたいです」


 肥料じゃなくて硝石だけど。


 前に信長兄上に作り方を教えてるから、その言い方でピンときたらしい。


 本当にできるかどうか分からんけど、作り方自体はそんなに難しくないんだよな。材料も人の尿とヨモギと蚕の糞だしな。蚕糞は確か篠木のちょっと北に養蚕してるとこがあるって言ってたから、そこでもらえばいい。


 普通に肥料を作ってるんだって言ってもおかしくないから、間諜を気にしなくてもいいだろう。硝石が出来たら、情報を管理しないといけないだろうけど。

 さすがに他国で硝石をどんどん作られて鉄砲を簡単に使えるようになったら、織田家の優位性が崩れるからなぁ。


 今のところは鉄砲の優位性に気がついてるのって信長兄上くらいだから大丈夫だけど。


 火縄銃ってさ、確かに強いんだけど、命中率が悪いんだよ。しかも火薬が高くつくから、バカスカ撃てない。

 それに火薬が高くて鉄砲を撃つ練習ができないのも問題だよな。予算の問題で練習ができないんじゃ、いつまでたってもターゲットに命中させられるほどの腕にはならない。


「なるほど。他に必要な物があるなら、権六にでも伝えておけ」

「ありがとうございます、兄上」


 よーし。これで何年か後には硝石ができてるな。失敗しなければ、の話だけどな。


「それから鍛冶の上手な方を紹介して欲しいです。色々と作って欲しいものがありますので」


 まずポンプだろ? それからネジとドライバーとペンチなんかも欲しい。あとピーラーも欲しいな。ごぼうとか大根の皮をむく時に便利だからな。


「八右衛門」

「そうですな。津島の五郎助などはいかがでしょう」

「篠木に居を移させろ」

「はっ」


 これで鍛冶職人さんもゲットだぜ!



 

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