人形みたいな彼女には...俺はきっと不釣り合い。
華宵
通学、そして同級生
まぁみんな知ってるだろうけど...幼馴染って昔からの付き合いがある友人の事を指すらしい。
こんな事を言うんだから俺にも幼馴染がいて、名前は
これがまた変わってて...綺麗な顔してるんだけど全然表情が変わらないんだ。加えて声色も変わらないせいで怒ってるのか悲しいのか...幼馴染の俺にもいまだ分からない。
そんな彼女との初めての出会いは赤ん坊の頃、それから時は経って俺達は高校生2年生になって初めて会ってから17年が経とうとしている。
「起きろ、桜花」
「....むぅ」
7時30分 桜花を起こす。桜花の両親は仕事で世界中を飛び回っていて殆ど家にいない。だから毎朝起こしに来ている。
「早く起きないと飯食う時間なくなって午前中もたないぞ?」
「
「米と梅干し」
「なんだ...手抜きか.....」
「可愛くねぇやつ...弁当は机の上に置いておくからな」
「ありがとう...おばさんにもよろしく」
「分かった、じゃあ先行ってるからな」
桜花と一緒に学校に行くことはない。一緒にいるだけで周りからの目が痛いし、俺みたいな奴といると桜花の評判が落ちてしまう。
玄関で靴紐を結んでいると後ろから声をかけられる。
「今日はちゃんと...学校に来る?」
「あー...分かってる。多分行くよ」
俺は桜花の方を振り返らずに家から出た。
桜花の顔を見たらいつもと変わらない顔で立っているんだろうけど...俺は見れない。
昔は一緒に学校に行って。
一緒に下校して。
一緒に遊んで。
一緒の中学にも入って、今でも一緒の高校だ。
なのに...今や正反対の道を歩いている。
桜花は勉強をきちんとして、周りの人からは期待されていて、学校のアイドル的存在だ。
一方の俺はどうだ?勉強はしないし、更には学校に行かずにどこかで遊んだりする事もあるせいか周りの奴らは俺を痛い奴だと思っているらしい。
「何時からだ...何時から桜花の隣を歩く事に抵抗を持つようになったんだ...?」
呟いた一言は、誰にも聞かれるはずなかったのに...
「はぁ?何言ってだお前?」
「将吾...」
俺の目の前にいる髪を染めた金髪の男、
「お前..B組の桜花ちゃんと仲良いのか?!」
「なんの事だ?」
面倒臭いやつに聞かれちまった。
「俺にも紹介してくれよ、どうせ弱みでも握ったなんだろ?な?俺達親友だろ?」
「だから違うって、お前本当に馬鹿だな...」
こいつは人としてクズだ。ゴミだ、救いようがない。だが何故か憎めないタイプの人間だ殴りたい....
「おーーい!2人とも朝から二人で何してんのー?」
「...げ、心琴」
「よし!こんなに早く翔を見つけられたのはラッキーね!」
こいつは
「後、将吾?私を見た時に何か言ったわよね?」
「いやいや?!何も言ってないっすよ!本当に!」
「翔、なんて言ってた?」
「あれ?あいつ太った?って言ってた」
「お前、ふざけんな?!いやいや、俺言ってないからね?!」
「...部活の時覚えてなさい。ボコボコにしてやるわ...」
彼らは2人とも柔道部で、女子柔道部の次期部長でもある心琴の強さは物凄いらしい。男子でも適わないとか。
「ひ、ひぃーーー!翔お前ふざけんなよ?!」
「はぁ...今日は学校に行かなきゃダメなんだよな?」
「え、無視?」
「勿論、桜花に何か言われたくなかったらね?」
心琴は相手の弱いところを突くのが上手い...俺には桜花、将吾には暴力をチラつかせて従わせる。
(あれ?こいつもなかなかク....)
「おい翔、今私に失礼な事考えてたろ?」
「いやいやいや、なんでもない。分かった行くからさ、だから桜花には何も言わないでくれ」
「よしっ、じゃあ行こっか!」
「あれ?なんで俺は放課後ボコボコにされる予定が出来たんだ?」
「あぁ、将吾...置いてくぞ」
俺らが3人で登校していると、途中で桜花の姿を見かけた。
「あ、おーい!桜...」
俺は心琴の口を手で隠した。
「馬鹿やめろ、俺がいる時には桜花を呼ぶな!」
(将吾がコンビニで飯買うって言ったせいで桜花に追いつかれちまった...!)
「はぁ?まだそんなこと言ってんの?」
「何?!お前やっぱり桜花ちゃんと関わりあるのかよ!」
「桜花はあんたと一緒に登校したいと思うけど...?」
「そうだぞ!おれも一緒に登校したい!」
こいつらは2年生からの付き合いで、1年生の頃の俺と桜花のあの事件を知らないからこんな事を言えるんだ。
「分かったよ、じゃあ俺は先に行くからお前らは桜花と一緒に登校してやってくれ」
俺は走りだした、こいつらも桜花と俺は合わせようとするのか...うんざりだ。
「え?」
「あ、おい翔!」
くそっ...どいつもこいつも桜花と俺を合わせようとしやがって...なんでなんだよ!
走ったせいで思ったより早く学校に着いてしまった。時間を潰すためにも教室に入って一眠りしようと思っていたら廊下で呼び止められた。
「おい、天道!」
「げ....藤岡先生...」
「昨日学校またサボったな?!」
「まぁそうですけど...」
「ったく。今日は来たからいいが...お前は1年の頃に問題起こしてるんだから反省して真面目に過せよな?」
「はい...」
「じゃあ今日は教室で真面目に授業うけろ。評定がしんどくなるぞ」
「はい」
藤岡先生は今年から入ってきた若い男の先生だ。だから俺が去年なんで停学になったのかは知らない。
「お前そう言えば去年は剣道部に入ってたんだろ?」
「そうですね」
「かなりの実力者だったんだってな」
「そんなことないですよ...」
「なんでやめたんだ?」
「俺の通ってた剣道場に行けなくなったから..ですかね」
「...?潰れちまったのか?」
「いや、そういう訳じゃなくて...」
藤岡先生!会議に送れますよ!
「あ、不味い...すまんな天道。これから会議なんだ、続きは今度聞かしてくれ!」
藤岡先生はパタパタとスリッパを鳴らしながら行ってしまった。
「....できれば二度としたくないけどな」
そう呟いて俺は教室の中に入った。
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