告白、そして悪意
小さい頃から俺は剣道をやっていた。
剣道をやり始めた理由はどっかのヒーローが使っていた剣の玩具を買ってもらえなくて、変わりに父親から竹刀をもらったからだった気がする。
「翔、強くなって桜花ちゃんを守るヒーローになれ」
そこから俺は他の子が習い事として水泳とかをやっている中、俺は剣道という名の暴力を振るってくるクソジジイの元で必死に練習した。
おかげで小学1年生の内に小学生低学年の部では優勝して、3年生では小学校生の部で1位をとった。
ただ、始めた時は桜花を守れる強い男になるつもりだったのに...
「おい!なーに辛気臭い顔してんだ?」
「何だ馬鹿か、思ったより早かったな」
「全く...なんでお前はそんなに口が悪いのにモテるのかなぁ...」
「モテてねぇよ、実際俺には彼女もいないし仲がいい女友達も心琴くらいだ」
「ハイハイ、そうですかそうですか〜」
「何だ馬鹿にしてんのか?」
「ははは、そんな訳ないじゃないですかー天下の翔さんは敵に回せないですからねー」
「おい..まだそんなに人がいねぇよな?」
「おいおい、やめとけやめとけ。柔道部に喧嘩で勝てると思ってんのか?」
俺は拳を握って将吾の顔を狙って軽く右ストレート..と思っていたら右側から声が聞こえてくる。
「邪魔だ、どけてくれ」
「白石...」
「いや〜助かったよ、白石ちゃん!こいつをボコボコにしなくてすんだよ〜」
まだ俺を煽るか...この金髪馬鹿は...!
「菊池...お前じゃ天道翔には勝てない」
「え、いやいや。部活やってないこいつが俺に勝てる訳ないでしょ、喧嘩が強いって言っても...心琴には及ばねぇけどよ、ケンカも柔道も中々強いんだぜ?」
「天道翔....そいつは僕の兄弟子であり、目標であり...倒すべき対象だ」
「え、こいつ剣道やってたの?」
「そうだ、僕と翔は武芸全般は師範に叩き込まれている。そうだよな?天道翔。いつかお前が竹刀を再び持つその日まで、僕は待っているからな」
白石は自分の言いたい事だけ言って自分の席に座ってしまう。あいつの席は窓際の席で、俺は廊下側の席だ。離れていて本当に良かった。面倒臭いからな...
「なぁ、じゃあなんでお前は剣道部に入ってないんだ?」
「うるせぇ....こっちも色々あるんだよ」
俺は席に座って眠りにつくことにした。今日は移動教室がないから一度も起きずに昼休みまで眠るとしよう...
「起きろ〜!」
俺の事を起こそうとする奴は....このクラスには1人だよな
「心琴....お前そこは違う人の席だろ」
「どうせ授業中に寝るだろうからそれを阻止するために先生にお願いして隣にしてもらったんだよ」
「うげぇ....」
「あ?何言ってんだ、殴るぞ」
「なんでもないでーす」
結局俺は午前中の授業を全部起きて受けた。久しぶりの授業だったからついていけないと思っていたけど...案外大丈夫だった。
「よーし!昼だーー!」
将吾は席から立って叫んだ。
「翔、一緒に食おうぜ!」
無視して自分の弁当を開けて食べ始める。
「翔の唐揚げもーらい!」
「またかお前は...自分の弁当にも唐揚げがあるだろ」
「うんめぇ!なぁ...お前のお母さんに俺の弁当も作ってもらえないか聞いてみてくれよ?」
「うるせぇ、弁当は俺が作ってるからお前の分は面倒臭いから断る」
「お前の分は...?ってことはお前...!」
「「いただきます」」
私は翔から朝に貰ったお弁当を開ける。中にはサンドイッチとウインナー、もう1つの方には果物とサラダが入っている。
「相変わらず美味しそうなお弁当だね〜桜花が作ってるんだっけ?」
「違うよ、翔が毎朝家に届けてくれてるの」
「あぁーそんな事言ってたね、そう言えば」
「うん、翔のお弁当...美味しいから毎日嬉しい」
「えっ、それ翔が作ってるの?!」
「あ、内緒だった...心琴、誰にも言っちゃダメだよ?」
翔はこれを『お母さんが作ってる』って言ってるけど、翔の家にお邪魔した時に翔のお母さんに聞いたら、『あいつ毎朝健気に作ってるんだよ?笑っちゃうよね』と笑いながら教えてくれた。
「へ〜これ翔が作ってんのか...分かったよ、誰にも言わない。ただし翔の事はからかうかも?」
「優しくしてあげてね?...心琴」
私達が教室でお弁当を食べていると、おとこの人から声をかけられる。
「あの...三島桜花さんお時間を貰えませんか?」
見たことある男子。確か...
「サッカー部の部長さんだよ」
小声で心琴が教えてくれた、そうだ3年生のサッカー部の部長の黒木さんだ。
「別に大丈夫...ですよ」
「ありがとうございます、では...単刀直入にいいます」
「僕と付き合ってくれませんか?」
彼のその一言で周りがざわめき出す。
サッカー部の部長と言う事もあり、かなりの知名度がある黒木さんがこんな所で告白したらこうなるのが普通なのかな?
「すいません、私は...貴方とは付き合えません」
「あはは、やっぱりそうか....でもさ、桜花さん。僕は彼よりは君を幸せに出来るよ」
彼というのは...翔の事だろう。
「だって彼は君を傷つけるような事を起こしたんだよ?だったら僕の方を...」
「ごめんなさい...諦めてください」
少し、頭にきた。私と付き合うために人を陥れる様なことを言うなんて...ましてや...翔を...
「分かりました...今日は出直します。でもまた....近いうちに...」
そう言って教室から出て行ってしまった。
「なんか嫌な人だね...あの人。胡散臭さが凄いよ、私の生きてきた中でトップレベルだね」
心琴が笑いながら茶化してくれる。
「...ごめんね、心琴。変なところ見せちゃって」
「気にしないでよ、翔と将吾の馬鹿みたいな絡み見てたらあんなの変って言わないって」
私はいい友人を持った...心琴がいなかったら。そう考えただけで怖い。
「心琴、ありがとう」
「気にしないで、桜花。さ、残りのお弁当食べちゃおうよ!」
「くそ...まだ彼女を僕の物に出来ないのか...」
「俺の人生をことごとく邪魔しやがって...」
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