神是と駮馬5
斑鳩:…………病室に愁が居ない。先生に聞いたけど検査とは言ってなかったんだよな…
キモナシ:ああ、それならお出かけ中だと思う。ちゃんと付き添いも居るから安心してよ。
斑鳩:(入院してるのに寝てなくて良いのか…?)
キモナシ:そんなに気になるなら、覗いてみる?場所知ってるからさ。
斑鳩:…………!お、教えて下さい。
(二人は病棟の端にある霊安室の前にたどり着いた)
霊……安室……?何の部屋なんですか?
キモナシ:ふふ…僕に聞くよりはさ、部屋の主の方が詳しく教えてくれると思うよ。
……邪魔するよ、樹。
神是:…………ああ?急用、じゃなさそうだな。ならさっさと帰れ…邪魔だ。
キモナシ:もう………愁君にお客さんだよ。ほら、出ておいで。
斑鳩:…………失礼、します。愁、会いに来たぜ?
神是:(………またガキんちょが増えた。ったく、託児所じゃねーって何度言えば…!)
駮馬:……………!(にい きてくれたんだ うれしい よ)
(駮馬は斑鳩の姿を見つけると嬉しそうな表情で抱きついた)
神是:……………?駮馬のあんな表情、初めて見たな。ナニモンだ、アイツは。
キモナシ:ああ…あの子はね、愁君のお兄ちゃんなんだよ。面会に来たけど愁君が居ないから捜しに来たの。
神是:ふーん。まあいい、静かならな…。煩かったら叩き出すがな(冗談抜きでさっさと帰さねーと、今度こそ俺の身体が持たんかもしれんが…)
(神是は疲れた表情で地べたに座った。二人の前で発作を覚られないよう、節制しているのだ)
キモナシ:どうしたの?珍しいね…樹がそんな表情<かお>するの。
神是:………………………。(苦しくて…言い返す、余裕がない……か…)
(神是はキモナシの問いかけには答えなかった。別に眠っているわけではないようだが…)
キモナシ:樹……?(様子がおかしいな…いつもの気だるそうな感じじゃない。何でだろう)
駮馬:(おじさん しずか だね そんなとき いつもだっこ してくれるの いつもは だめ だけど)
(駮馬は座っている神是の懐に潜り込むと、一緒に座った)
神是:(………この感じは駮馬か…?しょうがないな…)
キモナシ:おお……あの樹が、子供を抱いてる…!(てっきり追い返すと思ったのに……)
斑鳩:……愁がこの病院で落ち着いてるの、初めて見たかもしれないな…
駮馬:(おじさん の からだ あたたかいの いごこちいい よ)
斑鳩:…………そうか。良かったな…愁。あの逃げた日はどうなるかと思ったけど。
キモナシ:あれは本当にごめんよ。落ち着かせてくれたのも、他ならぬこの樹だったの。
(その時、神是の腕時計が鳴った。彼を病室に連れ帰る時間を設定してあったのだ)
神是:……………ん?ああ……時間か。そろそろ戻るぞ、駮馬。
キモナシ:じゃあ、せっかくだから僕らが連れて帰ろうか?ほら、お兄ちゃんも一緒だからさ。安心でしょ?
神是:ああ…そうしろ。(う…分かりきってはいたが途中から増えたせいで、だいぶ無理しちまったな…)
駮馬:(きょうも ありがと ね おじさん またね)
神是:………おう。
(三人が部屋を後にしたのを確認すると、深いため息を吐いた神是。緊張が解けた瞬間に、痒みが広がったためだ)
………………痒い。決して煩くはなかったが、やっぱりダメなのか…?もうしばらくこのまま休むか…(この程度なら、薬は要らねーだろうが)
(十分後、駮馬を送り届けたキモナシが事務所を訪れると……先ほどとほとんど変わらない姿の神是がいた)
キモナシ:……度々ごめん。ちょっと良いかな、樹。
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