限前とリエル5

限前:さっき言ったろ、お前さんの中を覗かせて貰う……って。


(仮説が正しければ、"もう一人"と会うには……精神世界で接触する方が近道だろう)


リエル:ね、おじさん……ここに何があるの?


限前:……あっちに、お前さん達にとっては大事なもんがある。"記憶の海"と呼ばれる……お前さん達が生きてきた証がある。


リエル:……生きてきた、証…………?


限前:あそこにはな、本当にすべての記憶が溜まってるんだ。忘れてしまうような些細な記憶も、心を護るために封印した記憶も……


リエル:…………あのね、ちょっと見てみたい。連れてって?


限前:……ああ。(普通は嫌がるんだがな……記憶が無いせいなのか……?)


(少し歩くと、二人の目の前に小さな池ほどの海が広がった。だが底を窺い知ることができないほど、濁った水に満たされている)


リエル:……あのね、思ってたよりずっと小さいね。


限前:広さよりは深さの方が重要だぜ。お前さん達………確か14歳だったか?それでも背丈をゆうに越える深さだ、うっかり落ちたら溺れるかもな。


(リエルはそっと濁った水に手を差しのべた。何度か触れようと試みるも、踏ん切りがつかないのか、あるいは……無意識に制止されているのか……?ついに諦めたようだ)


リエル:……やっぱり怖い。さわっちゃ駄目って……そんなきがする。


限前:そうだな………その方が賢明だ。楽しい記憶ばっかりとは限らない、嫌な記憶を引っ張り出しちまうこともある。


此処に案内したのは、お前さんの許可を得た上でだが…この中に潜ってこようと思ってたんだ。


そうすりゃお前さんに、嫌な話をさせなくて済む。もちろん…知られたくない記憶もあるだろうから、無理強いはしねーよ。


リエル:ね、どうして潜るの?お水、こわくないの?


限前:お前さんの不調の原因を探るためだ。どうも頭をぶつけるより前にも不調を訴えてたらしいからな。


少なくとも検査の結果"それ"絡みの大きな異常はなかったと聞いている。


ちなみに俺は泳ぎと素潜りの心得位はあるぜ。さてはお前さん……カナヅチだな?


リエル:……うん、お水こわい。すごいね、おじさん……

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