限前とリエル2

限前:……そうか。リエル、言いたくないなら言わなくていい。


自分が聞いてほしいと思わない限り、嫌なことを無理に喋る必要なんかないからな。別に怒らないから…言いたくない事はすぐそうだと教えてくれるか?


日向:……えっ…?それだと問診にならないのでは………


(リエルは静かに頷いた。無理に言わなくていいと言われたのが嬉しかったらしい)


限前:逆だ、日向。無理に喋らせたら余計に追い詰めてしまう。それに…信頼に足る相手でもないのに自分の話を聞いてほしいと思えるか?


日向:そ、それは…………思えない、ですけど…


限前:だろ?そもそも医者と患者は信頼関係があってこそ成り立つもんだ。特に、俺ら精神科医にとって最も大事にしてる事の一つでもある。


一回の診察で全て解決できるほど単純な話じゃねーってことよ。雑談だけで時間が終わることも多々ある。


日向:(さすがにそれはどうかと思ってしまいます。やはり勝手が違うものなんですね……)


限前:……お前さんみたいにゴリ押ししてたら、患者の精神に回復不能なダメージを与えちまうぜ。


日向:……えっ。そんな大袈裟な…


限前:ま、極論だがな。それくらいデリケートなもんさ、精神ってのは。


日向:もう、脅かさないでくださいよ。本気にしたじゃないですか……


限前:脅しじゃねーよ。実際問診が原因で壊れちまった患者がいたんだ。だから俺は慎重かつ丁寧にしてる。


取り返しがつかなくなっちまうからよ。


(日向は驚きからか言葉が見当たらないらしい…顔が青ざめている)


………?んでお前さんがビビってんだよ。


日向:だって…………壊れてしまうって事は…っ………私が…


(限前は目を細めて日向を眺めていたが、言わんとする事を把握すると遮るように言葉を接いだ)


限前:落ち着け。お前さんがビビってたら患者までパニックになる。そんなヘマをしない、させないために俺も工夫してるんだからな。


この場は俺に預けてくれないか。大分落ち着いてきたから二人で話してみようと思うんだが………


日向:すみません…私は席を外します。零の言うとおり、要らぬ不安を与えてしまっては足手まといになりますから…


限前:…………日向、決してその気持ちは悪いものじゃねぇ。患者の前では見せない方がいいが、失くさないように大事にしろよ?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る