神是と駮馬3
駮馬:(つかまっちゃう つれ もどされちゃう こわい よ おじさん たすけ て)
(子供はキモナシから逃げるように、樹の白衣の中に潜り込んだ。震える彼の頭を、樹は白衣越しにそっと撫でた)
神是:何でもくそも……捕まえてよつったの、お前だろ。
キモナシ:そ、そうなんだけどね…樹の所って子供が寄り付いてくれないの、忘れてた
んだよ。
神是:俺だって捕まえる気は毛頭なかった。が、あの衝突騒動ん時にこいつが潜り込んできてたんだよ。ひっぺがそうにも意地でも離れないからな。
目立つからしゃーなしに連れ帰っただけだ。
キモナシ:の割にはこの子、ずいぶんなついてくれてるじゃない。羨ましい限りだよ。あっはっは!
神是:笑い事じゃねーぞ!?そもそもお前らが取り逃がしたのが悪いんだろ!ガキんちょ一匹相手に何やってんだ馬鹿野郎が…
ここは託児所でもねーし、そもそも保育士でもねーんだぞ俺は……。
キモナシ:もーゴメンってば、そんなに怒らないでよ。でも助かったな、あんまり暴れてたら倒れちゃったかもだし。
ね、面倒ついでにもう一個お願いしたいんだけど。
神是:…………連れてけ、ってか?
キモナシ:そ。見るからに僕には寄ってくれなさそうだし、せっかく樹になついてくれてるんだもん。頼めるかな?
神是:…………断る。と言いたいところだが、丁度そんな話の途中だったんだ。駮馬、そろそろ答えを聞かせろ。
さっきの条件を飲むか?
駮馬:(おじさん ひとつ おねがい が あるの やっぱり もどるの いや
おじさん と いっしょ だと いっぱい へんなこと いわれちゃう から)
キモナシ:…………?ねぇ、樹。愁君って…字、書けるの?
神是:あ?質問の意図が分からん。平仮名は書ける、とは自己申告してたが。
キモナシ:そっか。失語症の疑いがあるから…と引き継ぎがあったから、簡単な漢字を書かせてみたらダメだったんだ。
うーん…そっか、それは良かった。意思疎通が図れないと困ってたんだよ。
神是:(その判断方法、さすがに雑すぎやしねーか…?)んで、駮馬。話の続きだが……お願いってなんだ?
駮馬:(あのね しょうに びょーいん はいやなの ふつうの びょーいんに いきたい の)
神是:なるほど。平たく言や、ガキんちょ共が居ない部屋が良いんだな?
(彼は悲しそうな表情で、ゆっくり頷いた)
……良いだろう、その点については俺が担当に掛け合ってやるよ。(これで部屋から追い出せるなら御の字だな)
キモナシ:なんだろ、樹がここまで協力する事って滅多にないからさ、(特に子供相手ではあり得ない位にはね)何かちょっと恐ろしいんだけど…どういう風の吹き回し?
神是:寄りかかった船、って奴だ。とりあえずキモナシ、駮馬はお前が連れてけ。俺は先に卯月ん所で事情説明を済ませといてやる。
キモナシ:で、でもさ…僕だと愁君が付いてきてくれないと思うんだけど。
神是:いや…逆だ。死神と行動を共にしてたと割れたらこいつにとっては都合が悪い。だろ、駮馬。
駮馬:(いっしょに いたいよ けど みられたら ひどいこと いわれ ちゃう)
神是:だからお前が適任なんだよ。ここでの話を知ってるお前がな。
キモナシ:…………うん、分かったよ。おいで、愁君。
駮馬:(あのね おじさん やくそく して また このおへや つれてきて)
神是:ああ…約束、な。
(彼は樹と指切りをすると、キモナシの元に戻った。樹は彼を省みる事もなく部屋を後にした)
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