後悔、そして先に進めない

「さようなら」


クラスの皆が一斉に同じ言葉を言う。さようならって言葉は好きじゃないけど...


みんなが同じことを言った時に感じる一体感は好きだなぁ


「三島さん!今日この後みんなで遊びに行くんだけど、一緒に来ない?」


クラスの友達からお誘いを受けた、でも今日は欲しい本の発売日だから早く家に帰りたい...


「ごめんなさい...今日は用事があるの。また誘ってね?」


そう言って私は彼女達と別れて下駄箱に向かった。



「だから逃げねぇって、少しは人を信用しろ」


(あ、翔...誰と話してるんだろう?)


そう思って、翔にバレないように少し覗いてみる。


「本当かな?不良生徒の言葉なんて僕は信じられないな」


(確か彼女は...白石さん?)


(翔と白石さん...あの二人が一緒にいるなんて珍しい。何をするんだろう?)


そんな事を考えていると、二人とも下駄箱からいなくなっていた。


(...本、買いに行こ)


学校から近い訳ではない本屋さんまでゆっくり歩いていく。


(自転車でも買おうかな、でもそしたら翔と...)


足が止まる。


私と翔の関係は、去年のアレ以来変わらないまま。


(何であの時あんな事言っちゃったんだろう...馬鹿だなぁ。私)


後悔しても翔にしてしまった事は無くならない。言葉って物は本当に厄介だと思う。




気づくと目的の本屋の前に着いていた。


中に入ってお目当ての本を探す、美琴にも言ってない私の趣味...それは恋愛漫画を読むことだ。


(今月の新刊でヒロインはどんな新しい出会いをするんだろう...)


何故か心琴にも言えない私の趣味。やっぱり恋愛漫画を読んでるって言うのは恥ずかしいよ...


ウキウキな気分で本を買い、来た時よりも早く家にかえる。


「ただいま」


家に誰もいないのは分かってるのに...何か声に出ちゃうんだよなぁ。


急いで手を洗って、制服のまま本の袋を開ける。


(よしっ、読もう)


...


.....


........



「ふぅ....」


読み終わった。簡単に言って最高だった。


新しく出てきた男の子は剣道部で小さい頃に別れた幼なじみ...か。


.....


(今日は翔の事思い出すような事がいっぱいだなぁ...)


私に毎朝ご飯を作ってくれたり、お弁当を用意してくれたり...私、翔にはお世話になりっぱなしだ。


「明日こそ...翔に謝るぞ...」


ピンポーン


「この時間に...誰だろう」


ガチャガチャ


「え」


鍵が開けられた...って事は。


「桜花ちゃん、いるー?」


「あ、はい!」


やっぱり翔のお母さんだ。相変わらずインターホンの返事無しに家の鍵を開けるんだから...


「ご飯、食べに来ない?」


「えぇっと...」


さっき明日翔に謝るって思ったけど...よしっ、今日のうちに謝るぞ!


「はい、じゃ「翔ったら帰ってきたらすぐに寝ちゃってさ。私は夕飯作っちゃうから桜花ちゃんに起こして欲しいんだよね」...っえ?」


「あ、じゃあ家の鍵開けとくから!制服着替えたらそのまま翔の部屋行って起こしといて!」


(翔...白石さんと何してたんだろう。翔が寝るほど疲れるなんて...)


着替えをして、家に鍵をかけてからすぐ近くの翔の家に入る。


「お邪魔します...」

「はいはーい、もう少しで出来るからよろしくね〜!」


翔の部屋はこの家の二階。前はよく翔の部屋で遊んでいたけど、ここ最近翔の部屋に入ることなんてなかったから...緊張する。


コンコン


ノックをする。


「翔...起きてる?」


何も音がしない...本当に寝ているようだ。


「入るね...」


ゆっくりと翔の部屋の扉を開ける、暗くてよく見えないけど...翔はどこで寝ているんだろう。


「...?何かに足にぶつかった」


ポケットにスマホがある事を忘れていた。ライトをつけて足元を見ると...


「え...翔?」


床で翔が寝ていた、相変わらずお風呂に入らないと布団に触れもしないんだね...


「翔...起きて。夕飯だってよ」


揺すってみても反応しない...少し強めに叩いてみる。


「う...ぁ。ん...桜花?」

「そうだけど...」


「何で...俺の部屋に?」

「...さぁ?」


「...ぁあ。そう」

「そうですよ...」


(翔....まだ目が覚めきってないのかな?)


「桜花」

「なに?」


何故かこのタイミングで名前をもう一度呼ばれる。どうしたんだろう...


「もう一度...あぁ〜〜くそ。いや、何でもないわ」

「....うん」


彼はもう一度...なんて言おうとしたんだろう。何となく聞かない方がいい気がして、深く掘り下げながった。


(謝るタイミング...見失っちゃった)


「ご飯出来たよー!」


下から翔のお母さんの声が聞こえくる。


「行くか」

「うん...」


(逃げてばっかりだなぁ、私)


食卓には美味しそうなご飯が沢山並んでる。


「「「いただきます」」」


3人で一緒にご飯を食べ始めた。やっぱり1人じゃないご飯は美味しいなぁ。


(明日こそ...翔とちゃんと話さなきゃ)











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る