第28話 罪を裁く王
俺はコホンと小さく咳ばらいをして、話を続けた。
「それにしても、どうしてご家族の夢枕に立たれないのですか、とお聞きしたら、叔父上もそうしたかったのだけれど此岸の者には声が届かなかったのだそうです。私は一度彼岸にとても近くなったことがありましたから、それで叔父上は私のところへ来れたのだと言っておりました」
話を聞いた一族が、なるほど、と頷く。
俺の心臓が一度とまったことは、皆もよく知っているんだろう。だから俺の説明ももっともらしく聞こえてるに違いない。
ちなみに一族全員が法要に出席しているんで、例の守山城主の信次叔父さんも部屋の隅っこのほうで参列してる。法要の前にまた謝られて、俺も悪かったしもう許してもいいんじゃないかとも思うんだけどね。信行兄ちゃんはまだ怒ってて許さないとか言ってるんだよね。
うん。ブラコンなのは嬉しいけど、ほどほどにな……
亡くなってから七日目っていうのは、その亡くなった人が最初の審判を受ける日なんだって。
そこで生前の行いによって審判がなされて、それから7日ごとに合計7回、すべての衆生を裁く裁判官が、亡くなった人を地獄に行くか極楽浄土に行くか決めるらしい。
その大切な審判の時に、故人はこんなに良いことをしていましたよと言って、罪を軽くしてくださいとお願いするのが、初七日とか四十九日の法要なのだ。
要するに、前世とは違ってこの時代では初七日の法要はとても大事なものだから、蟄居謹慎中の信次叔父さんも参列できたってわけだ。
ちなみに極悪人は審判もなくそのまま地獄へ直行で、超善人はすぐさま極楽浄土へ案内される。
その他大勢の普通の人はどうするかっていうと。
まず、お亡くなりになってから6日間、ひたすら山道を歩く。いわゆる「死出の山」だ。800里、つまり3200キロメートルも歩くのだ。
そして7日目に第一の裁判官・秦広王が殺生の罪についてを書類審査で審判してもらう。
この時に「故人は良い人だったので、良い判決をお願いします」とお願いする為に初七日の法要をするのだ。
審判を終えると例の有名な三途の川を渡る。三途、つまり川を渡るのに三つの方法があるから、三途の川って呼ばれてるんだな。
一つ目の「
二つ目の「
三つ目の「
俺が信光叔父さんに会ったのは、この三途の川のほとり、ってことにしてある。ちょうど初七日の頃に辿りつくわけだから、おかしくはないだろう。
本当は月谷和尚さまが言うには、信光おじさんはすぐさま天罰で地獄に行ってもおかしくないくらいなんだけど、万に一つの可能性で審判の場まで辿りつける可能性もあるから、そっちにしなさいとアドバイスしてくれたのだ。
ちなみに七日かけて川を渡ると、
脱いだ着物は懸衣翁が
っていうか橋を渡って川を越えた人は、服も濡れてないような気がするけどな。別に木の枝に引っ掛けて罪人判定しなくても良さそうなもんだが。いわゆる出来レースだよな。
その後、第二の裁判官・初江王が、衣領樹のしなり具合で盗みをしたかどうかの審判をする。
第三の裁判官・宋帝王は、なかなかエロい。じゃなくて、えぐい。
素っ裸の男に猫をけしかけ、大事なとこに噛みつけせてその噛みつき具合で邪淫の罪を計るからな。あんまりお盛んすぎると、食いちぎられるんだそうだ。
……想像するだけで内股になるな。
ちなみに父上は側室いっぱいだったけど、ちゃんと婚姻してる女性が相手なんでセーフだ。
父上。猫に食いちぎられなくて良かったね。
女の審判には蛇を使う。ニョロニョロがどこに入っていくかは、諸君の想像にお任せする。うん。まあ大体想像の通りだな。うん。
あと入った長さで判断するらしい。
第四の裁判官・五官王は
第五の裁判官が、一番有名な閻魔王だ。
そこで生前の罪を映す鏡の前に立たされて、今まで犯してきた罪がずらーっと映像で流れるのだ。
よく閻魔さまに嘘をついたら舌を引っこ抜かれるっていうけど、嘘をついてもすぐバレるよね。ドライブレコーダー回ってて交通事故起こしたのと同じだもんな。映像が動かぬ証拠になるから、言い逃れはできない。
そして閻魔王は、その人が六道のどこに転生するかを決める。六道っていうのは、天道・人間道・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道のことだ。天道と人間道以外はろくでもないな。
第六の裁判官は変成王だ。転生する際の細かい場所をここで決める。人間道ならアメリカとか日本とかかね。地獄だと八大地獄のうちのどれかになるんだが。
第七の裁判官が泰山王だ。ここで最終的に転生先の性別とか寿命を決める。
キリスト教にも七つの大罪っていうのがあるから、7っていうのは何か特別な意味のある数字なのかもしれんね。
777もスロットでフィーバーするしな。
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