限前とリエル6

限前:ははは、まさかこの歳になって褒めて貰えるとは思わなかった。


俺もまだまだ捨てたもんじゃねーな、ふふ……


(限前はリエルに褒められたことで思わず笑みをこぼした)


リエル:……あのね、潜るのは良いけど溺れないでね?


(限前はそっと、不安そうな表情になったリエルの頬に手を添えた)


限前:……ああ。直ぐに戻ってくる、いい子で待っててくれ。


(そのまま振り返ると海に潜った。後にはリエル一人が残された)


リエル:……お水………ちょっとだけなら、いいかな…………?


(限前が潜った事に触発されたのか、リエルはとうとう海に手を触れた。その瞬間、押し寄せる膨大な記憶に意識をのまれてしまい……)


リエル:……うわあああああ……っ…………!たす………け………。


(声にならない叫びと共に、身体が沈んでいった)


限前:………………!?なんだ、今のは…


(誰かの叫び声、か……?ちくしょう、闇が濃くてよく聴こえねぇ………!記録された記憶の声だったのか……?)


<水底>


(意識を失い、リエルの身体は身動ぎもせず沈んでしまっている。このままでは意識不明のまま二度と目が覚めない…


植物状態に陥ってもおかしくない。間が悪い事に、記憶の海では誰かが溺れて沈んでいったとしても……気付かれない事が多いのだ)


?:……………死なせは…しない、俺が……側に居る………限りは…………!


<記憶の海:分岐点>


限前:(ずいぶん深く潜ってきたな……ここまで潜ると…端末の補助がなけりゃ、同じ深度をさ迷っているかのような感覚だ……。


…………これは……?

ついに、手掛かりを見つけた…………!)


………ごぼっ……!く、くるし…… 


(しまった……負担が、大きすぎて………息ができねぇ!)


(苦しげに泡を吐き出し、身体に力が入らないまま…限前は水底にたどり着いた。見覚えのある顔を見た瞬間に、呼吸困難からくる酸欠で気絶してしまった。)


?:………………………。


("彼"は限前を一瞥すると、乱雑に抱えて海を上っていく。いとも容易く外にたどり着くと……慣れた手つきで限前に水を吐き出させた。)


?:……不調…………。お前に、分かるものか、分かってたまるか!俺達の苦しみも…痛みも…何もかも………


………出ていけ、今すぐに。


(誰に教わったわけでもないのに、接合解除の手順を踏んで限前を精神世界から追い出した。接合が解除された瞬間、現世に残された限前の身体は崩れ落ちた。


下敷きになった彼は…自分が起きるかわりに限前をベッドに寝かせ、そのまま部屋を後にした)


?:………リエル。それがお前の選択なのか?お前が望むのなら俺は………従うだけだ。

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