限前とリエル1
(限前は外を眺めながら棒菓子を咥えている。専ら考え事をしながら人を待っている時の、お決まりの姿だ)
限前:……来たか、日向。
日向:すみません、お待たせしました。彼が……どうしても一人は怖いと言うもので。
(限前が振り返ると、日向の背中に隠れるようにして子供が様子を窺っている)
限前:……………なるほど。いきなり初対面の医者ん所に、一人で向かうのは怖がって当たり前だろ。
俺の名前は限前零。こんななりだが……"精神科医"だ。よろしくな。
(子供は声に驚いたのか、一向に前へ出ようとはしない)
日向:ほら、名前と年齢を言ってください…先ほど私に教えてくれたように。
?:………りえる、です…えっと、14さい…です…
(発言を促されて、リエルと名乗った彼は恐怖で泣きそうな顔をしている)
限前:……リエル、か。そうビビらなくていい。はっきり言っておく、俺ん所じゃ寝てるか喋るかだけだ。良ければ聞かせてくれよ、俺の何が怖いんだ?
(リエルは何かを言いかけたが思い止まった)
………ふっ。何か怯える根拠はあるんだな…。何となく怖がられては対処しようもねーからな。
(限前は手掛かりを求め、手元の端末に目を通す。その端末には日向から引き継がれたリエルのカルテが載っている。備考欄には、検査に怯えて過呼吸の発作を起こした旨が記されていた)
なぁ、もしかするとお前さん……病院が怖いのか?
リエル:………!(ど、どうして…?)
限前:訳もわかんねーのに身体を調べられて、怖がる子供の患者は結構多い。それでも過呼吸の発作を起こす例は……そうなかった。
そうだな……ここまで怯えてるんだ、おそらく"病院恐怖症"を発症してるんだろう。………そんな状態でよく、怖い検査の後に此処に来れたな。偉いぞ。
ご褒美に、俺が食ってる菓子でも食うか?
(限前は懐から棒菓子を取り出すとリエルに手渡した。渡された菓子をしげしげと眺めていたが、誘惑には勝てず食べたようだ)
日向:すみません、いつもこうなのですか?
限前:ああ。問診するったってさ、患者が落ち着いてくれねーと先にも進めないからな。
日向:なんというか……自由ですね。
限前:型に捕らわれすぎたら、精神科医なんざ務まらん。
(日向と会話しながらでも、時折リエルの様子を眺める。心なしか、先ほどよりは落ち着いているようにも見える)
ちなみに、付き添いの親は?記録に残ってねーみたいだが。
リエル:……!言いたく………ない………
日向:教えてくれないんですよ。私も気にはなってたんですけど。
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