第517話 帰還3、再会
アスカは北の砂漠から屋敷に帰った当日、翌日、翌々日と部屋の中から一歩も出ずショウタのことを考えていた。その大半はショウタとの出会いからのでき事を思い出していたのだが、マキナドールの自分が、自分の生みの親が亡くなった時以上のひどい喪失感を抱いていることに驚いていた。
その間、ラッティーをはじめとして
北の砂漠から屋敷に帰った翌々日、部屋にこもって
指輪の名まえは『
――マスターはこの世界にとどまっていてくれているので、この指輪が反応しているのではないか?
――ありえる。
――指輪の反応を見ながら進んでいけばマスターにまた会える可能性が高い。ただ、この世界にマスターがいるのなら、マスター自身この屋敷に向かってきているはずだ。
この指輪の精度がどの程度のものなのかもわからないし、マスターがいたとしてもどれほどの距離があるのかも分からない。ここは慎重にマスターを見つけ出そう。もしマスターと行き違いとなってしまっても通信機があるので、マーサから連絡があるだろう。今となっては仕方がないが、マスターに通信機を持たせておけばよかった。
四日目の朝、アスカは久しぶりにいつもの日課をこなし、朝食後、家のものを居間に集めた。
「マスターが今
各人自習するように」
「はい」
「マーサには六人のことをお願いする。それと、私が出かけている間にもしマスターが屋敷に戻ってきたら私に連絡してくれ」
「はい」
「ハウゼン以下の使用人のみんなは、魔石や充填済みの魔素貯留器などにはまだ余裕はあると思うが、不足するようなら遠慮なく外部から購入するように。ブラッキーとホワイティーのエサについても同様だ」
「かしこまりました」
「来週までマスターの
昨夜確認した時は、北北西に指輪を向けるとわずかに指輪が反応したのだが、明るい日中ではアスカの目をもってしてもはっきりとは分からない。
屋敷の面々に指示を終えたアスカは、玄関を出て王都の西門に向かって駆け始めた。西門からまずは街道を北上してみようと思っている。
四日目の朝、朝早いうちに宿屋を出たショウタは、朝日を浴びながら街道を南にひた走った。空には雲一つなく今日の日中はかなり暑くなりそうだ。
まだ時間が早かったせいで、街道の通行量は少なく、かなりのスピードで駆けることができた。ただ、速度を簡単に計れるアスカはいないし、移動距離の目安になるような土地鑑もあるわけではないのではっきりとしたスピードは不明だ。感覚的には、時速三十キロは超えているのではと自分では思っている。
街道をショウタは南にひた走る。
ダッダッダッダ、ダッダッダッダ。
日も高くなり、気温が上がってきた。走りながらではさすがにコップに入れた水は飲めないので、速度を落とし、歩きながら収納から取り出した水の入ったコップから水を飲んで水分補給をしておいた。冷たい水もあったが、あえて常温の水を飲んでいる。少し腹の足しになるものを取った方がいいのだろうが、いまのところ食欲が湧いていないので朝食抜きのまま、また駆けだした。
街道をショウタは太陽に向かってひた走る。
ダッダッダッダ、ダッダッダッダ。
太陽が中天に差し
アスカとすれば比較的低速で王都内を西門まで駆けてきたが、北へ続く街道に入ってからは、速度を上げて駆け始めた。街道にはすでに多くの荷馬車や駅馬車が行きかっていたが、かまわず脇をすり抜けて駆け続ける。
アスカは、北に向かって街道をひた走る。
ダッダッダッダ、ダッダッダッダ。
途中、街道沿いの宿場町では速度を落とすものの、それ以外ではかなりの高速でアスカは北に向かって走り続けた。アスカの場合、水分補給など必要ないため、一切休憩を取らずに駆け続けている。
軽い上り坂を駆け上った先に次の宿場町が見えてきた。日は既に中天に差し掛かっている。
そこで、視界の隅にミニマップが何日かぶりに現れていることに気が付いた。ミニマップの一番下に自分を表す大きな青い点が見えた。ミニマップの中心にショウタがいる。
「マスター!」
アスカは一気に加速して、ミニマップの中心に向かった。
ショウタは街道沿いの宿場町に入り、コップに入れた水を飲みながら速足で歩いていたら、視界の右下のミニマップに見慣れた大きな青色の点に気づいた。
「アスカ!」
ショウタは一気に加速して、ミニマップに見える青色の点に向かった。
[あとがき]
次回最終話。最後までよろしくお願いします。
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